自動車アフターマーケット業界で深刻な課題となっている整備士不足。この問題に対し、国土交通省は自動車整備事業者が取り組むべき指針として「自動車整備士等の働きやすい・働きがいのある職場づくりに向けたガイドライン」を令和7年6月に改訂・公表しました。
今回の改訂は、令和6年3月に策定された初版を、より多くの事業者に活用してもらえるよう、現場の声を反映させた内容となっています。
改訂のポイント
今回のガイドライン改訂では、主に以下の3つの点が強化されています。
自己採点表の追加
自社の現状を手軽に把握できるよう、自己採点表が追加されました。働きやすさ・働きがいに資する4つの要素(労働時間・休日、賃金・評価、人材育成・キャリアパス、職場環境・人間関係)について、主な取り組みの実施有無をチェックし点数化することで、自社の強みや課題を客観的に把握できます。点数が低い項目については、具体的な改善策が記載されたページが案内されており、取り組みを始めるきっかけとなるでしょう。
取組例のアップデート
関係者の意見を踏まえ、取組例の分類と内容が再整理されました。各取組例には、難易度や対象となる事業規模などがタグ付けされており、事業者の規模や業態に応じた最適な取り組みを検討できるようになっています。例えば「整備員のスキルマップ」の導入といった具体的な事例も提示され、人材育成の計画を立てやすくなっています。
好事例の追加
実際に働きやすく、働きがいのある職場づくりを推進している整備事業者の好事例が8つ掲載されました。これらの事例は、具体的な取り組み内容やその効果が紹介されており、他の事業者にとって実践的なヒントとなるはずです。
PDCAサイクルによる継続的な改善
ガイドラインでは、これらの取り組みを効果的に推進するためのPDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Act:改善)が示されています。
Plan(計画)
整備要員から話を聞き、現状の課題を把握・整理した上で、目標と具体的な取組計画を策定します。
Do(実行)
策定した取組計画に従って、実際に行動に移します。
Check(評価)
取り組み後の職場環境の変化や、残された課題、新たな課題を把握・整理し、その効果を検証します。
Act(改善)
残された課題や新たな課題の解決策を検討・策定し、次回の取り組みに繋げます。
このサイクルを回すことで、継続的な職場環境の改善と人材確保・定着を目指します。

自動車整備業界の人手不足は、自動車ユーザーにとってもサービスの質の低下や待ち時間の増加といった形で影響を及ぼす可能性があります。
今回の国土交通省によるガイドライン改訂は、単に整備事業者の経営課題を解決するだけでなく、整備士がやりがいを持って働ける環境を整えることで、結果的に自動車ユーザーにとっても質の高い整備サービスが提供されることに繋がるでしょう。このガイドラインに沿って職場環境の改善に積極的に取り組む整備工場が増えれば、自動車ユーザーから見ても、信頼できる整備工場選びの一つの指針となるのではないでしょうか。