これからの修理工場選びの“明確な基準”知ってますか?…「テュフ認証」が私達にもたらすもの | CAR CARE PLUS

これからの修理工場選びの“明確な基準”知ってますか?…「テュフ認証」が私達にもたらすもの

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安全・安心な修理のキーワード「テュフ認証」
  • 安全・安心な修理のキーワード「テュフ認証」
  • 話を聞かせてくれたテュフ ラインランド ジャパン社の柏木貴志氏
  • 進化するクルマの修理には、最新の技術、知識、そして設備が必要となる
  • 蒸気ボイラーの監査機関として設立された
  • ドイツ・ケルン市にあるテュフ ラインランド本社
  • 1872年に発足
  • 自動車産業の発展を支えた存在だ
  • 認証は修理の現場に求められるあらゆる基準をクリアしないと受けられない
突然だが、皆さんは「テュフ認証」という言葉をご存知だろうか?

もしも皆さんの家の近くに、この認証を取得しているクルマの修理工場があるとしたら、こう思って欲しい。「ここでは、ハイレベルな修理が行われているんだな」と。

それがどういうことかについては、ここから詳しく説明していくが、クルマの修理工場における『テュフ認証』とは、『最新かつ高い品質の修理を行える工場』のアイコンとなるのだ。

私達一般ユーザーにとって、事故やトラブルの際に安心して愛車を預けるための大きな基準になるこの認証について、この記事ではお伝えしたい。

◆工場の良し悪しを測る“共通のものさし”=テュフ認証

自動ブレーキ、カメラ、センサーの搭載、素材の変化…。ここ数年で、クルマは急激な進化を遂げている。そして、それによって大きな影響を受けている場所がある。それが鈑金塗装工場といった、クルマの修理の現場だ。

「最新のクルマの修理は、かつてのように、『見た目が直っていれば大丈夫』というものではなくなりました。アルミ素材のボディや、安全支援装置搭載のクルマを、しっかりと直せる工場かどうかを見極めることが必要です。その時に、工場の良し悪しを測るための“共通のものさし”がテュフ認証だと、私達は考えています」

こう語るのは、国際的な第三者機関のテュフ ラインランド ジャパン アジア太平洋地域 営業統括部の柏木貴志氏だ。

話を聞かせてくれたテュフ ラインランド ジャパン社の柏木貴志氏
認証機関とは、さまざまな分野の工場などの監査を行い、「ここの設備や技術力は優れていますよ」という、いわばお墨付きを与える組織だ。テュフ ラインランド ジャパンはクルマの修理工場に対しても監査を行い、ここで厳しい基準をクリアした工場にのみ認証が与えられるのだ。

◆進化するクルマに比例して、進化する修理技術

様々な機器が装着されたことで、「走るコンピューター」とも形容される現在のクルマの修理は、これまでとは全く異なる、新たな知識や技術、そして設備を必要とし、かつ繊細な作業を要求される。

例えば『エーミング』という修理をご存知だろうか? クルマに搭載されているカメラやセンサーの位置が事故などでずれた時に、正しい状態に戻す修理なのだが、実はこの作業にも高い技術力と、最新の修理機器が必要になってくる。そのため、すべての工場でできるとは限らないのが現状だ。

進化するクルマの修理には、最新の技術、知識、そして設備が必要となる
理論上、搭載されているカメラの位置がたった1度半ズレているだけで、80メートル先では2メートルも見るポイントがずれてくるそうだ。これほどのズレが大事故の原因に繋がっても、何ら不思議ではない。そして問題なのは、その修理に『対応できる工場』なのか、『対応できない工場』なのかを、私達が事前に知ることが難しいということだ。店舗をパッと見ただけで、その工場の『技術力』や『修理の工程がしっかり管理されているか』までをはかれる人が、一体どれほどいるだろうか。

そういった時の判断基準となるのが、テュフ認証というわけだ。エーミングの重要性が増すなか、テュフ ラインランド ジャパンが規定するチェックリストにも、新たにこの修理に関する項目が加わるという。つまり、エーミングは認証を受けるための “必須条件”となる。裏を返せば、テュフ認証を受けている工場では、適切にこの作業を行える修理工程が整っていることの証となるわけだ。

「認証というと難しく考えてしまいそうですが、ユーザーの皆様には『テュフ認証を受けている工場は安心なんだ』と、素直に思ってもらえればいいです」

もちろん、テュフ ラインランド ジャパンが自発的に動いて、様々な鈑金塗装工場を回り認証を与えているわけではないが、ユーザーに分かりやすい“称号”という意味では、レストラン・ホテルガイドの『ミシュラン・ガイド』のようなイメージかもしれない。「あそこの工場って、すごい修理がうまいらしいぜ」。そんな話をするにふさわしい基準がそこには整っているのだ。

◆中立かつ客観的な監査を行う“第三者”機関

では、このテュフ ラインランド ジャパンとはどんな会社なのだろうか?

ドイツのケルン市に本社を置く同社は、産業革命期の1872年に発足。当時事故が多かった蒸気ボイラー検査の第三者機関として設立された。

ドイツ・ケルン市にあるテュフ ラインランド本社
1872年に発足
「産業施設の安全性を確立する」という明確な取り組みは、自動車分野に及び、1904年には車両検査を開始。今では工業製品、自動車のほか医療分野、環境分野や教育分野などそのフィールドは多岐にわたる。本国では認証以外にも車検業務も行っており、「ドイツでは車検を取得することを『テュフする』と言う位、誰もが知っている」(柏木氏)というメジャーな存在だ。

自動車産業の発展を支えた存在だ
蒸気ボイラーの監査機関として設立された
日本法人は1983年に設立。当初は西ドイツ(当時)に輸出されるクルマへの検査業務を行い、2006年にディーラーへの監査業務をスタートした。そして、今回の話の中心となる鈑金塗装工場への監査・認証業務が始まったのは、つい最近のことだ。

ここで重要になるのが認証機関という言葉の前につく“第三者”、この部分だ。

「例えば利害関係がある会社間で監査をするとなると、どうしても偏りがでてしまいます。私達は中立かつ客観的に監査を行います」

監査を行ううえで、テュフ ラインランド ジャパンは200を超える項目を持つ独自のチェックリストと照らし合わせて、工場の状態を判断する。そして、その基準を満たしている工場に対して認証を行うという仕組みだ。ここで使用されるリストは、新技術の登場などに応じて、年々更新される。エーミングの項目が加わるというのも、そういった理由からだ。ただ、そこに私見や感情が入る余地は一切ない。だからこそ、“共通のものさし”になり得るのだ。

◆全体の約0.2%!?

一言に「テュフ認証」と言っても、そのなかには2つのグレードがある。それが「ゴールド認証」と「プラチナ認証」だ。

プラチナの方がグレードが高く、大型の欧州車を修理できるスペースや設備のほか、従業員に対する継続的なトレーニングの実施や記録などいくつかの点で、ゴールドを上回る。とはいっても、ゴールド認証を受けている段階で、ハイレベルな修理を行えるというのは間違いがないため、両者の違いはかなり高い次元の差と言っても過言ではない。

ではその取得はどれほど難しいものなのか? それは柏木氏のこんな話を聞くと、簡単に想像が付く。

「日本には整備工場が3万件以上あると言われているのですが、現在認証を持っているのは50社程度です。これから監査をするところもあるので、どんどん増えていくとは思いますが」

実に全体の約0.2%。おおよそ500店舗に1件しか認証工場はないという計算になる。ゴールドはチェック項目の90%、プラチナは95%を満たしていないと認証取得にならないという話も、その難しさを推し量るための材料となる。技術だけでなく、設備や社内コンプライアンスまで、工場を運営するうえで必要な要素の全てをハイレベルに備えていることが、認証取得の条件となるのだ。

認証は修理の現場に求められるあらゆる基準をクリアしないと受けられない
これだけ難しい基準を設けるのはもちろん、ユーザーの安心・安全を守るためだが、実はもう1つある想いがある。

「鈑金塗装工場のなかには、しっかりと設備投資をして、日々勉強を積んで、それから修理を請け負っている所もある。しかし、今まではその取り組みを評価するものがありませんでした。いい工場を“見える化”して、選ばれる工場になって欲しいです」


◆安心してクルマに乗り続けるために

昨年から監査を申し込む工場が増えるなど、日本の修理の現場でも確実に『認証制度』取得への意識が広がっている。また、レストアを行う工場に対する「クラシックカーガレージ認証」が動き始め、さらに今、自動車ガラス交換・補修ショップに向け認証の構築を進めるなど、テュフ ラインランド ジャパンとしてもさらにこの認証システムを、修理の現場に浸透させるよう働きかけを続けていく。

レストアを行う工場に対する「クラシックガレージ認証」も行う

「先進安全装置が付くことで、事故が減るのは間違いないが、『0』になることはない。安心してクルマに乗り続けるには、いい工場は絶対に必要です。今までは値段だけで修理先を決めていた方も、これからは認証を上手く活用して、より高品質な修理を受けてもらいたい」

柏木氏は最後に、ユーザーの自動車修理への意識に対して、こんな希望を口にした。一つのミスが命に関わってくるクルマに乗っている以上、安心・安全を求め続けるのは当然のことだ。

なにはともあれ、みなさんには単純にこう思って欲しい。

『テュフ認証工場=最新かつ高い品質の修理を行える工場』

この“公式”を覚えているだけでも、安心・安全なカーライフの近道となるかもしれない。
《間宮輝憲》

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