自動車が冠水した道路を走行する場合、水深が車両の床面を超えると、エンジンや電気装置に不具合が発生するおそれがある。また、水深がドアの高さの半分を超えると、ドアを内側からほぼ開けられなくなる。国交省によると、2019年の台風19号による大雨では、乗っていた自動車が水没し運転者や同乗者が亡くなる事故が相次いだ。令和2年7月豪雨(2020年)においても車内での被災があったという。国交省では2019年に国内乗用車メーカー8社に対して、自動車が冠水した道路を走行した場合に生じ得る不具合について調査を行ない、「自動車が冠水した道路を走行する場合に発生する不具合」をまとめて、公表している。いっぱんの自動車は、水深が深い場所を走行できるように設計されていない。このため国交省は、大雨の際には早めの避難を心掛けること、冠水した道路に安易に進入しないこと、冠水路で自動車が動かなくなった場合には早めに脱出することが重要だと呼びかける。浸水による車両への影響については、車両形状や設計により異なり、特に、車高が低い車両では影響を受けやすいため、注意が必要だ。●浸水して装置が故障する水深が床面を超えると、車内に浸水して電気装置が故障するおそれや、マフラーから浸水してエンジンルームが損傷するおそれがある。その結果、自動スライドドアやパワーウインドウが動作しなくなる、エンジンやモーターが停止し再始動できなくなる、といった不具合を生じる。水深が床面以下であっても、走行速度が大きくなると、車両が巻き上げた水や生じた波により、吸気口などから車内に浸水する。水流がある場合には、車両が流されるおそれもある。タイヤが完全に水没すると、車体が浮いて走行が困難になることがある。●外に水があるとドアが開かない車が動かなくなるだけでなく、ドアが開かなくなることもある。水深がドアの下端にかかると、車外の水圧により内側からドアを開けることが困難となり、ドア高さの半分を超えると、内側からほぼ開けられない。内外の水の高さが同じになるまで浸水すると、内側から開くようになる。ドアが開かない場合は、ガラスを脱出用ハンマーで割って脱出する。ただし多くのフロントガラスおよび一部のドアガラスとリアガラスは、合わせガラスのため割ることはできないので、どのガラスが割れるか前もって確認しておく。脱出用ハンマーは新車購入時にオプション購入するか、自動車の販売店・用品店で購入する。●冠水した道路は路面が見えづらい冠水した道路で水深や道路の端がわからない場所(アンダーパスなど)には進入しないようにする。万が一、車両が水中に落ちてしまった場合には、前述の手順に沿って脱出する。●水が引いた後の車水が引いた後もエンジンをかけない。また、発火するおそれもあるので、バッテリーの端子(マイナス側)を外しておく。ただし、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車およびハイブリッド自動車は、高電圧のバッテリーを搭載しているので、自分で対処せずに自動車整備工場などに相談すること。一度浸水した車両は、運転が可能であっても、装置が損傷している場合があるため、自動車整備工場などで点検整備を受ける。