1994 年のホンダ・オデッセイの登場を皮切りにシェアを伸ばし、セダンタイプに取って代わって乗用車の主流モデルとなったミニバン。実は近年では、乗用車のみならず霊柩車の世界にもその波が広っている。6月17・18 日にパシフィコ横浜で開催された葬祭サービスの総合展示会「フューネラルビジネスフェア2019(主催:綜合ユニコム)」では、車両展示した霊柩車メーカー3社全てでミニバン型を出展。ミニバンが身近な存在として定着したことや、控え目で倹約的といったハレへの志向の変化など、様変わりするトレンドを会場に映し出していた。 ◆葬儀兼搬送型からリムジン型までミニバン型霊柩車を出展していた企業の中で、オリジナリティ溢れる自動車開発でクルマ好きにも馴染み深いのが光岡自動車だ。同社は20年程前から霊柩車事業を開始し、自社のガリューをベースとした霊柩車など年間約500台を生産。同社担当者によると、「霊柩車の車齢は15~20年程と乗用に比べて長いため、年式が判別しづらいガリューのようなクラシカルな顔つきが好まれている」という。その同社が手掛けたミニバン型霊柩車が、トヨタ・アルファードをベースに架装した搬送車兼霊柩車「フュージョン」だ。近年ではクラシカルな様式の葬儀を望む声とは別に、「葬儀」でのお見送りと病院から安置所までの「搬送」の両方を1台に求めるといった合理性を求めるトレンドがあるといい、それに応えるべく開発した一台。内装は高級感・機能性を盛り込む架装を施しているが、外装はクォーターウインドウの装飾以外はシンプルなデザインで、病院への乗り付けも気兼ねなくできる仕様となっている。一方、葬儀用車両製造を手掛けるカワキタのブースには、トヨタ・ヴェルファイアをストレッチしたリムジンタイプの霊柩車を展示。葬儀用途に特化した仕様だが、「乗用車としてミニバンが定着したため、『自分が乗っているクルマがベース』という理由で身近に感じ、興味を抱く人も多い」(ブース担当者)そうだ。◆顧客フィードバックを元に進化した近未来型霊柩車ミニバン型霊柩車が隆盛を見せる中、「近未来型」とのコピーを打ち出して一際注目を集めていたのが、業界でも先駆けて開発・製造に取り組んできたTRGのブースだ。TRGは、福岡で修理・整備から車販、保険、ロードサービスまで一手に手掛ける朝日自動車のグループ企業。長年にわたってミニバン型を含めた多彩な霊柩車の製造を手掛けており、厚い信頼を誇る地場はもとより、全国から高く支持されている。そして、そうした全国の顧客の細かな要望を汲み取り、葬儀用・搬送用の2用途を高い次元で賄う「ロータスII」が開発された。とりわけ高い作業性が特徴で、搬送時に必要な小物用の収納ボックスや遺影・位牌を設置するスペースを確保。霊柩車を想像させるレザーシート以外のカーラッピングも選択可能で、従来の搬送車以上の利便性を実現している。担当者は開発の背景として、「周辺環境への配慮や条例などを理由に霊柩車の主流が『宮型』から『洋型』へと移ったが、それでも従来はリンカーンやキャデラックなどのリムジンタイプが定番だった。現在、そういった“いかにも”なビジュアルが求められる一方で、合理的で派手さを求めないお客様も増え、葬儀と搬送を兼ねたミニバン型の需要は着実に増えている」と市場の動向を説明。会期終了間際にも関わらず、後を絶たない葬儀関係者のブース来訪が、その市場変化を表していた。最近では、小さな子供に絵を描かせると、セダンではなくミニバンのフォルムを描くこともあるという四輪車。そう遠くない将来、霊柩車も神輿のようなフォルムではなくミニバン型が当たり前になる時代が訪れるかもしれない。
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