初代NSX 技術者たちの丹念な手仕事で「新車」に生き返らせる…NSXリフレッシュプラン | CAR CARE PLUS

初代NSX 技術者たちの丹念な手仕事で「新車」に生き返らせる…NSXリフレッシュプラン

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初代NSX  技術者たちの丹念な手仕事で「新車」に生き返らせる…NSXリフレッシュプラン
  • 初代NSX  技術者たちの丹念な手仕事で「新車」に生き返らせる…NSXリフレッシュプラン
  • 1990年9月13日に発売された初代NSX
  • 1990年9月13日に発売された初代NSX
  • 1990年9月13日に発売された初代NSX
  • 1990年9月13日に発売された初代NSX
  • 1990年9月13日に発売された初代NSX
  • 訪問予定だった、栃木県芳賀町にある「リフレッシュセンター」
  • 訪問予定だった、栃木県芳賀町にある「リフレッシュセンター」
リトラクタブル・ヘッドライトと低く構えた流線型のフォルムに、鮮烈なフォーミュラレッド。

1990年9月13日にHondaが発売した初代NSX(New SportsCar X)は、30年が経過した現代でも「国産スポーツカーの王者」として熱狂的に愛され続けている。


F1ドライバーの故アイルトン・セナ選手が大活躍し、モータースポーツが活況を極めていたあの頃。『our dreams come true. 緊張ではない、解放するスポーツだ』をキャッチコピーに掲げ、1990年当時のHondaの技術を集結させた革新的なスペシャル・モデルとして、初代NSXは登場。世界初のオールアルミ・モノコックボディを採用し、軽量化を実現した国産のミッドシップ・スポーツカーとして大きな注目を集めたことは周知の事実だろう。

1990年9月13日に発売された初代NSX

1990年9月13日に発売された初代NSX


◆27年前から存在する「NSXリフレッシュプラン」

1990年に新車で初代NSXを購入したオーナーが最初の車検を迎える1993年、Hondaはアフター・サービスとして『NSXリフレッシュプラン』を開始。それから12年後の2005年に初代NSXが生産終了となり、同プランもいずれ消える運命かと思いきや…。

実は、2021年現在も提供され続けているのだ。同プラン名でネット検索すれば、Hondaの公式サイトがすぐにヒットするのだが、同プランの存在を知らないまま、やむなく初代NSXを手放したり、旧車やヤングタイマー(初年度登録から15~30年経過したモデル)の整備・修理が得意な専門店に預けて維持しているオーナーもいることだろう。

Honda公式サイト「NSXリフレッシュプラン」


愛車を大切にするオーナーに役立つ情報を届けるべく、国内自動車メーカー、輸入車インポーター各社が取り組む旧車関連プロジェクトの詳細を取材し続けている当編集部は『NSXリフレッシュプラン』の全貌を知るべく、Hondaの広報部へメールで問い合わせたところ、すぐに返答があった。

栃木県芳賀町の本田技研工業施設内にある「リフレッシュセンター」での取材許可を頂けたのだが、その後、2度目の緊急事態宣言が発令されたため、2021年1月中旬にネット取材を行わせて頂くことに。

今回の取材では、主に所長の古市尚士氏からお話を伺ったのだが、整備担当の本多恭二氏、山下剛氏、整備・塗装担当の小栗隆二氏、塗装担当の矢田部良氏にも同席頂き、皆さんからもお話を伺うことができた。

ネット取材にご協力頂いた、所長の古市尚士氏、整備担当の本多恭二氏、山下剛氏、整備・塗装担当の小栗隆二氏、塗装担当の矢田部良氏


◆Honda「リフレッシュセンター」は初代NSXの生まれ故郷にある

「リフレッシュセンターは、初代NSXをはじめ、S2000や初期型インサイトの研究開発施設やテスト走行、新車製造ラインがある高根沢工場があった、栃木県芳賀町の本田技研工業施設内にあり、地方運輸局の指定自動車整備事業の認可を受けている、Honda唯一の指定工場となります。主に初代NSXのリフレッシュ作業として整備や鈑金塗装を行っているのですが、新型NSXのフレーム修理を行えるのも当センターだけです」

そう教えてくれたのは、リフレッシュセンターの古市所長。同センターは、NSXの生産拠点が三重県の鈴鹿工場に移管された2004年に、同センターも鈴鹿工場へ移転されたようだが、2010年4月に現在の拠点、初代NSXの生まれ故郷に戻ってきたかたちとなる。このため昨年(2020)に復帰10周年を迎えている。

訪問予定だった、栃木県芳賀町にある「リフレッシュセンター」 訪問予定だった、栃木県芳賀町にある「リフレッシュセンター」


◆初代NSXオーナーの熱量を感じる現存数の多さ

古市所長は、とても貴重な情報を教えてくださったので、ぜひ紹介したい。初代NSXは、1989年に発表された「プロトタイプNS-X」からはじまり、1990年9月に発売されたI型(E-NA1型)、後に続くタイプR、II型(E-NA2/E-NA1型)、III型 GH-NA2/GH-NA1型、IV型(LA-NA2/LA-NA1型、ABA-NA2/ABA-NA1)、NSX-Rまである。リトラクタブル・ヘッドライトから固定ライトへの変更や、排ガス規制に適応したエンジンのマイナーチェンジなどは行われているものの、2005年12月までの15年に渡ってフルモデルチェンジされずに販売された。

国内・海外を合わせた総生産台数は19,000台で、このうち7,500台は国内オーナーが所有。1990年の発売から27年後となる2017年時点において、なんと約6,000台、80%が国内に現存していることがHondaの調査でわかったことを、古市所長は教えてくれたのだ。

Hondaの他モデルの場合、新車販売時から25年や30年ほど経過したモデルの残存率は、販売台数に対して7%程度らしく、それを考えると初代NSXの残存率の高さは驚異的と言わざるをえない。1990年に登場した初代NSXを、2021年の今日も大切な愛車として乗り続けているオーナーたちの愛情深さ、熱量の高さは「本物」だということだろう。

1990年9月13日に発売された初代NSX

1990年9月13日に発売された初代NSX

1990年9月13日に発売された初代NSX


◆「NSXリフレッシュプラン」は、レストアではない

NSXリフレッシュプランで最も重視されているのは「新車同等の品質に仕上げる」ことであり、レストアサービスとは異なる。NSXは耐久性に優れたアルミボディが採用されているため“サビない”のが最大の強み。塗装面を研ぎ、しっかり下地処理を行うことで「新車」の状態に戻すことができるという。

外観リフレッシュのプランメニュー「外装オール」の作業風景

「リフレッシュセンター」内の様子

「リフレッシュセンター」内の様子


◆幅広い年齢層のプロフェッショナルが在籍

リフレッシュセンターには、初代NSXを新車出荷時のオリジナルの状態に戻すことを目的とした専用設備が整っている。ベテラン、中堅、若手といった幅広い年齢層のプロフェッショナルなメカニックたちが在籍し、丹念に初代NSXをいたわりながら、手作業で丁寧に整備や鈑金塗装などを進行。自動車メーカーのHondaだからこそ確保できるHonda純正の補修部品の在庫を使用し、部品交換をはじめ、さまざまな整備、キズ・ヘコミ修理、ボディの全塗装などが行われている。

改めて、今回取材にご協力頂いた5名の皆さん(リフレッシュセンター在籍メンバーの一部)を写真でご紹介したい。同センター在籍メンバーの方々は、初代NSXを“新車の状態に戻す”ために、全身全霊をかけ熱心にリフレッシュ作業に取り組まれている。なお、作業時は基本的に全員がマスクを着用し三密を避けるなど、新型コロナウイルス感染症対策を徹底されている。※撮影時のみマスク非着用


所長の古市尚士氏。長きに渡り、本田技術研究所/本田技研工業にて数多くの自社モデルの新機種開発業務に従事し、専門知識と経験が豊富。2019年より、NSXリフレッシュセンターの所長として在籍している

整備担当の本多恭二氏。Hondaに入社して40年以上となる経験豊富なメカニック。NSXリフレッシュセンター在籍歴は約10年のベテランでエンジンのオーバーホールなど重整備に携わる

整備担当の山下 剛氏。8年前の2012年から、NSXリフレッシュセンターに在籍。初代NSXの整備に関するテクニカルな知識が豊富で、不調を解決するために必要な方法を熟知している

整備・塗装担当の小栗隆二氏。2019年4月からNSXリフレッシュセンターに在籍している新人のホープ。初代NSXを“生き返らせる”ことに自身の情熱を注ぎ込み、整備だけでなく塗装も熱心に行う

塗装担当の矢田部 良氏。NSXリフレッシュセンターには2015年12月から在籍し、同センタースタッフの中で最も若手で、塗装歴は約5年。ボディの外装を“新車肌”に仕上げるのはもちろんだが、目に見えないフレーム部分も美しく塗り上げるためにスプレーガンを使いこなし、手作業で丁寧に仕上げている


◆幅広い「リフレッシュ」が可能

NSXリフレッシュプランの詳細について紹介したい。車両の総点検、診断、計測、調整、テストコースでの走行検査などを、リフレッシュセンター在籍のメカニックたちが行ってくれる「申し込み基本料(税抜130,000円)」プランが用意されている。

プランに申し込むと、同センターのメカニックが、初代NSXオーナーの最寄りのHonda正規ディーラー(Honda Cars)まで出張し、3時間ほどかけて車両診断やヒアリングを行ってくれる。診断後、車両の状態や価格などの事情で正式契約しなかった場合は診断料(3万円)が発生するが、契約すれば診断料は発生しない。

この「申し込み基本料」プランとセットで、ボディ磨きや細部の洗浄、ホイールハウスの飛び石保護コーティング、経年劣化で痛みやすいワイパーアームやワイパーブレードの交換が可能な「クリーニングオプション(税抜260,000円)」を利用するオーナーも少なくないようだ。

基本リフレッシュのプランメニュー「推奨1」のドア周り関連の交換部品

プランメニュー「足回りオール」足回り関連の部品交換、調整部品

パワートレインリフレッシュのプランメニュー「ミッション」の作業時の様子

外観リフレッシュのプランメニュー「ウインドウガラス」の作業時の様子

内装リフレッシュのプランメニュー「シート交換」の作業時の様子


今回の取材に同席くださったフレッシュセンター在籍スタッフたちによる診断を経たあとは、各リフレッシュメニュー(基本、パワートレイン、足回り、外観、内装)を選ぶ流れになる。納車時には交換部品の整備保証書(2年間有効)にあたる「NSX REFRESH RECORD」をもらえる。

またプランを受けた車両のエンジンルームには、シリアルナンバー入りのオリジナルプレートをリベットにて取り付けてくれる。NSXリフレッシュプランが開始された1993年から2021年1月末時点までの間、同プランを受けた車両は338台あり、日本各地の初代NSXオーナーが長期的に利用しているという。

「NSXリフレッシュプラン」を受けたオーナーに発行される「NSX REFRESH RECORD」

「NSXリフレッシュプラン」を受けた車両のエンジンルームに、刻印入りのオリジナルプレートがリベットにて取り付けてくれる


ちなみに、昨年2020年9月13日は、初代NSX発売30周年の記念日だったため、特設サイト(https://www.honda.co.jp/NSX/30th_anniversary/)が開設された。同サイトには、NSXの歴史やストーリー動画、開発者からのメッセージなどが公開されている。

同サイトのオリジナルコンテンツのひとつに、今回取材にご協力頂いた皆さんをはじめとする、リフレッシュセンター在籍スタッフが登場されている動画があるので、本記事でも紹介させて頂く。以下動画URLは、2021年9月ごろに非表示となるため、その前にぜひ閲覧してほしい。




◆申込みの流れ

申込みはHonda Carsに来店または電話で問い合わせを行い、「NSXリフレッシュプラン」に申し込みたい旨を伝えるだけだ。しかしながら補修部品の数に限りがあり在庫確認や確保にどうしても時間を要するため、車両診断を受け、申し込み(正式契約)から作業の開始まで約1年ほどはかかるようだ。

当然ながら希望するメニューによって、納車までの期間に差がある。特に、ボディのキズ・ヘコミ修理(鈑金)や塗り替え(全塗装)は、リフレッシュセンター在籍スタッフが、一台一台を手作業でとても丁寧に仕上げているため、鈑金塗装作業そのものに半年や1年ほど時間がかかるケースもあるという。

このほか、取り外した部品は基本的にリフレッシュセンターで廃却となる。また、リフレッシュセンターへの車両搬送費用は申し込んだオーナー負担となり、車両搬送は、オーナーの自走で栃木のリフレッシュセンターへの持ち込みが可能。納車時もリフレッシュセンターで引き渡ししてもらえるようだ。

なお、Honda公式「NSXリフレッシュプラン」WEBサイトに各メニュープランの価格が掲載されているが、各プラン単独の料金となるため、プランの組み合わせによっては重複作業分の料金は差し引いてもらえる。詳細はHonda Carsに直接問い合わせしてほしい。

「NSXリフレッシュプラン」申込みの流れ


初代NSXを誕生させたHondaが、1993年から27年もの間、継続し続けている『NSXリフレッシュプラン』は、これからもできるだけ長く初代NSXに乗り続けたいオーナーの切なる願いを叶えてくれる、とても貴重なものだと今回の取材で痛感した。


1990年に発売された初代NSXだけでなく、新車から30年以上経過しているクルマを、かけがえのない「愛車」としてずっと大切に乗り続けたいクルマ好きは日本各地に存在しているのは確かだ。

Hondaに限らず、国内自動車メーカー、輸入車インポーター各社が、リフレッシュサービスや補修部品の供給販売・復刻再販、レストアサービスまで行えるように、限定的ながらも粛々と各社プロジェクト担当メンバーたちが情熱を持って取り組んでいることは間違いない。

だが、日本で旧車に長く乗り続けるには、さまざまなハードルがある。高い自動車税の支払いや車両保険加入の難しさ、車検をクリアするための消耗部品不足、旧車の整備・修理が得意なプロショップが限られているなど、旧車の長期保有には維持費と覚悟が必要になる。もっと気軽に、旧車に乗り続けられるような日本社会になることを強く願う。
《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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