ベトナムの「エリート整備エンジニア」が日本の整備業界を救う!…川崎大輔の流通大陸 | CAR CARE PLUS

ベトナムの「エリート整備エンジニア」が日本の整備業界を救う!…川崎大輔の流通大陸

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2018年2月にハノイにある自動車学部を持つ大学、技能実習生の送り出し機関を訪問。人材が不足する日本の整備業界にとって、ベトナム人のスカイブルーを活用した循環型スキームをしっかりと考えていく必要を感じた。


◆自動車整備職種の外国人技能実習制度がスタート

2016年4月1日より外国人技能実習生制度において「自動車整備」が職種に追加された。これによりベトナム人技能実習生が自動車整備の研修生として日本企業で働くことができる。

ベトナムにおいて自動車整備は大きな意味を持つ。ベトナム自動車工業会(VAMA)の発表によると2017年通年の総販売台数(輸入車及びVAMA未加盟メーカーを含む)は、27万2,750台。多少の減速は伴うにせよ今後も拡大傾向が続くと考えられる。

ベトナムの1人当たりGDPは、モータリゼーションが始まるとされている3,000ドルの水準に迫っている上、1億人前後の巨大市場を持つ。2000年には1万台程度だった自動車販売台数だったが、2015年には20万台を超えた。特に2013年以降は年率平均 35%の急速な成長を見せている。自動車市場の拡大に伴い自動車整備技術、技能の需要は増えていく。これからの自動車整備はベトナムの産業を担っていく上で重要な職種となるだろう。

2017年の年末ごろから、ベトナム人技能実習生が自動車整備の研修生として日本の整備事業者に入り始めた。技能実習生の採用を検討する整備事業者が増えつつある。一方で、日本で働ける年数が限定されており、整備技術や日本語能力が身についたタイミングで帰国をしてしまうことを理由に躊躇(ちゅうちょ)する事業者も多くいる。


◆循環型の人材スキームが重要

ハノイにある技能実習生送り出し機関のベトナム人代表は「日本で働いた後、本国に帰ってきたベトナム人をベトナムでの日系企業に紹介していきたい」という。日本の企業で学んだ技術を母国の発展にいかせるように日系企業への就労支援などを提案している。整備業界は技術を身につけてベトナムに帰国すれば必ず役に立つ。

技能実習生の送り出し機関では、自動車整備の職業訓練はもちろん、4S、QC、あいさつなど日本のマナーなども指導するようにしている。しかし最も力を入れているのは日本語の教育だ。「日本語ができないと本人もつらい」とベトナム人の日本語教師は指摘する。彼らも日本にいった元実習生たちだ。帰国後に日本語能力N2級を取得。これから日本にいく実習生に対して日本語教育を行っている。日本語がわからなければ、仕事ができない。仕事ができなければ技術や技能、知識も学ぶことができず将来何も残らない。特に日本人とのコミュニケーション能力の習得を第一目標に掲げて教育を行っている。


◆スカイブルー(整備エンジニア)と技能実習生

技能実習制度は整備人材の人で不足を補う制度ではない。報道でもあるように失踪(しっそう)してしまうケースがある。一部の企業が人手不足を補う安価な労働力として確保し、劣悪で低賃金な労働を強いているという実情もあるようだ。

単に整備人材の不足という安易な理由では、人材の使い捨てであり、日本整備業界の人材不足の根本的解決にはならない。技能実習生が日本で学んだ経験を、ベトナムに帰国してからも活躍できるような循環型の人材スキームが必要だ。

それには、エリート整備エンジニア、スカイブルーが日本とアセアン各国の真の架け橋を創(つく)り出していけると考える。


◆なぜ今「スカイブルー」なのか?

スカイブルーとは「単なる熟練ではなく、かなり高度の専門的知識と技術の裏づけを持ち、マネジメントもできる、新しいタイプの人々(外国人)」を意味する。ブルーカラー層ではない大学を卒業した外国人人材だ。2016年に日本で働く外国人の数はついに100万人を超えた。しかし専門的技術を持った高度人材は圧倒的に不足している。

「ベトナムでは年間で1万人近くの理工系大学を卒業した技術者(エンジニア)候補がいるのではないか」とハノイにある大学の学部長は指摘する。しかし学校を卒業しても仕事があるのは3割ほど。日本で不足している高度人材だが、ベトナムでは専門を持っていても仕事がない状況が続いている。年齢が若く、技術が高く、人口も多いという利点を持っているのがベトナム人エンジニアの特徴だ。しかし、言語や文化の違いが大きな障壁となっている。

現地の自動車学部や機械工学部の大学生、または卒業生に日本語の教育を行うことで、スカイブルー人材になり得る。彼らは日本で働く期間に縛りはない。5年でも10年でも彼らが望めば日本で働ける。一定水準以上の整備技術を日本で身につけることが可能だ。また、大学での高等教育を受けられる彼らは、一定レベル以上の知識、資本、人的ネットワークを持っていることが多い。つまり、日本で身につけた技術を、ベトナムに戻り、自ら整備工場や整備教育機関を立ち上げられる能力、資産を持っている。日本の受け入れ企業のベトナム進出時の現地幹部として母国に戻ることもできるだろう。

日本から帰国したスカイブルーの活動が、実習期間が終了した技能実習生たちの出口、つまり受け入れ場所となる。日本で学んだ整備技術を、次に日本に来るベトナム人に伝授していくことができる。これから日本にいく自動車整備候補人材のレベルが向上に役立つ。スカイブルーはマネジメントもできる。同じベトナムという国であればコミュニケーションも問題ない。日本国内で今後増えていく技能実習生を組織し、まとめられる点も大きなメリットだ。

スカイブルーとの信頼関係を築けた日本の自動車整備事業者が、将来のグローバル化を成功させる。スカイブルーの雇用が国籍や言葉を超えた信頼関係を築く大事なステップとなる。

人材が不足する日本の整備業界にとって、ベトナム人のスカイブルーの存在は業界を救える。それにはベトナム人を受け入れる企業も、彼らがベトナムに帰国してからも活躍できるような循環型の人材スキームを検討し、実行していくことが大切だ。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

【川崎大輔の流通大陸】エリート整備エンジニア、スカイブルーが日本整備業界を救う

《川崎 大輔》

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