12月2日~5日まで、中国・上海のNational Exhibition and Convention Center 14ホールで開催されていたアジア最大規模の国際自動車産業見本市『アウトメカニカ上海 2024』では、約35万㎡の会場内に約6,500社の出展者が集結。その中で編集部では「タイヤ」に注目。EVの普及が進む中国でのEV用タイヤやニーズはそこまで高くないものの、一定の需要があるオールシーズンタイヤ、悪路が多い中国の道路で力を発揮する自動修復タイヤまで様々なタイヤが出展されていたので紹介したい。
中国No.1タイヤメーカー/中策橡胶・zc rubber
アウトメカニカ上海2024では「タイヤ&ホイール」だけで1ホールまるごと展示が行われており、その中でひときわ目立つブースを展開していたのが「zc rubber」ブランドを展開する中策橡胶(中策ゴム)だ。同社は浙江省・杭州に拠点を置く1958年創業の老舗メーカーで、2022年の中国国内のタイヤメーカー売上ランキングで1位を獲得。世界シェア率でもTOP10に入る有名タイヤメーカーだ。2023年からはサッカー・イングランドのプレミアリーグの強豪クラブ「アーセナル」のオフィシャルグローバルパートナーになるなど、今、中国で最も勢いのあるタイヤメーカーと言える。
ブースの担当者に話を聞くと、同社では2023年から中国国内向けに同社では初となるEV向けタイヤ「EV PRO」(イーブイ・プロ)シリーズを発売し、BYDやシャオペンといったメーカーに純正採用されているという。同シリーズのタイヤが並ぶ隣には【超静】【超穏】【超耐用】という分かりやすい訴求コピーが並び、拡大するEV市場に対して、中国のトップメーカーとしてさらにハイエンドな製品の提供を続けていくと話してくれた。
EV向けのタイヤは2024年6月にドイツ・ケルンでの展示会でグローバル向けのモデルも発表したほか、その他のグローバル向けのタイヤもタイプ・用途別に5ブランドを展開しており、いずれも製造日より5年間の品質保証プランを用意しているとのことで、品質にも自信を持っている様子がうかがえた。なお日本では同社が展開する5ブランドのうち、複数のブランドで既に代理店契約を結び、販売しているといい、今後コスト削減などのメリットを訴求し、日本でも採用を増やしていきたいと担当者は話していた。
オールシーズンタイヤを訴求/山东昌丰轮胎有限公司
各タイヤメーカーが乗用車用、商用車用、スタッドレスなど様々なタイヤを訴求する中、あまり目立たなかったのがオールシーズンタイヤだ。その中で山东昌丰轮胎有限公司のブースでは、出品していたタイヤの中でオールシーズンタイヤの訴求もしており、興味深かったので、担当者に話を聞いてみた。
山东昌丰轮胎有限公司は、2005 年に設立された山東省・東営市に本拠を置くタイヤメーカーで、ヨーロッパ、米国、日本などの先進的な製造技術と生産設備を導入しているそうで、中国の国家強制製品認証 (CCC)を始め、米国 、ヨーロッパ 、ブラジル 、インドネシアなどの製品認証に合格しているという。
担当者曰く「中国でオールシーズンタイヤを履く人はまだ少ないですが、人口の多い中国では少ないニーズでも十分ビジネスになり得る商材は意外に多く、オールシーズンタイヤもその1つです。寒冷地ではスタッドレスタイヤがマストですが、雪があまり降らない都市部では交換の手間や工賃の節約などのニーズをオールシーズンタイヤは満たすので、私たちは商品ラインナップの中にはっきり明示するのです」と人口の多い中国ならではのビジネスポイントを話してくれた。なお日本市場への展開は、技術面や設備面などを参考にしているものの、今のところは積極的には考えていないとのことだった。
悪路走行時の味方!パンク防止タイヤ/广州倍途轮胎实业有限公司
广州倍途轮胎实业有限公司のブースで訴求されていたのは、独自の自動修復技術を駆使したパンク防止タイヤ。广州倍途轮胎实业有限公司は、2017年に江蘇省無錫市で設立された比較的新しいタイヤメーカーで「高性能なタイヤのみを製造する」をモットーに、中国国内のタイヤメーカーとは一線を画すブランド展開を行っている。
そんな广州倍途轮胎实业有限公司は、自社のタイヤラインナップと併せて、特に地方部などに多い未舗装の道路や悪路走行時のパンクなどに対応する自動修復技術を導入したタイヤを訴求。担当者は「独自の記憶修復技術により、異物の侵入による損傷を効果的に修復し、タイヤの本来の性能に影響を与えないようにしています。悪路走行時は私たちのタイヤが強さを発揮します」と語った。
中国のタイヤ生産量は世界の総生産量の約3分の1を占めており、まさに世界一のタイヤ生産国と言える。これまで中国のタイヤのイメージは「高性能」よりも「コストパフォーマンスの高さ」が先行していた感があったが、今回の展示を見ていると、決して“安かろう悪かろう”だけではないレベルの高さを感じた。