令和4年3月末の国内の乗用車(軽自動車を除く)の平均車齢は9.03年で、前年に比べ0.19年延び、いよいよ9年を超えるまでになった。ちなみに平均車齢の延びは30年連続であり、それだけ愛車を大切に長く乗るユーザーが増えているということである。
一方で、長く乗れば乗るほど、メーカーの純正部品が劣化し、交換しようにも該当の部品が既に無いというケースも増えてくる。そこで本記事では、自動車メーカーや部品メーカーなどが取り組む、 旧車パーツの復刻や再販、製造の取り組みについてお伝えしたい。
国産自動車メーカーの取り組み
いわゆる「旧車ブーム」と呼ばれる、旧車を好んで保有するユーザーが一定数存在するということは、自動車メーカー側でも把握しており、各メーカーで、1980年代後半から2000年にかけて販売された車を中心に補修部品の復刻、再販やメーカーによるレストア事業が進んでいる。
例えば、日産では『NISMO ヘリテージパーツ』として、1989 年から販売されたR32型スカイラインGT-Rの「純正復刻品」を2017年12月にリリースした後、2019年9月からは「NISMO リプレイス品」の販売も開始している。この「NISMOリプレイス品」は、日産から図面等の提供を受け、NISMO で開発したもので、限りなくオリジナルに近く、素材や製造工程が改善され、強度などが強いと言われている。また、ホンダでは1991年から販売されたBEATの純正部品の再生産・販売を『BEAT parts』として、2017年6月から開始している。
一方、マツダでは、1989 年に発売が開始されるや否や、驚異的な販売を記録したユーノス・ロードスターのレストア事業として、2017年12月に『CLASSIC MAZDA』のサイトで「NAロードスターレストアサービス」のWeb 申込みを開始 。パーツの提供としては 『CLASSIC MAZDA』サイト内に「NAロードスターパーツ情報サービス」を開設し、NAロードスターレストアサービスで交換している純正部品を基に、各部位における推奨交換部品の部品番号や価格などのパーツ情報を知ることができ、部品だけを手軽に受け取ることができるようになっている。また2020年12月からは、供給終了となっていた二代目および三代目のRX-7用サービスパーツを復刻し、再供給している。
トヨタは、1986年から販売されたA70スープラ、1993年から販売されたA80スープラに加え、1967年から販売された2000GTの補修部品を復刻し、2020年から TOYOTA GAZOO Racing の『GR ヘリテージパーツ』サイトでオーダーの受付を開始している。同サイトでは他にもランドクルーザーやAE86カローラレビン・スプリンタートレノなどの復刻部品品目も先頃発表されたばかりだ。
自動車アフターマーケットにおける取り組み
前述した自動車メーカーだけではなく、自動車アフターマーケットの分野においても、補修部品を展開する部品メーカーが旧車ユーザーの熱いニーズを受けて、絶版となっている車種の該当パーツを取り扱っている。3月に開催された自動車アフターマーケットの展示会「第20回国際オートアフターマーケットEXPO2023(IAAE2023)」でも複数のブースでパーツの復刻について訴求していたブースがあったのでご紹介したい。
国内はもとより世界の自動車メーカーや部品メーカーに、足回りを中心とした自動車部品の製造や販売を展開している独立系自動車部品メーカーのGMB株式会社(本社:奈良県磯城郡川西町/松岡祐吉代表取締役社長)では、人気の国産旧車だけでなく、欧米の旧車のウォーターポンプの取り扱いを行っている。同社では2010年からいち早く「旧車」に着目し、パンフレットを作成。展示会などで配布し、周知してきたとのこと。
担当者は「最近は少しずつ認知されたのか、多くの旧車用のウォーターポンプについてお問い合わせを頂くようになりました。ただ弊社の部品だけで旧車は走りませんので、その他パーツの復刻や再販売も含めて、広く周知する事が大事だと思います」と話す。
一方、クラッチ、トルクコンバータ部品の専門メーカーとして70年以上の歴史を持つ株式会社エクセディ(本社:大阪府寝屋川市/吉永徹也代表取締役社長)では、1970年~90年代の車両用クラッチを現代の思想を取り入れ、優れた操作性と耐久性を持たせ再生産した「EXEDY Heritage Collection」を昨年から展開。 純正交換タイプのため、ボルトオン装着が可能なほか、摩擦材やスプリング等の構成部品は最新車種でも採用実績のある純正同等の材質を使用。現在は国産9メーカー、500型式以上に適合しているという。
車齢の伸長に伴い、古い車がアフターマーケットに増えてくると、補給義務期間を過ぎた部品も増えてくるはずだ。そんな中でも今回紹介した各社の取り組みのように絶版となっている部品を探し出せる可能性と選択肢が広がっていることを知っておいてほしい。