アウディ、車両の「使用済み素材」を新車の生産に再利用…試験運用を開始 | CAR CARE PLUS

アウディ、車両の「使用済み素材」を新車の生産に再利用…試験運用を開始

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アウディのリサイクルプロジェクト「MaterialLoop」(マテリアルループ)
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アウディ(Audi)は3月3日、車両のライフサイクル終了後に、車両から取り外された使用済み素材を、新車の生産で再利用するための検討を行っていると発表した。

◆パートナー15社との共同プロジェクト「MaterialLoop」

アウディは、リサーチ、リサイクル、サプライヤーセクターのパートナー15社との共同プロジェクト「MaterialLoop(マテリアルループ)」によって、自動車業界でより多くのクローズドマテリアルサイクルを確立するための新たなステップを踏み出している。

これまで、新車の製造に使用された素材のうち、使用済み車両から回収されたものは、ほとんどなかったという。例えば通常スチールは、使用済み車両から取り外されリサイクル後に、建設などで使用される鋼材になる。アウディは、使用済み車両から回収した二次素材を新車の生産で再利用することで、この状況を変えたいと考えている。

その場合、リサイクルプロセスによって発生する素材品質の低下、いわゆるダウンサイクルは避ける必要がある。アウディのマルクス・ドゥスマンCEOは、「目標は、可能な限り多くの素材を回収し、高品質な素材として生産に再利用すること。これにより、貴重な一次素材の使用が節減され、製品の環境フットプリントが削減される。同時に、二次素材を直接入手できるようになることで、供給安定性が高まる。それによって、原材料を採掘する必要がなくなる」と話す。

◆過去の開発車両を含む100台の車両を解体

2022年10月、MaterialLoop共同プロジェクトの一環として、過去の開発車両を含む100台の車両が解体された。その結果、個々のコンポーネントに対象を絞って回収することで、リサイクル用の大きなプラスチック片など、高品質な二次素材を確保することができた。解体後、残った車体はパートナー企業の協力のもと、スチール、アルミニウム、プラスチック、ガラスなど、素材ごとに細断・分別された。

アウディは、新車の生産にこのような素材の再利用を試みることを目的として、リサイクル業界、サプライチェーン、研究機関のプロジェクトパートナーとともに、さらなるリサイクルプロセスを定義し、試験運用を開始している。

この研究では、アウディのサプライチェーンで素材を回収するための技術的な可能性に加えて、将来の世代のアウディ車をリサイクルする能力を向上することにも焦点が当てられている。このプロジェクトは、アウディのサーキュラーエコノミー戦略の一部であり、サーキュラーエコノミーを実現する上で貴重な洞察が得られるという。

◆A4の生産にリサイクルスチールを使用

パイロットプロジェクトは4月末まで実施される予定だ。同時に、アウディはMaterialLoopプロジェクトから得た貴重な洞察を実践の場に移しており、一部のリサイクル素材は、すでに車両の生産で使用されている。その実例のひとつとして、プロジェクトでリサイクルされた鉄くずの多くは、新しいモデルの生産に使用できるようになっている。

最初の試験段階では、MaterialLoopによる二次素材を約12%含む、6つのスチールコイルが製造された。これらは、アウディの高い品質基準に適合し、最も要求の厳しい構造部材に使用することを可能にした。アウディはこのコイルを使用して、インゴルシュタットのプレス工場で最大1万5000個のアウディ『A4』用インナードアパーツを生産する予定だ。また、プロジェクトの一環として行われた研究では、このスチールコイルを製造するにあたり、車両から回収されたリサイクルスチールの比率を、さらに高めることが可能と分かったという。

さらに、アウディは、プロジェクトパートナーとともに実施した研究で、将来の車両の設計と製造に関する貴重な情報を得ている。選別技術の向上に加えて、新世代の車両のリサイクル可能性を最適化するための取り組みにおいて、リサイクルすることを前提にした設計が決定的に重要な役割を果たすという。

これは、素材の選定、構成、モジュール方式の採用に関して、自動車部品とそのコンポーネントを、使用済み車両のリサイクルの際に、素材の種類ごとに分類できるように設計する必要があることを意味している。

◆リサイクルされた板ガラスをQ4 e-tronの生産に活用

アウディは今後数年間で、車両におけるリサイクル比率を高めたいと考えている。アウディの調達部門は、技術的に可能で、経済的および環境的にも理にかなう限り、自動車用素材のリサイクルプロセスを確立するという目標を追求している。

アウディはこの目標を達成するために、2022年春から使用済み車両のガラスのリサイクルに関するナレッジの収集を、別のパイロットプロジェクトで開始した。修理が不可能な車両のウインドウは、まず粉砕して選別。そこで得られたガラス粒子は溶解され、自動車産業向けの新しい板ガラスに生まれ変わる。すでにこの板ガラスはEVの『Q4 e-tron』の生産に活用されている。

さらにアウディは、プラスチックのリサイクルにも真剣に取り組んでいる。アウディが進める3つのプラスチックリサイクルプロジェクトの1つの「PlasticLoop(プラスチックループ)」により、アウディとプラスチックメーカーのLyondellBasellは、EVの『Q8 e-tron』の生産用に混合プラスチック廃棄物を再利用するため、初めてケミカルリサイクルによるプロセスを構築した、としている。

アウディ、車両の使用済み素材を新車の生産に再利用…試験運用を開始

《森脇稔》

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