ベントレー(Bentley)は6月23日、英国で開幕した「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」において、ベントレー初のターボチャージャー搭載車の誕生40周年を祝福して、10台の車両によるパレードを開催した。
◆1982年に発表された『ミュルザンヌ・ターボ』が原点
今から40年前の1982年、スイスで開催されたジュネーブモーターショーにおいて、ベントレーは史上初のターボチャージャー搭載の市販モデル、『ミュルザンヌ・ターボ』を発表した。この4ドアセダンはベントレーの転機となり、ベントレーの性能を再定義し、「ブロワー・ベントレーの再来」と呼ばれた。
最初のターボチャージャー搭載のベントレーが登場してから40年、ベントレーのエンジンの特徴である強大なパワーとトルクは、ターボチャージャーと切っても切り離せない関係になった。今日のW12気筒、V型8気筒、V型6気筒エンジンはすべてターボチャージャーの恩恵を受けており、高いレベルの性能と効率を実現している、と自負する。
ベントレーは今年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて、ヘリテージコレクションから7台のターボチャージャー搭載モデルを出展した。また、最大出力659psの『コンチネンタルGTマリナー』や最大出力550psの4.0 リットルV8搭載の最新「S」モデル3台を含む現行シリーズの主要モデルも出展した。
◆当時の会長の「楽しもう」のひと言がターボ採用の契機に
ベントレーがターボを採用するきっかけは、1970年代に遡る。1970年代後半になると、ベントレーの販売台数は減少し、米国などの主要市場の顧客に、ベントレーの伝統や理念が伝わっていなかった。このような状況の中、当時のベントレーのデイビッド・プラストー会長は、チーフエンジニアのジョン・ホリングス氏に、「楽しもう」という課題を与えたという。これを受けて同氏は、1959年以来、唯一のパワートレインとなっていた6.75リットルのV8エンジンに、ターボチャージャーを組み合わせることを提案した。
自然吸気の場合、90度のV8エンジンのパワーは200psにとどまっていた。エンジニアのジャック・フィリップス氏が設計したショートストロークとオーバースクエアのシリンダーサイズにより、大きなパワーが可能になった。2プレーンクランクシャフトは、プライマリとセカンダリのバランスを実現し、ブロックはシリコンアルミ合金で作られていた。また、ピストンはアルミ製で、5つのベアリングを持つ鍛造スチール製クランクシャフトは、6つのカウンターバランスウェイトを持ち、燃焼室は半球状に改造され、中央にスパークプラグと2つのオーバーヘッドバルブを備えていた。
ターボチャージャーを搭載した6.75リットルV8エンジンは、最大出力がプラス100hpの300hpを獲得した。これにより、ミュルザンヌ・ターボは当時のフェラーリを凌ぐ加速力を手に入れた。1985年には、ハンドリングとロードホールディングを改善した後継モデルの『ターボR』が発表された。ベントレーの歴史に新たな1ページが刻まれたという。
◆ベントレーならではトルクを可能にするターボ
現在、ターボチャージャーは、シティカーからスーパーカーまで、多くの自動車に採用されている。しかし、1982年、ベントレーがこの技術を採用したのは、大胆な一歩であり、大きな収穫を得ることになった。自動車史家のエリック・ダイモックに言わせれば、「ベントレーの魂を取り戻す」決断だったという。
ベントレーの魅力に欠かせないトルクの潮流は、ターボチャージャーに負うところが大きい、としている。
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