チューニングといえばラジエーター交換も定番だったが、最近のクルマではあまり交換しないことも多い。なぜラジエーター交換はしなくなったのか。また銅製は街乗り向けと言われていた材質議論の結論は!?
◆エンジンを冷やす重要パーツだけに
きちんとしたものを選びたい
エンジンを冷やしている冷却水の熱を空気中に放出するための装置がラジエーター。チューブと呼ばれる薄い楕円形の金属の内部をクーラントが流れることで熱を放出する。その効率をよくするためにチューブとチューブの間には金属が波形に加工されたフィンが入っていて、表面積を増やすことでクーラントの温度を下げやすくしている。純正ラジエーターは十分な容量があり、水温は80~100度くらいで安定している。しかし、チューニングをするとその容量が足りなくなることがある。エンジンパワーを増やせばそもそも発生する熱量が増える。
通常ラジエーターには十分な容量があり、水温はサーモスタットの設定温度付近で安定する。サーモスタットが90度で開くとしたら「水温が90度になってバルブが開いてラジエーターに冷却水が流れる」→「水温が80度台まで下がってサーモスタットのバルブが閉じて、冷却水はエンジン内部だけを循環する」→「水温が90度になってバルブが開いてラジエーターに冷却水が流れる」これを繰り返している。それくらいキャパシティには余裕があるものだが、エンジンチューンなどでパワーが上がれば熱量が増え、サーモスタットが開きっぱなしで常にラジエーターに冷却水を循環していても温度が下がらなくなってくる。そうなると水温が上がってしまい好ましくない状態になってくる。
◆現代のクルマは100度くらいではまったく問題がない
では何度からが危険なのか。2000年までくらいのクルマでは水温は80度くらいがターゲット。90度以上では高めで100度なるとクーリングが必須の温度だった。100度以上となればエンジンヘッドが熱で歪んでしまって、その隙間からクーラントを噴いてしまうと言われていた。実際、オーバーヒートとも言える温度で、歪んだヘッドを直すのに面研しなきゃいけない、なんて言われていた。
ところが、ここ20年のクルマはざっくり言えば100度は問題なし。110度となるとちょっと気をつけたいという程度。10~20度ほど適正な温度が上がっている。その理由としては全体に温度を上げることで燃焼室の温度も上げ、完全燃焼を促すことで排ガスのクリーン化を目指すなどと言われている。詳細は不明だが、そもそもの設計された温度が上がっているので問題ない。ヘッドが歪むこともない。なので近年のクルマであれば、110度を超えてしまうようなことがなければラジエーター交換の必要はないのだ。
◆交換する場合はアルミ? 銅?
水温が高くラジエーター交換が必要な場合、どんなものを選べばいいのだろうか。まず材質。ひと昔前はサーキットはアルミ製がよいが、ストリートではアルミは自己放熱性能が低く実は冷えにくい。自己放熱性能が高い銅製が好ましいとされていた。その傾向はあるが現在、銅製ラジエーターを販売している会社が少なくなってきている。アルミ製しか選べない車種も多く、アルミ製を装着するしかない場合も多い。その代わりラジエーター側でも各社設計を工夫している。たとえばラジエーター自体の厚さも厚いほど冷えるという認識は間違い。厚いものほど全体の水量が増えるので水温が上がりにくくはなるが、厚いから冷えるわけではない。
どれだけ熱交換ができるか=冷えるかということで、どれだけ風が抜けるかも重要になる。厚いラジエーターは表面積も増えるが走行風が抜けにくくなるので、むしろ冷えにくくなることもある。使う速度が高いなら厚いラジエーターに速い走行風をバンバン当てていけば冷えやすい。逆に街乗りメインで走る速度域が低いなら、薄めのラジエーターで遅い走行風が抜けやすくしたほうが冷えることが多い。ラジエーター側では厚みだけではなくフィンピッチなどでもこうした使う速度を想定して設計されている。フィンピッチが細かいモデルは風が抜けにくいけど冷えやすいので高い速度向け。もしくは風が当たりやすく抜けやすい車種向け。フィンピッチが荒いモデルはその逆となる。
ラジエーターとひとことで言っても、各社想定されたステージがある。メーカーによっては購入時に特性をチョイスできるものもある。●●社のはよくて、●▲社のものはダメということではなく、設計と使用する場所が合致していないことが多いのだ。