愛車のラゲッジルームがキズだらけで気になる…。そう思いながらも “しかたない”と受け入れているカーオーナーは多いのではないだろうか。
ゴルフバッグや釣り道具、アウトドア用品、ベビーカーなどを積み込む機会が多く、ラゲッジルームの内装樹脂パーツのキズが目立って困っているカーオーナーにぜひ伝えたい、気になる商品が登場した。
その商品とは、日産自動車株式会社の新型セレナ用のディーラーオプション品に採用された、住江織物株式会社の『ラゲッジプロテクションPHフィルム』だ。ラゲッジルーム内のトリム部品やバックドア部品を保護するキズ防止フィルムで、同社のリリース情報によれば、スクラッチ傷など容易に傷が入りにくい耐傷付性、印刷技術により様々な柄が表現できるデザイン性、曲面に追従し貼り付け、取り外しが容易な作業性が特長と記されている。
ボディ保護目的で注目度が高いプロテクションフィルム
プロテクションフィルム(ペイントプロテクションフィルム)とは、0.15mm~0.20mmほどの厚みがあり、柔らかく伸縮性が高い特殊なポリウレタンフィルムだ。飛び石被害を受けやすいボディ外装をはじめ、フロントガラス、ドアカップ、サイドミラー、ステップ、トランク周りなどのキズ防止目的で施工されるもので、塗るタイプと貼るタイプがある。1台のクルマに長く乗り続ける長期保有化が進み、良質な中古車購入ニーズも高まっている背景の中でプロテクションフィルム施工は注目度が高く、世界各国で開発された数多くのブランドから商品が発売されており、平滑性や防汚、自己修復など機能性もさまざま。無色透明のフィルムを選ぶユーザーが多い傾向だが、白や黒、赤、黄色のほか、カーボン調もあり、ドレスアップ用途としてもニーズがある。
今回、住江織物が開発した『ラゲッジプロテクションPHフィルム』は、ボディ外装ではなく、内装樹脂パーツのキズ防止に特化した貼るタイプのプロテクションフィルムである点がポイントで、国産自動車メーカーのディーラーオプション品に採用されたことは、大きなトピックといえるだろう。
住江織物『ラゲッジプロテクションPHフィルム』について聞く
そこで当編集部は『ラゲッジプロテクションPHフィルム』の開発経緯や特長などを詳しく知るべく、住江織物の産業資材事業部門 用品事業部 東京自動車用品部 部長の沖村健一氏、主査の赤木淳氏、複合機能資材開発室の柴山グループリーダーに話を聞いた。
まずはじめに、住江織物について紹介したい。同社は大阪市中央区に本社を構え、明治16年の創業時からカーペットの製造を行っており、明治24年の帝国議会議事堂(現・国会議事堂)開設時から赤絨毯を納入し続けている大手インテリアメーカーとして知られる存在だ。昭和6年から自動車のカーペットやシート表皮材を手掛け、研究開発・製造・販売に注力。現在は日系の全自動車メーカーの内装素材(天井材・シート表皮材・カーマット・フロアカーペットなど)をトータルで供給できる体制があることが最大の強みで、日本をはじめ海外6カ国11拠点に製造・販売拠点を拡げて事業を展開。また新幹線、電車、バス、船舶、航空機などの内装材の提案や納入のほか、ホットカーペットや浴室床材、脱臭・消臭剤、化粧筆・画筆のブラシ用糸、健康食品・化粧品原料といった機能資材事業も行っている。
企画開発のキッカケ
住江織物が開発した『ラゲッジプロテクションPHフィルム』は、どういった経緯で企画開発されたのか尋ねたら、いまから2年ほど前、日産自動車に住江織物の保有技術を紹介したところ「傷付き防止に使える可能性がある」との意見を得られたことが企画開発のキッカケになった。
住江織物では、鉄道向け床表示フィルムや浴室床材などの樹脂フィルムを用いた商材を以前から手掛けており、これまで培ってきたフィルムに関する材料開発や加工技術を活かして、自社製の鉄道向け床表示フィルム(無黄変熱可塑性ポリウレタン)をベースにアレンジすることで、日産自動車が求める内装用のキズ防止フィルムを作り出すべく、改良・開発に着手したという。
内装キズは「見た目」と「リセールバリュー」に悪影響
ラゲッジルームに荷物やベビーカーを積み込む際や、走行中に荷物が揺れて内装樹脂パーツに何度もぶつかると白いキズがつき、キズが増えると目立って美観が損なわれてしまう。また中古車として再販する際、内装樹脂パーツがキズだらけだと、どうしてもリセールバリュー(再販価値)が下がってしまう。
そういった課題を解決できる内装用のプロテクションフィルムを作り上げるべく、日産自動車と住江織物は相談を重ねながら、フィルムの厚みや柔らかさを見直し、トライアンドエラーを続けて改良。約2年の期間を経て、柔軟かつ強靭で表面の軽いキズであれば弾性回復して消えるカーボン調のプロテクションフィルムを作り上げた。
フィルムの構成としては、強力な接着力を有しつつ、剥がした時に糊残りが少ない粘着剤が最下層にあり、難燃層、印刷層、高耐久層(透明)の4層。スクラッチ傷など容易に傷が入りにくい耐傷付性と、内装樹脂パーツの曲面に追従して、貼り付けが容易な作業性。そして住江織物の印刷技術により、印刷層に様々な柄を表現できるデザイン性にこだわっている。
『ラゲッジプロテクションPHフィルム』は、ゴルフバッグやベビーカーなどの荷物をラゲッジルームに積み込む頻度が多いファミリー層をメインターゲットとし、日産自動車の希望のもと車種を新型セレナに設定。新型セレナの内装樹脂パーツの色合いに馴染むように印刷層がカーボン調になっているが、カラフルで柄がある意匠のフィルム開発も可能。今後は、ラゲッジルーム以外の内装キズ防止商品として検討を進め、住江織物の技術力を活かし、顧客ニーズに合った新たな分野の商品開発に挑戦する考えがあるという。
なお、日産自動車のディーラーオプションとして定められた品質条件をクリアした純正品のため、3年間6万kmの保証付き。今後、新型セレナの製品カタログに掲載される予定で、ラインナップは「ラゲッジルーム4枚セット(25,000円/工賃・税込)」と「バックドア用(12,000円/工賃・税込)」の2アイテムとなっている。
今回リリースされた『ラゲッジプロテクションPHフィルム』は新型セレナ用だが、住江織物は日系の全自動車メーカーの内装素材を手掛けているため、好評となれば、新型セレナ以外の車種や、他の自動車メーカーに採用される可能性はあるだろう。
愛車に長く乗り続けたいカーオーナーは、ボディ外装だけでなく、内装のキズ防止に特化したプロテクションフィルムがあり、その施工サービスを自動車メーカーがディーラーオプションとして提供しはじめている動きがあることを、ぜひ覚えておいてほしい。