米どころ、酒どころとして知られる新潟県。その中心地である新潟市は、人口約80万人を誇る大都市として賑わう。そんな日本海側の最大都市に本拠を構えるのが、栄モーター(中央区米山6-10-8・栄治保則代表取締役)だ。
同社は整備や、車両販売・保険などの窓口機能を果たす本社に加え、阿賀野市に鈑金・塗装を中心に行う安田工場を構える。この2つの拠点で『鈑金・塗装』『整備・車検』『車両販売』『自動車中古品販売』『保険』のほか、同社を語るうえで欠かせないキーワードとなる『ロードサービス』と『福祉事業』をメニューに取り揃える。
根底にあるのは「困っている人を助けたい」というシンプルな思い。その気持ちを胸に、今日も汗を流す同社の取り組みを紹介したい。
ロードサービスの “ 老舗 ”
上越新幹線の終着となる新潟駅からクルマで約10分。新潟のまさしく中心地とも言える道を走っているとすぐに、本社社屋が姿を現した。看板には同社のキャッチフレーズ『元気サポート!』の文字が踊る。昭和40年4月の創業から52年。栄モーターは、この地で地域住人の足を守る重要拠点として、多くのユーザーから信頼を集めている。
そんな同社のストロングポイントの一つが、冒頭でも述べた「ロードサービス」だ。
車検と鈑金をそれぞれ年間約1000台ずつ扱うなど新潟を代表する整備工場は、ロードサービスへの取り組みも並々ならない。出動件数は年間で約4500件。新潟県全域をカバーし、24時間365日対応なのはもちろんのこと、どんなトラブルにも対応するため多くの積載車やレッカー車を揃えている。店先に置いてある大型車用のレッカー車は迫力バツグンで、そんな光景を見ると「引き揚げられないクルマはないのでは?」という思いすら頭に浮かんでくる。
「お客さんが困っているところに真っ先に行って助ける。これが我々にできる、お客さんへの一番の貢献だと思っているんだよね。だからロードサービスには今後も力を入れていくよ」
そう語るのは、同社の栄治保則社長だ。『情に厚い親分肌』。そんな表現がふさわしい社長が言うと、その言葉はさらに大きな説得力を持つ。今回の取材で一番印象に残ったのが、記者と冗談を飛ばし合いながら豪快に笑う栄治社長の笑顔だ。しかし、ひとたび仕事の話になると、その口調は一気に真剣味を増す。柔和な人柄のなかに見え隠れする情熱。それがそのまま栄モーターの魅力に繋がっていることを強く感じた。
現在のようにアシスタンス会社も無く、ロードサービスがきっちりとした仕組みとして形作られていなかった昭和63年に、いち早くメニューとして追加。黎明期とも呼べるような時代から出動を重ね、トラブルに見舞われた多くのドライバーを助け続けてきた。当時の話を懐かしそうに語ってくれた栄治社長。その口から出てくる数々の苦労話や裏話を聞くと、年輪の厚みをさらに痛感できる。まさにロードサービスの“老舗”と言って過言ではない。
それから約30年。今では『アフターケア』の一環として自動車業界に根付いたロードサービスだが、栄治社長の胸にある思いは当時から変わらず「人助け」という感覚だ。だからこそ、どんな車両にも対応できるような体制を作り上げてきた。
現在は社員がローテーションで店に常駐し、急な出動に備えている。会社にいる全てのメンバーによって看板メニューは維持され、『いつでも』『どこでも』『素早く』困っているドライバーを救うことができるよう奔走しているのだ。
『福祉用具貸与事業者』の肩書きをもつ整備工場
そして、もう一つ栄モーターが会社をあげて注力する取り組みがある。それが『福祉事業』だ。
同社では福祉事業を『お出かけサポート』と銘打ち、福祉車両や電動カート、また車イスなど福祉用品のレンタルを精力的に展開している。
ここで特筆すべきは、栄モーターの福祉への取り組みが、クルマの枠を超え「車輪が付くものならなんでも」扱っているという点にある。
一般的な自動車整備工場での福祉の取り組みといえば、老人ホームなど、いわゆる福祉施設にある車両の整備を『請け負う』という形態が多い。もちろん特殊な知識を要する作業なため、メニューに組み込むのは決して簡単なことではない。しかし、あくまでも既存の福祉車両を直したり、普通車両を福祉用に仕立てたりとクルマの枠内で行われることがほとんどだ。
しかし、栄モーターで行われている福祉への取り組みは、少し異なっている。
「基本的に、老人ホームやデイサービスなどで使われている福祉車両のメンテナンスなどはメインにしていない。というのも日頃の整備業務を行っているなかで、ちょっとした障害が原因となり、クルマで家族と一緒に外出できない高齢のお客さんなどが多いということに気付いた。そういった方々に役立つことができないだろうか? そんなことを考えて導き出したのが、今やってるような気軽に利用できる福祉サービスなんだ」
そう栄治社長が語るように、対象は『個人ユーザー』を中心に据えている。さらに前述したように、福祉車両だけではなく、車イスなどのレンタルまで行うのもこういった思いからスタートしている。実は同社、『自動車整備業者』だけではなく『福祉用具貸与事業者』という肩書きも持っているのだ。
この肩書きにより、先ほど紹介したレンタル用品などすべてのメニューに介護保険を適用することができ、ユーザーが1割負担でサービスを受けることが可能になっている。「車両だけ直せればいい」という発想はここにはない。クルマという枠にとらわれず、ひたすらに「力になりたい」という思いを実現しようとしているのだ。
「困っている人がフラッと立ち寄れるよう、きめ細かいサービスを提供していきたい」
と、ユーザーが必要とする時に必要とする時間のみレンタル利用ができるようなメニュー体系も用意されている。これにより、短時間の使用でも気後れすることなく相談できる環境となっているのだ。
鈑金・塗装における“栄モータークオリティー”とは?
もちろん“本業”の鈑金・塗装も一級品だ。「野球の試合くらいだったら楽々できるよね」と栄治社長がその広さを形容するほどの敷地面積を誇る安田工場。坪数でいうと約3000坪あるそうだ。そして、そこに建つ工場も、敷地面積に負けない存在感を放っている。鈑金・塗装の実作業が行われる場所には、塗装ブース2基、フレーム修正機4基、四輪アライメントテスター1基など最新の設備が並ぶ。
工場内に足を踏み入れ、まず最初に覚えたのが「なんか、すごい広々している所だな」という感覚だ。他の整備工場ではあまり感じたことのない開放感みたいなものが湧き上がってくる。
これは面積の話だけではないと感じ、その原因を探るために周りを見回すと、ある事に気づいた。この工場、やけに天井が高いのだ。
栄治社長に話を聞いたところ、もともと安田工場はベースとなる車両に顧客の要望に応じた特殊な改造を施す「特装車」を製造するために建設された工場なのだそうだ。大型車両の架装も行っていたため天井を高くする必要があったことを教えてくれた。
今は個人ユーザー向けの修理に注力するため特装は行っていないが、工場の所々には当時の名残りが見受けられる。そして、その名残りが最も色濃く残されているのが技術面だ。
用途に応じて改造する特装作業には、相当な技術力を要する。そのような作業を行っていた意識は伝統として脈々と受け継がれる。今も工場内にはコンピューター計測による狂いの無いミリ単位での計測を可能にする機器に加え、高い技術を誇るスタッフが揃っている。自社で修理を行う体制が十二分に整えられており、安心してクルマを預けることができる。
大きな特徴は他にもある。それが「リサイクルパーツ」を積極的に採用していることだ。
解体業も営んでいるため、廃車車両などから利用可能で品質のよいパーツを取り出すことができる同社。そのパーツをストックし、すぐにリサイクルパーツとして使用できる環境も整っている。これにより、安価な修理を提供することができるのだ。またストックが無い場合でも、中古部品商として、中古部品業者からダイレクトかつ安価に仕入れる事も可能だ。ある損害保険会社の調べによると、全国一のリサイクルパーツ使用率を誇るそうだ。
施工費用が抑えられるなど様々なメリットがあるリサイクルパーツを、お客さまに積極的に提案をして納得してもらった際にフル活用することで、ユーザーは車両やコストに合わせた修理方法を、より幅広い選択肢のなかから比較・検討することができるのだ。環境にも優しく、エコの観点からも注目を集めるリサイクルパーツ。それをいち早く取り入れ、さらなる普及にも努めている。
広大な敷地に並ぶ最新の設備と、“選べる”修理部品、そして何より高い技術。こういった要素が絡み合い「安心・納得できる修理対応を実現する」という“栄モータークオリティー”が提供されている。さらに「見積無料」「代車無料貸出サービス」という細やかな心づかいも嬉しく、気軽に連絡をしやすい土壌が整っている。
高い次元の正攻法を貫く“名人工場”
今回の取材中、本社と安田工場の2つの拠点を栄治社長自らがハンドルを握るクルマで案内してもらい、移動中もこれまでの栄モーターの歴史や取り組みなどについて、色々とお話を聞かせてもらった。車中で鈑金・塗装の話を伺っている時、栄治社長がふとこんなことを口にした場面があった。
「鈑金・塗装での特別な取り組み? うーん、うちは別にこれが『特色』っていうのはないんだよなー」
そう言って、この場では笑っていたのだが、同社はクルマの所有者の立場となって仕上がりに特に厳しいことでも知られる工場だ。
同業の鈑金工場から「栄モーターはディーラーよりも仕上がりにうるさい」と言われていることも、取材を通じて分かった。それにもかかわらずあっさりと「特色がない」と言い放てるのは、「修理することにおいて、これ位の水準は当たり前」という気持ちの裏返しともいえる。そのようなことを考えていた時、ふとこんな麻雀の格言を思い出した。
『名人に名手なし』
麻雀で『真の名人』と呼ばれるような雀士には、ファインプレーと呼べるような“魅せる”打牌は決してない。基本に忠実な打ち筋を、地道に、かつ正確無比に貫き続けることができる人が名人であり強者といえる。
それがこの格言の意味だ。打牌には言葉で表せるような派手さはない。しかし、ブレずに正攻法を続けることで、名人は最後に卓上を支配し、その地位を不動のものにするのだ。
今日も新潟の名人は、当たり前のことを『高い次元で』当たり前にこなしているのだろう。そして、その確実な一打一打が、多くの困った人々の“元気をサポート”することに繋がっていく。
<店舗情報>
栄モーター www.sakae-m.com
〒950-0916 新潟県新潟市中央区米山6-10-8
025-241-1120
営業時間:平日8:30~18:00/日・祝日9:00~18:00
定休日 :年中無休