【連載♯2】カーラッピングの過去・現在・未来…先駆者YMG1の“次のステージ”への想い | CAR CARE PLUS

【連載♯2】カーラッピングの過去・現在・未来…先駆者YMG1の“次のステージ”への想い

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【連載♯2】カーラッピングの過去・現在・未来…先駆者YMG1の“次のステージ”への想い
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愛車を長く大切に乗るユーザーが確実に増えている現在、愛車を綺麗に保つ様々なサービスの価値も上がっている。その1つが自動車の表面にフィルム加工を施し、既存の塗装とはまったく異なる色やデザインで車体を彩ることが可能なほか、飛び石や軽い接触などから塗装面を保護することができ、愛車の資産価値を落とさず、自由かつ気軽に自己表現ができる「カーラッピング」だ。

そこで、カーラッピングの日本における先駆者である株式会社ワイエムジーワン(以下、YMG1/東京都墨田区横川1-1-10すみだパークプレイスII)の山家一繁社長協力の下、編集部ではカーラッピングについての新連載コラムを4月から始動させた。


第2回目のテーマは「なぜカーラッピングなのか?」。山家社長に現在の国内のカーラッピングビジネスについて、また今後のカーラッピングについてどのような未来を描いているのかを語って頂いた。

なぜカーラッピングなのか?

皆さん、こんにちは。YMG1の山家です。初回の連載ではカーラッピングの歴史や現在の市場環境など、カーラッピングの基礎知識をお話ししましたので、今回は少し深掘りし、カーラッピングがビジネスとしてどうやったら成り立つのかという点とカーラッピングの未来について少々大きなテーマのお話をしたいと思います。

まず大前提として、カーラッピングをビジネスとして成立させるためには、その国にカーラッピングを普及させる必要があります。前回の連載でも少々触れましたが、カーラッピングを日本に持って来たのはこの私です!(笑)その経緯と日本での広がりについて、まずは少しお話しさせて下さい。

欧米では2006年当時、既にカーラッピングという言葉があり、クルマの色をフィルムを貼って変えているということは分かっていましたので、その頃は海外のカーラッピングのコンテストをよく見に行きました。最初はロンドンでメインスポンサーが3Mのコンテストでした。そこでコンテストの出場者が皆、グラフィックスを貼っている姿を目の当たりにし、強烈な違和感と同時に興味が湧いたのを覚えています。

2013年のイギリスの施工技術コンテストの様子
2013年のイギリスの施工技術コンテスト表彰式の様子

“ヨーロッパではカーラッピングが流行っている”

ここでその確信を得るのですが、ヨーロッパのカーラッピングにおいて、どのビジネスが多いかと言うと、マーキングの延長線上のグラフィックスのビジネスだというのは初回でお話しした通りです。いわゆる“デリバリーバン”は日本にはありませんので、日本では色が付いたフィルムをカーラッピングと称して販売することを次のビジネスチャンスと考え、PRしたいと思ったのですが、困ったのが“言葉が無かった”ことでした。

2006年当時、カーラッピングという言葉は日本に存在しませんでした。GoogleでSEO対策をしようにもできません。市場はおろか、施工実績さえありません。さて困った…。

そんな時、タイミングが良かったのがフェイスブックでした。今は違いますが、当時の情報収集の仕方は、例えばブックマークしているドイツのカーラッピング業者があった場合、そこがいいね!を押しているカーラッピング業者がどこかという情報がありました。それを芋づる式に引っ張り出し、それをほぼ全世界に分類しました。特にフェイスブックで情報発信をしている業者がヨーロッパを中心に多かったので、どこの会社がどんなビジネスをして、どんなお客様がいて、どう情報を出しているかをとにかく研究しまくったんですね。

そのうちに、私が目指している市場を形成したい人たちに共感を得る投稿だけを選別してアップするようにしました。今でこそ登録者は3万4,000人くらいにはなりましたが、ここまで辿り着くのには果てしなく地道な作業をしていたのです。

またフェイスブックのシェアと並行する形で「新しいものを広めるためにはブランドを作らないとダメだ」とある人から助言を頂きました。

そこで作ったのが現在の「LAPPS」というブランドです。

Luxury Automobile Progressive Plus Styleの頭文字を取った造語です。ラッピングのスペルは「W」ですが、日本で「ラ」を表現する場合、大抵はLかRです。考えた末に、ロゴタイプもレクサスのLに近い形にしてほしいとお願いし「L」にしました。よく見ると似ているでしょう(笑)

カーラッピングをビジネスとして考える

冗談はさておき、地道にフェイスブックのシェアを続けていると、それを見てくれるメディアが出てきました。クルマ雑誌などは、取材をしたいのでクルマにフィルムを貼ってくれませんか?と言ってくるのですが、取材費は出ません。施工代、人件費、場所代…大赤字の出血大サービスでしたが、70台ほどは無料で施工しました。すると、施工スタッフが技術を覚えるようになりました。企業系のフリートマーキングをやっていたスタッフだったので、フィルムを貼ること自体はできますが、個人のクルマは緻密に貼る技術が必要です。そこがフリートマーキングとの違いです。

これをきっかけにスタッフの技術は上がり、真っ赤になりながら続けたメディア露出により、多くの人の目にカーラッピングというものが伝わりました。ただ、ビジネス的にはこれでもまだ黒字にはなりません。ではなぜ続けたのか?その理由は、カーラッピングやマーキングのトレンドを長期的に考えた時に、私がバスラッピングの先駆者で、大量にそっくりなフィルムを貼るというビジネスをやりたかったという思いがありました。だからバスだったのです。

日本でバスにフィルムを貼って宣伝になるなら、自分のクルマにフィルムを貼って宣伝になるという人が多くなるであろうと考えました。案の定、その頃からじわじわと増えていました。つまり、貼るボリュームが増えると思っていたのです。貼るボリュームが増える=緻密に貼ることが必要なため、自社の施工スタッフに、緻密に大量のものを貼ることを慣れさせる必要がありました。これがカーラッピング業界の中で、他社と差別化出来るポイントだと思ったのです。

バスなどを始めとする企業系のカーラッピングビジネスも一生懸命やり、個人のビジネスも儲かりはしませんが、一生懸命やっていれば、どこかで繋がると思っていましたが、案の定繋がりました。3Mジャパンも2013年頃からはアメリカの3Mのフィルムを輸入して、販売を始めるのですが、3Mジャパンには技術を教える機能がありませんでした。なぜなら日本には看板屋がいるからです。イギリス、ドイツ、アメリカは、自分たちで技術を教えないとモノが売れません。それであれば、その機能を日本に広めてポジションを獲得しようと思ったのが、講習を始めた理由です。

お客様へ提供する価値を明確に

当時の欧米でカーラッピングをする人たちはいわゆる“スーパーカー”を所有しているのゾーンの人たちでした。日本でこの市場はとても小さいため、もう少し下の層までボリュームゾーンが広がればカーラッピングをする人たちは増えると思っていました。

具体的には、1,000~1,800万クラスの車を持つゾーンの人たちに支持されれば、お金の問題はクリアできると思ったのです。1,800万のクルマを買った人は180万の消費税を払います。180万の消費税を払う人たちが、80万でクルマの色を変えられるのであれば、受け入れられるだろうというペルソナをそこで初めて決めたのです。ここがターゲットになるぞ、と。

しかし、その人たちに言葉も無い、実績も無い中では、イメージを見せるしかありません。弊社では当時はまだ施工をやっていなかったので、前述したようにフェイスブックでシェアやコメントしながら共感を得るような戦略をずっと続けました。

フェイスブックページの登録者数が3万人を超えたぐらいから、ようやく個人のお客様から少しずつですが、問い合わせが入るようになりました。2006年から始めて、この時が2012年くらいでしょうか。

ターゲットを決めた上で、次のキーワードは『安心・安全』でした。このワードが無いと、先ほどの層は動きません。 富裕層まではいかなくとも、社会的に地位の高い人たちが乗っているクルマをターゲットにして、「安心・安全」を全面に打ち出しながら、新しい楽しみ方がありますよという情報発信の媒体としてLAPPSを使った、これが私の日本でのカーラッピングの広め方です。

ただし、繰り返しになりますがこれだけではビジネスにはなりません。なぜかと言うと、企業系のマーキングの代表であるバスラッピングは、2000年に私が仕掛けてブレイクし、今でもやっていますが、バスラッピングは1台あたり70~90万くらいで受注し、施工だけ考えると3人で4時間くらいで終わります。

一方、カーラッピングを同じ金額で受注した場合、3人だと3日掛かります。そうすると、例えばバスラッピングは3台施工すれば、3日間で270万請求できます。これがバスラッピングやマーキングの仕事です。一方で、個人のクルマに優秀な施工スタッフを付けても3日間で70~90万しか請求できないのがカーラッピングです。今でもマーキングの老舗の会社はカーラッピングをやりません。理由は儲からないからです。でも先ほど述べたように、点と点は繋がります

話がだいぶ逸れましたが、カーラッピングをビジネスとして成り立たせるためには、 ターゲットとなる層への安心・安全を勝ち取るために誰をパートナーにした方が良いか、どこのメーカーに寄り添えば、安心・安全を担保し、ユーザーから信頼され、実際にカーラッピングをしようと動くか。これを考えないとビジネスになりません。

クルマの外装に関するビジネスは大きく4つです。

①カーラッピング

②ペイントプロテクションフィルム(PPF)

③ウィンドウにスモークを貼るフィルム

④ディテイリング

この4つのうち、カーラッピング以外は「機能」です。カーラッピングはやりたくさせないといけない「エモーショナル」なものです。マーケティングの発想が無いとビジネスはできません。

現在の私なりの仮説ですが、 ディーラーがお客様に対して差別化要素として、安心・安全にカーラッピングができることを言うことによってクルマを売りやすくなる状況になっているのではないかと思います。ディーラーの目的はクルマを売ることです。車の販売に上記4つのものが機能し出しています。代表的なのはレクサスのコーティングです。

カーラッピングは安心・安全を持って広報活動をし、興味を持ってもらうレベルまで来ました。高級車オーナーがカーラッピングを知り始め、やりたいと思うものの、直接カーラッピング業者に行く当てがないので、最寄りのディーラーに聞いたら、そこでやってくれるようになり、そのディーラーは、近くのA社というカーラッピング業者にお願いするという状況なのです。

施工技術が優秀でもお客様が取れないとフィルムは貼れません。お客様を獲得することにフォーカスしないと、いくら施工選手権やコンテストをやっても意味が無いと思いませんか?今一度、マーケティング意識を持つことの重要性を感じて頂きたいと思います。

これからのカーラッピング

冒頭でお話ししたカーラッピングのこれからですが、現在、企業系のマーキングは地方では存在していません。本社が都心にしかないからです。しかし、地方でもプロショップとまでは言いませんが、企業や個人も含めたカーラッピングというカテゴリの事業体ができる可能性はあるのではないか?と感じています。

フィルムは最終的には人間の手で貼られます。そこには男女問わず新しい雇用が必ず生まれます。 そのために、カーラッピングを流行らせ、その土台を作ることと、施工者を増やし、育成する努力の両輪走行をしていくのが私の使命だと思っています。全国のカーラッピング業者は、ディーラー80%、個人のお客様が20%という比率です。ここをもっと50%:50%位にしていかないといけません。

そのためには、お客様に対する価値は何かを明確にすることです。フィルムの知識をしっかりつけて、ビジネス全体の構造を理解しながら自分のポジションがどこにいるのかを理解すること、これがこれからのカーラッピングにおける大きなポイントになっていくのではないでしょうか。

次回はカーラッピング専用フィルムのQ&Aについてお話しします。お楽しみに!

<プロフィール>

山家一繁(やまがかずしげ)

株式会社ワイエムジーワン代表取締役。日本で初めてバスラッピングを手掛け、これまでに約4,000台のバスラッピング製作施工実績を持つ日本におけるカーラッピングのパイオニア。高級車の新しい楽しみ方「LAPPS(=Luxury Automobile Progressive plus Style)」 として車両専用ラッピングフィルムで車の外装をすべて包み込み、カラーリングを変えるラッピングサービスを普及させるYMG1のサービスブランドの立ち上げほか、その施工や集客ノウハウを元にカラーリングチェンジラッピングビジネス講習も実施するなど、カーラッピングの普及に積極的に取り組んでいる。

《カーケアプラス編集部》

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