生活道路を走る自動車の法定速度(最高速度)が、2026年9月1日から原則30km/hに引き下げられる。中央線などがない一般道路が対象で、現在の法定速度60km/hが、その半分の速度になる。
●生活道路とは?
今回の変更は、2024年7月26日に公布された道路交通法施行令の改正によるものだ。生活道路とは、主に地域住民の日常生活に利用される道路で、中央線や中央分離帯などがない比較的狭い道路のことをさす。生活道路において自動車の速度を抑え、歩行者などの安全を確保する狙いだ。
なお「法定速度」とは、標識・標示による指定がない道路で、法令によって定められている最高速度のこと。いっぽう道路標識・道路標示によって指定されている最高速度は「指定速度」という。法定速度と指定速度を含めた、実際にその道路で超えてはいけない速度が最高速度だ。
●法定速度60km/hのままの道路
すべての一般道路が法定速度30km/hになるわけではない。道路標識や道路標示による中央線、または車両通行帯がある一般道路は、従来の法定速度60km/hを維持する。道路の構造や柵などによって往復方向が分離されている一般道路、自動車専用道路なども60km/hのままだ。
また、道路標識や道路標示で最高速度が指定されている場合は、その指定速度が優先される。例えば、改正後の法定速度が30km/hとなるような生活道路でも、標識で最高速度40km/hと指定されていれば、最高速度は40km/hとなる。

●「規制」に限界
生活道路ではこれまでも、最高速度を30km/hとする「ゾーン30」や、速度規制とハンプ、狭さくなどの物理的対策を組み合わせた「ゾーン30プラス」の設定が進められてきた。2024年度末までに「ゾーン30プラス」は全国186地区で整備されている。
内閣府の交通安全白書によると、幅員の狭い道路は歩道と車道の区別がない場合が多く、自動車を高い速度で通行させると危険が生じるおそれが大きい。いっぽう、30km/hの最高速度規制を全国的にさらに増やしていくことには限界があることから、法定速度そのものを見直すことになった。
2026年秋の全国交通安全運動では、子どもの安全確保も重点となる。内閣府は、歩行中の児童の死者・重傷者では登下校中が約4割を占めるとしており、「生活道路は人が優先」という意識の浸透を図る。

●標識がなくても30km/h、車載システムはどう認識するのか
今回の変更は、自動車メーカーやサプライヤーにも影響する可能性がある。
ポイントとなるのは、最高速度30km/hの標識がある道路だけが対象になるのではないことだ。中央線、車両通行帯、中央帯などがない一般道路では、最高速度を指定する標識などがなければ、法定速度そのものが30km/hとなる。
このため将来的には、ADAS(先進運転支援システム)やISA(インテリジェント・スピード・アシスタンス)などで、速度標識をカメラで認識するだけでなく、走行している道路の種類や地図データなどから適切な最高速度を判断することの重要性が高まると考えられる。
●自動車メーカーやサプライヤーへの影響
自動車メーカーでは、速度超過を知らせる運転支援機能やナビゲーション、速度制御に関係するシステムへの影響が予想される。SDV(Software Defined Vehicle)の普及に伴い、道路交通ルールの変更を車載ソフトウェアや地図データに反映することも、これまで以上に重要になる可能性がある。
サプライヤーでは、車載カメラや画像認識、ADAS制御システムに加え、デジタル地図や位置情報を扱う企業への影響も考えられる。生活道路とそれ以外の道路を正しく判別し、法定速度や指定速度を車両側へ伝えるデータの精度が重要になるためだ。
ただし、こうした自動車メーカーやサプライヤーへの影響は、今回の制度変更から予想されるものであり、警察庁が車両側に新たな機能の搭載を求めているものではない。
警察庁は施行に向けて広報を進めるとともに、新たに30km/hとなる道路のうち、その速度が適当ではない道路について、交通実態や住民の要望を踏まえ、30km/hを超える最高速度を指定するなどの対応を進める方針だ。


