幕張メッセで1月12日まで開催されていた「東京オートサロン2020」。きらびやかにカスタマイズされた車両が所狭しと並ぶ“カスタムカーの祭典”で、1台の車両の“復活”が注目を集めた。その車両の“復活”を目撃した来場者は皆、一様に足を止め、一瞬記憶を辿り、そして懐かしげな表情を浮かべながら、カメラのシャッターを切る姿が目立った。◆ハコスカに勝った伝説的なクルマ1971年、レースカーとして最強を誇っていた日産スカイラインGT-R(ハコスカ)の連勝記録を49でストップさせ、モータースポーツファンの間で伝説となったクルマがある。その名は「サバンナRX-3」。今回、その「サバンナRX-3」をカスタマイズし「郷田RX-3」として復活させたのは、長野県岡谷市で自動車販売・整備・修理を営む「郷田鈑金」の社長、駒場豊氏だ。同社は、1969年の創業から今年で51年目を迎える老舗のプロショップであると共に、創業初期から駒場豊氏の父で、現会長でもある駒場稔氏が、レース活動をしていた関係で「サバンナRX-3」との縁が非常に深い。1974年、駒場稔氏は富士スピードウェイで開催された「第9回富士ツーリストトロフィーレース」で、ドライバーとして「サバンナRX-3」を操り、総合8位に入賞している。500マイルの耐久レースでワークスカーも多数参加する中での成績としては、まさに快挙。郷田鈑金のレース活動の歴史において、燦然と輝くクルマが「サバンナRX-3」なのだ。そんなレース活動の影響で、駒場豊氏はレーシングカーが家のすぐそばにあるという特殊な環境で幼少期を過ごした。幼心に残った強烈な印象とクルマに対する強い憧れ。鈑金塗装のプロとして、またレストアのプロしての原点とも言えるクルマもまた「サバンナRX-3」なのだ。◆郷田鈑金の50周年記念碑的作品「郷田RX-3」駒場豊氏は、これまで数々のレストアを手掛けてきた、まさに“レストアの職人”。今回の出展車両「郷田RX-3」について聞くと「郷田鈑金の歴史においても、そして個人的にも“サバンナRX-3”は、特別なクルマです。今回、RE雨宮の雨宮社長の協力もあり、オートサロンに出展することになり、出展内容を考えた時に“郷田鈑金50周年の記念碑的な作品を作りたい”という思いが頭を巡りました。そこで浮かんだのが、全ての原点とも言える「サバンナRX-3」の復活でした。今回の出展車両名は、そんな強い思いも込め“郷田RX-3”にしました。懐かしさと同時に、多くの方の記憶に残れば嬉しいです」と話す。ベースとなる車両は、22年ほど前に駒場豊氏の弟のために一部レストアしてあった車両をリメイクし、1972年~1977年のレース活動の中から、1975年当時のカラーリングがほぼ忠実に再現されているほか、細かなパーツや装飾については、郷田鈑金の社員総出で仕上げられ、当時を再現しているが、タイヤや車高については、現代風にアレンジされている点が興味深い。◆次の50年へ向け、歩みを止めずに走り続ける実は、駒場豊氏が取り組む50周年プロジェクトはこれだけではない。廃車同然の「サバンナRX-3」をレストアして再び走らせるという壮大な企画が現在も進行中であり、編集部ではその模様を連載企画として追いかけている。今回の「郷田RX-3」と、ロータリーエンジンを再び積み、草原を駆けるように走る「サバンナRX-3」の競演についても、勝手に期待が高まってしまう。郷田鈑金と駒場豊氏の一挙手一投足からは今後も目が離せそうにない。
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