生まれながらにスマホがあった世代なら何とも思わないだろう。が、「Eタイプいいよね」などと今でも心の中で思うオジサンにとって、ジャガーからSUVが登場しただなんて、紙の硬キップが一瞬にしてSUICAに変わった…それほど「エエッ!?」な驚きではある、本当は。とはいえ仮想現実でも何でもなく本当に姿を現わした『F-PACE(エフ・ペイスとクッキリと発音する)』は、近年のジャガーの各モデルの文脈からすれば、その延長線上にある。フロントマスクはサルーン系と共通のモチーフだし、リヤウインドを寝かせてシュン!と絞った形は、ポルシェのSUVモデル以上のスポーティさだ。19インチの大径タイヤで足元を固め、今どきの高性能SUVの風潮にしっかりと乗っている。インテリアはエンジン始動で自動的にせり上がってくるコンソールのセレクターダイヤルなど、最近のジャガーで見慣れた光景。後席はヒップポイントが案外と低くシートバックも寝ており、スポーツセダンの後席のよう。広さはラゲッジスペースを含め、十分なものとなっている。試乗車はシリーズでは比較的ベーシックな「20d PRESTIGE」(車両本体価格663万円)。設計から生産までジャガー・ランドローバーが手がけたという新規開発の2リットルの4気筒ディーゼルターボ(180ps/430Nm)を搭載、8速ATが組み合わせられる。その走りは十分なトルクに助けられ力強く、試乗会場近辺の山岳路でも9%の勾配を何なく駆け上がってみせた。コンコンと小さなショックが伝わるモノコックボディはいかにもアルミ主体(80%)と思えるもので、1920kgの車重を意識させない軽快な印象の身のこなし。とはいえステアリングフィールのなめらかさに、いかにもジャガーを走らせていることを実感させてくれる。キーの役割を果たすリストバンド、自動で展開/格納するサイドステップなどのギミックも満載だ。■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★オススメ度:★★★★★島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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