【ホンダ NSX 試乗】スーパースポーツらしからぬ静けさ、視界、乗り心地に好印象…青山尚暉 | CAR CARE PLUS

【ホンダ NSX 試乗】スーパースポーツらしからぬ静けさ、視界、乗り心地に好印象…青山尚暉

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ホンダ NSX 新型
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ついにホンダのHVスーパースポーツ、新型『NSX』を公道で試乗するチャンスが訪れた 。試乗したのは神戸。一般道、高速道路、ワインディングという3つのシチュエーションをコンパクトに体験できる場所である。

これぞ神戸という景色をバックに間近に見るNSXは、とにかくカッコいい!! スーパーカーはカッコ命でもあると思っているのだが、ミッドシップらしい、ディティールにも凝ったスタイリングはThis is スーパーカーそのものだ。

1990年デビューの初代NSXは「2人でゴルフに出掛けられるスーパーカー」的なコンセプトがあったと記憶しているが、そのためゴルフバッグをクロスさせなんとか2セット積めるトランク部分が妙に長く、バランス悪く感じたものだ。

しかし車体をアメリカが、パワートレーンを日本が担当した米日共同開発車、オハイオ工場生産の新型は、そのあたりのスタイリングに破たんなし。トランクは初代の 1/2のスペースで、ゴルフバッグは1セットがギリギリ積めるスペースになった。

それはともかく、日本に現時点で10台もない2370万円もの価格、3.5リットルV6ツインターボ+3モーター「SPORT HYBRID SH-AWD」、最高出力581ps、最大トルク65.9kgmのスペックを持つスーパースポーツに試乗するとなると、それなりに緊張して当然だ。

しかしだ。バータイプのドアオープナー後端を引きドアを開け、コクピットに身を 沈める一連の動作は、意外にも無理のないものだった。シートポジションは確かに セダンなどと比べれば低いが、地面スレスレに着座する、という感覚ではない 。シートにハイトアジャスターはないが、それでも自然なドライビングポジションが取れる。インパネはアイポイントに対して低めにセットされ、前方視界、斜め前方視界が実にいいことも褒められる。

もっとも、ナビは他のホンダ車と同じごく普通なデザイン、サイズ、機能。収納はグローブボックス以外、ないに等しい。センターコンソール後端にスマホが辛うじて置けるトレーがあるのみ。例えばポーチやブリーフケース程度の荷物でも、ミッドシップ搭載されるV6ユニットの後方にある幅広のトランクスペースに入れるか、助手席、助手席足元に置くしかない。『S660』はシート背後に薄い荷物なら置くことができるが、NSXはそうもいかない。今回は2名乗車なので、手持ちのトートバッグはトランクに入れることにした。

が、そこで開発陣からアドバイスが。「トランクはかなり熱くなるので、スマホ、 パソコンなどの精密機械は車内に置いてください」とのこと。冷蔵品などもっての ほかである(トートバッグ本体、中身は走行後、かなり熱くなっていた。冬、助手席に乗る女性のコートをしまっておけばホカホカになり、喜ばれるかもしれないが)。

実に自然で前方視界抜群のドライビングポジションを決め、ステアリング左側の薄赤色のプッシュスターターでNSXを目覚めさせる。基本は何もしなくてもブォン!!という野太いブリッピングサウンドが放たれ、スーパースポーツに乗っていることを意識させてくれる。

もちろん、新型NSXはEV走行も80km/h、2~3kmまで可能なSPORT HYBRID SH-AWDのスポーツカーであり、静かに走れる「Quiet」モードを備え、儀式のブォン!をキャンセル、タイマーキャンセルすることもできるから安心だ。住宅街で深夜に出掛ける際、派手なブォン!は困る。

新型NSXを発進させるには、『レジェンド』などでおなじみのエレクトリックギアセレクターを使う。レジェンドはP-R-N-D。NSXもP-R-N-D/Mというほぼ同じ配列。 Dボタンを押せば発進でき、あとはそのままDレンジ走行するか、パドルシフトによる電光石火の変速を楽しむことになる。

しかしながらエレクトリックギアセレクター回りのデザイン、パーツ、Dレンジに入れるボタンのリングの色も緑とレジェンドと同じ。このあたり、価格、車格、スーパースポーツなりの演出、差別化があってもいいと思わせる。

まずは市街地のインプレッションを行うため、パワーユニットシステムを統合し、 ダイナミクスとテイストを制御するインテグレーテッド・ダイナミクス・システムの4つの走行モード(Quiet、Sport、Sport+、Track)からHVスポーツならではの Quietモードを選択。すると全長4490×全幅1940×全高1215mm、車重1780kgものNSXはEV走行でスルスルと音もなく発進する。この感覚、多くのスーパースポーツと一線を画す新しさである。

もちろん、エンジンは早期にかかるが、それでも排気音など実に静かに抑えられて いる。神戸の静まり返った高級住宅街を走り抜ける際、これは助かった。超高性能 にして極めてジェントルな顔も持ち合わせるスーパースポーツというわけだ。

2ペダルで乗れる9速DCTは1速が発進専用、9速がクルーズ専用だが、Dモードでの変速は文句なくスムーズ。

ところで全幅は1940mmあり、手動格納のステーが長いドアミラー(軽量化と空力性能のため)を含めたミラー・トゥ・ミラーで約2.2mに達する車幅は、しかし、高速料金所ゲート、神戸の道幅がそう広くない市街地走行でも扱いに困り緊張するほどではなかった。スポーツカーとしてはアップライト気味の着座姿勢、前方、真横方向の 視界の良さがそう感じさせてくれるのだろう。

驚いたのはアクティブダンパーシステムがもたらす乗り心地。フロント 245/35ZR19、リヤ305/30ZR20という大径スポーツタイヤを履いているにもかかわらず、確かにスーパースポーツらしくストローク量は少ないものの、終始フラットで、段差越えや荒れた路面でも不快なショック、振動はほぼなし。ゆったりとしたホールド感を持つシートクッションのダンピング特性もよく計算されているという印象だ。

前方視界が良く、乗り心地も文句なく、キャビン背後からのサウンドもスーパースポーツとしては恐ろしく静かなQuietモードのまま阪神高速へ。合流で一気に581psの血の気の引く加速を堪能…とはいかなかった。理由はQuietモードではアクセルペダルストローク量が増え(エンジンをかかりにくくするため)、 エンジン回転が4000回転に抑えられ、排気バルブも制限されるため、1780kgの車重に対して約325psの控えめな出力となるからだ。

もちろんそれでも十二分に速く、流れをリードできるのだが、NSXのスーパースポーツとしての加速力を発揮するのは581ps仕様に豹変するスポーツ以上のモードとなる。ちなみに公道で使わないことが推奨されるサーキット専用のTrackモードと Quietモードでは、キャビンに進入する排気音の音量が25dB(約11倍!!)も違うとの こと。

発進から市街地走行までの印象をまとめると、乗降性はこの車高のスーパースポーツとしてはかなりよく、キャビンはタイトすぎず運転姿勢も拍子抜けするほど!? 自然。Quietモードに入れておけば、らしからぬ静かで乗り心地のいいドライブが可能ということ。ただし、斜め後方の視界はかなり制限され、最低地上高は11cmと低く、バック、段差や縁石などには気をつかう必要がある…といった感じ。価格や見た目の“スーパースポーツ感”に対して、始めてステアリングを握ったボクが、思いのほか自然に構えることなく乗れる! という好印象さえ持てたのだ。

ちなみにこの日の神戸の気温は28度。しかし、ナビを操作しているうちに誤ってエアコンをOFFにしてしまったところ、キャビンは一気に温室状態に。背後から侵入する熱はけっこうなものと推測できる(だからトランクも熱くなる)。

そうそう、すでにナビはホンダ車でおなじみの普通のものと書いたが、できれば先進感あるタブレット状のものにしてほしかった。加えて、車幅、最低地上高を考慮した、「比較的広い道を選択」するルート案内モードもあったらいいなと感じた。渋滞を避け、狭い裏道を案内されたらたまりません。

神戸での高速、ワインディングロード(芦有ドライブウエー)走行、Sport、Sport +モードのインプレッション、実燃費はあらためて報告したい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。
《青山尚暉》

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