東京オートサロン2018のNGKブースは、モータースポーツとスパークプラグを前面に打ち出している。デモカ―としてSUPER GTの参戦車両(GT-R)が展示され、そのうしろにイリジウムプラグなど同社の主力製品が並ぶ。130本のイリジウムプラグ全品番の展示は圧巻だ。以前と違って最近のクルマはプラグ交換など必要としないかのようだが、エンジンのことを考えればプラグは消耗品であり、しっかりメンテナンスする必要がある部品のひとつだ。考えてみれば当然だが、あらためてそんな話をしてくれたのは、日本特殊陶業(NGK) 自動車営業本部 市販部 岩井大明主任だ。エンジン燃焼室の温度は1600度以上、2000度を超えることもある。スパークプラグの2次コイル側の電圧は2万から3万5千ボルトにもなる。そんな状態で1分間に数千回もの爆発(燃焼)が走行中何時間も続く。その部品が劣化しないはずがない。たしかに電極や絶縁体(セラミック)の素材がよくなり、電気特性や耐久性は昔のプラグの比ではないかもしれないが、過酷な条件で使われていることにはかわりない。クルマの車載工具にプラグレンチがなくなってもう何十年もたつが、岩井氏によれば、最近のクルマでもプラグのくすぶりが問題になることがあるという。たとえば軽自動車。エンジン排気量は小さいが、その分エンジン回転数(つまり爆発の回数)は多くなる。乗用車と同じ速度で走ろうとすると、回転数は高くなる傾向だ。そのため、軽自動車は乗用車の倍ほどプラグやコイルの劣化が進むという。次にアイドリングストップ車。交差点ごとにエンジン始動を繰り返すため、通常アイドリングストップ車のバッテリーは専用のものを搭載している。コイルやプラグも、当然アイドリングストップに対応するスペックの製品が使われてはいるが、エンジンの温度が上がりにくいことがあり、プラグのくすぶりが発生しやすい傾向がある。アイドリングストップと類似の理由で、プラグメンテナンスに気を遣いたいのがハイブリッド車だ。ハイブリッド車のエンジンのオンオフが走行中に繰り返される。オンオフの回数はアイドリングストップより少ないかもしれないが、走行パターンによってはエンジンオフの時間が長くなり、エンジン温度が下がりやすい。プラグが劣化すると、どういうことになるのか。岩井氏は「スパークプラグの火花は、通常放電するチップと受け側の電極の先端どうしに飛びますが、劣化したりギャップが広がってくると、電極の根元やねじ山を切った部分の内側に火花が走るようになります。この状態は、まずエンジン内の燃焼に影響し、くすぶりにつながります。また、効率の悪い放電は、2次側コイルの電圧が高くなっていきます。今度はこれがコイルの負担となり、さらに劣化を進めます」と説明する。現在は、ラインオフでイリジウムプラグを採用した車種も増えているが、NGKの『プレミアムRX』は、受け側の電極に突起をつけ、さらに確実なスパークを支援するという。いまのクルマは、プラグ交換でもちょっとした作業となり、自分で交換する人は少ないかもしれないが、法定点検時に、プラグのことを思い出してみるのもいいだろう。なお、NGKブースでは、現役レーシングドライバーのトークショーも予定されている。13日はNISMO「MOTUL AUTECH GT-R」のドライバーを務める松田次生選手とロニー・クインタレッリ選手。14日は2017年インディ500チャンピオンの佐藤琢磨選手がブースにやってくるという。