エンジンパワーを測ることができるシャシーダイナモによるパワーチェック。それはなにがわかってどんな効果があるのか。パワーチェックを活かしてできるカスタムとは!?
◆全開時の出力を計測することができる
パワーチェックとはクルマの馬力を計測すること。大きく分けて2種類。ローラー式とハブ式がある。ローラー式はクルマごとそれぞれのタイヤの下がローラーになっている場所に乗せ、そこで走ってパワーを計測する。ハブ式はタイヤを外して、そこにパワーチェックするための計測機を取り付けるタイプだ。
ローラー式は簡単に計測しやすいメリットがある反面、エアロパーツを装着していたり、車高が低いクルマはそもそもローラーに入れることができず、パワーチェックができないことがある。ハブ式は取り付けがやや面倒だが、車高やエアロパーツに関係なく計測できるのと、実際にタイヤで走っているわけではないので飛び出し事故が起きないというメリットがあるのだ。どちらも計測できるのは最高出力と最大トルク。3速や4速などに入れてアクセルを全開にしたときにどんなパワーとトルクがあるかを数値化することができる。
◆細かいエンジンECUセッティングができる
そのメリットは細かいECUセッティングをしてこそ真価を発揮する。低回転から高回転までパワーチェックをしながら、燃料噴射の量や点火時期を調整することで細かく煮詰めていくことができる。昔はそういった機械がなく、ほとんどのチューナーが公道でセッティングしていた。大きな声では言えないが高速道路で全開域のセッティングまでしていたのが事実。とはいえ、実際4速、5速、6速の高回転域のセッティングはできず、煮詰めきれていないということもあった。それがシャシーダイナモと呼ばれる機械が登場し、走行状態に近い状態を再現できるようになったことで、しっかりと高回転域までセッティングができるようになったのだ。
実際チューニングショップでもほぼシャシーダイナモ上でECUセッティングを詰め、仕上げは公道で普通に走った時のアクセルに対する反応やアイドリング付近の操作のしやすさ、冷間時のエンジン始動の確認などをしていることが多くなったのだ。ショップがシャシーダイナモを導入するのはパワー計測というよりも、セッティングを細かく煮詰めることが主目的なのだ。
また、エンジンECUセッティングの開発にもシャシーダイナモは欠かせない存在になっている。いわゆるECUの解析と呼ばれる作業でそれを行っているのは大手パーツメーカーや、一部のECUを得意とするショップだけになるが、ECUマップのどの数値が燃料の量で、どの数値が点火時期かなどを探っていく。数値を書き換えて、パワーチェックをして変化があればどんな領域の数値なのかを予測して読み解いていくのだ。膨大な手間のかかるこの作業をしていくことで、ECU内部データがどのあたりはどんな領域かが分かり、ECUチューンが可能になるのだ。
そのため解析作業では数日から数週間もシャシーダイナモにクルマは乗せたまま、ECUを書き換えてはパワーチェックを繰り返していく。多くの場合、データを書き換えてインストールをして、それからパワーチェックして、再び書き換えてパワーチェックをする。書き換えには数十分かかることも多く、1日に何度も変更できないこともあり、大変な時間と労力が掛かっているのだ。
◆健康診断的にパワーチェックしておくのも手
パワーチェックを健康診断的にしておくのもあり。新車時やカスタムしたときにパワーチェックしておけば、その後なんとなく調子が悪いとか、遅くなった気がすると思ったときにも、それが気のせいなのかをデータでチェックできる。
徐々に経年劣化で落ちてくるかもしれないし、新車時にパワーチェックすると数千キロ走行後には慣らしが進んでパワーが上がるという話もある。そういう意味でも定期的にチェックしてデータを把握しておくのもアリなのだ。もちろん、チューニングするたび計測しておけば、その効果も数値として把握することができるのだ。
気をつけたいのが係数。これは計測した数値を補正するためのもので、100psのクルマに10%の係数をかければ110psとなる。これがやっかいでA店では係数なし、B店は係数1.1となると、同じクルマでも10%のパワーの差が出てしまう。係数を把握していないと同じ車種で同じようにECUチューンを施工したとしても、「B店のECUはすごいパワーが出るらしい」なんて言われることになるのだ。係数を掛けること自体は悪いことではないが、どんな目的でどれだけ係数を掛けているかを把握して、その上での数値だということを理解しておきたい。