クルマを買えばシートはもちろん装着されているが、それが必ずしも全員にベストとはいえない。ならば自分好みのものに交換してドライビングポジションを作り直す方法もあるのだ。
純正シートはあらゆる体型の人に向けて作られている。なので誰しもそこそこマッチはするが、万人にベストマッチとも言えない。ならばシートを変えてしまえばいい、というカスタマイズの提案である。
クルマの純正パーツは自動車メーカーがたくさんの開発費を掛けて作っていて、クオリティの高さはもちろん、耐久性も高く純正至上主義の人が多いのも納得できる。
◆純正シートがベストとは言えない
しかし、シートだけはそもそも体型に合うかどうかという問題がある。そうなると必ずしも純正シートがベストとは言えないのだ。ではどんな交換用シートがあるかというとおおまかに分けて3種類が存在する。
1:リクライニングシート
純正シートのようなリクライニングして普通に座れるシートだ。一見同じようだが幅や座面の長さなどがメーカーやモデルによって異なる。それによって体型に合わせ込むことができる。
調整箇所や交換パーツなどはほぼないのであとからカラダに合わせ込むことは難しい。
2:セミバケットシート
リクライニングシートよりもサイドサポートが深く、カラダをきっちりとサポートしてくれるのがセミバケットシート。フルバケットシートはリクライニングできないが、セミバケットはリクライニングできるのが特徴。
スポーツ走行と街乗りを両立したい人に選ぶ人が多い。こちらもシート自体に調整箇所や交換パーツはないので、購入時にカラダにマッチしているかをよく確認することが必要。
3:フルバケットシート
レースなどでも使われるリクライニング機構のないシートがフルバケットシート。カラダを包み込むようにホールドすることで強い横Gが発生していても的確な操作がしやすい。
スポーツ走行をするにはこれ以上ない存在だが、普段乗りではサポートの高さから窮屈さを感じることもある。
フルバケはつらいとか、腰が痛くなるというイメージの人も多いが、適切な角度からリクライニングできないのでむしろ変な座り方ができないので疲れにくいという意見もある。
メーカーにもよるがいくつかのサイズが用意されていることもある。愛知県で製造しているBRIDEの場合、普通サイズの他にXLサイズがあるモデルと、女性向けのモデルもラインアップされている。カラダが大きな人にはXLサイズがあるし、小柄な人や女性には小さなサイズも用意されているのだ。
さらにシートに取り付けるパッドなども用意されているので、カラダに合わせてカスタマイズすることができるのだ。
◆どう活かすかは取り付けの技術に
このようにシートによって向き不向きがあり、それぞれに特徴がある。そしてそれらをどう活かすかは取り付けの技術にも掛かっている。
シートはただ外して付けるだけだが、シートレールの微妙なガタをどっち方向に寄せるかでステアリングの中心にシートが来たり、逆にズレてしまうこともある。
取り付け部にワッシャーなどを入れることで絶妙な角度調整をしたりもできる。実は簡単なようで奥深いパーツなだけにDIYとプロの取り付けでは意外と仕上がりに差が生まれるパーツでもあるのだ。
最近のクルマではシート自体にエアバッグが装着されていることがある。そんな場合にシート交換するとエアバッグの警告灯が点灯し、その状態では車検に適合しない。シートメーカーからエアバッグを外した部分に取り付ける警告灯キャンセラーが発売されているので、そういったもので対応しておきたい。
あとは気をつけておきたいのは車検について。これまではシートとシートレールが同一メーカーならOKとか、フルバケットシートの背面にクッション材が張ってあればOKとかが主なルールだったが、近年変わってきている。
車種ごとのそのシートとシートレールが適合しているかの証明書を求められることが増えている。こちらはシートメーカーに問い合わせればもらえる資料だが、個人からの問い合わせには対応していないこともある。
まずはプロショップに車検の相談をして、そういった証明資料が必要であればショップからシートメーカーに請求して送ってもらうことになる。
ちょっと手間だが、そういった対処をすれば合法にシート交換を行うことができる。自分のカラダにマッチしたシートなら運転もしやすくなるし疲れにくくなる。ぜひシートのカスタマイズを体験してみてもらいたい。