スーパーカーに乗るオーナーの「本音」 とは?…筑フェス2018 | CAR CARE PLUS

スーパーカーに乗るオーナーの「本音」 とは?…筑フェス2018

特集記事 インタビュー
一般社団法人日本スーパーカー協会代表理事の須山泰弘氏(2018年5月5日)
  • 一般社団法人日本スーパーカー協会代表理事の須山泰弘氏(2018年5月5日)
  • 筑波サーキット・カーフェスティバル2018でスーパーカーショーが開催(2018年5月5日)
  • 筑波サーキット・カーフェスティバル2018でスーパーカーショーが開催(2018年5月5日)
  • 一般社団法人日本スーパーカー協会の山里真元氏(2018年5月5日)
  • 筑波サーキット・カーフェスティバル2018でスーパーカーショーが開催(2018年5月5日)
  • 筑波サーキット・カーフェスティバル2018でスーパーカーショーが開催(2018年5月5日)
  • 筑波サーキット・カーフェスティバル2018でスーパーカーショーが開催(2018年5月5日)
  • 筑波サーキット・カーフェスティバル2018でスーパーカーショーが開催(2018年5月5日)
フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェ……。そこにあるだけで圧倒的な存在感を放つスーパーカー。幼少時にテレビや雑誌で見たり、ミニカーを買ってもらったりすることで憧れた人も多いだろう。

昨年3月、「日本のスーパーカー文化のさらなる発展と、社会的スーパーカー活動の促進」を目的とした一般社団法人日本スーパーカー協会(以下、スーパーカー協会)が発足。有志たちがイベントなどに参加することでスーパーカーの魅力を広めている。


スーパーカー協会は5月5日、Super Car Club Japanとともに筑波サーキット(茨城県下妻市)内でスーパーカーショーと子供限定の同乗試乗を実施した。自動車総合ニュースメディア『レスポンス』のファン感謝デーの一環として行われ、共同開催の『筑波サーキット・カーフェスティバル2018(略称:筑フェス)』の来場者も合わせて多くの人々が大集合したスーパーカーの迫力に心を奪われた。

スーパーカー協会発起人で代表理事の須山泰宏さん、同事務局の山里真元さんの二人にスーパーカーの魅力についてうかがった。

スーパーカーを買うのに必要なもの、それは「思い切り」
20代後半で自身初のスーパーカー「フェラーリ ディーノ」を購入した須山さん。現在はポルシェやアストンマーチンなど複数台のスーパーカーオーナーだが、最初の1台はボロボロの走らない中古車だった。

「クラシックのフェラーリだったので、修理中のクルマを買いました。1年で直るという約束で前オーナーから買って、実際は5年かかりました。運転できたのは30代になってから。買った時は独身で、フェラーリ買ったらブイブイ乗るぜ!と思っていましたが、クルマが来たころには結婚して子供もいました。ブイブイどころではなくなっていたのですが(笑)」

当時の国産車はモデルチェンジを繰り返し、エンブレムだけ変えたバッジチューンのクルマも多かった。だが須山さんは「一生を通して愛するクルマに乗りたい」という気持ちでフェラーリ購入に踏み切った。乗れるまで5年の月日が流れたが、「でも待って良かったです。あの感動は忘れません」と懐かしそうに振り返る。

スーパーカーオーナーはお金持ちと見られがちだが、貯金をしてようやく買ったという人も多くいる。国産の高級車には1000万円クラスもあるが、その金額を出せるならスーパーカーでも中古なら手が届くことがある。「現代は真面目に仕事をしていれば、スーパーカーあるいはスーパースポーツカーを経済的には買えます」と須山さん。


その一方でスーパーカーを所有した場合、維持管理が大変だ。保険代など一般的な維持費はもちろんだがメンテナンス費用もかかるし、安心して置ける駐車場の準備も必要。いざクルマで出かけた時にも気を使い、コインパーキングには止めづらいなど「乗りにくさ」がある。

「スーパーカーを買うにはそれなりのお金が必要ですが、それプラス思い切りが必要です。買う勇気、買う生活環境ですね」

だが、そうやって手に入れたスーパーカーには維持管理の大変さを超えた喜びがあるという。

「所有してる喜びがあるし、実際に運転している時もドライビングフィールがとても豊かです。エンジン音やハンドリング、安定性であったり。止まっている時でも見ていて美しい。またスーパーカー仲間同士でも交流ができます。走っていても止まっていても、所有しているだけで心や生活が豊かになるのがスーパーカーだと思っています」


今回行われたスーパーカーショーでは子供たちを乗せた同乗試乗が行われた。子供たちは太陽の光を浴びて輝く数々のスーパーカーに興味津々で、緊張しながらも楽しそうに助手席に座っていた。須山さんはこのようなイベントを通じて、日本のクルマ社会のために貢献できればと考えている。

「子供たちが“スーパーカーに乗ったんだ”という体験は大人になっても残るもの。現代は若者自体が減り、また若者のクルマへの興味が薄れていて、それは問題だと思っています。日本は自動車産業の国です。自動車の生産にしろ販売にしろ、縮小することが国力の低下につながるのではないでしょうか。少子化や人口減の時代になっていますが、その中でもスーパーカーを通じてクルマの魅力を子供たちに伝えて、将来的にクルマに興味を持ってもらう社会になってくれたら国としてもいいことではないかな」

だが、スーパーカーは好意的に見られないケースも多いそうだ。そこで一般社会とスーパーカーオーナーがうまく共存できる活動として、スーパーカー協会は夏祭りなど地域振興イベントにも積極的に協力している。クルマの展示でイベントを盛り上げるのだ。


電気自動車(EV)が普及してきたことで、スーパーカーの位置付けも変わりつつある。須山さんはそれを踏まえてスーパーカーの未来を見据える。

「やがてスーパーカーも電気自動車になると思うので今は内燃機関のクルマ、エンジンの付いているクルマを楽しむ最高の時代。人がクルマに恋ができる時代の中に、ラッキーにも私たちは生まれたんですよ。これが50年や100年早く、あるいは100年後に生まれていたらこういう楽しみはないと思います」

スーパーカーも機械だから壊れてしまうことがある。だが、機械だから直すことが可能だ。直すことで数十年間に渡り使うことができる。スーパーカーは工業化社会の「歴史に残る時代の製品」だと語る。

「機械を直していくと人間の寿命より長いんですよ。こういう例は今までもあって、例えば盆栽。樹齢300年、樹齢500年とかあります。絵画などもそうですね。だいたい人間よりも寿命が長い。そういう残すべき文化遺産のように、“今この時代は私が預からせてもらっている”というのがスーパーカーじゃないかと思います。それで次の世代に引き継がれていくんです」


同乗試乗した子供たちの中にも、いつの日か須山さんのように憧れのスーパーカーを前オーナーから譲り受け、自分の手でハンドルを握る子供がいるかもしれない。

「フェラーリって廃車にならないんですよ。どんなに壊れても直せば価値があるから」と須山さんは教えてくれた。メーカーサポートが終了した旧車であっても「フェラーリなら世界のどこかで誰かが部品を作っているんです」と笑った。その部品がまた新たなオーナーと引き合わせるのだろう。

この日は「フェラーリ・カルフォルニア」で駆けつけた山里さん。スーパーカーを見つめる眼差しは子供のようでもあり、クルマの将来を思う父のようでもあった。

同じマンションに住む仲間で作ったツーリングクラブ
スーパーカー協会事務局の山里真元さんは、自身が発足した芝浦アイランドツーリングクラブ(以下、芝浦アイランドTC)でスーパーカー仲間との交流を楽しむ。

芝浦アイランドは東京都港区の再開発地区で賃貸2棟、分譲2棟の計4棟からなるタワーマンションがある。芝浦アイランドTCはその住人や元住人などがメンバーとなっているが、2014年に山里さんが芝浦アイランドTCを作ろうと思った経緯が興味深い。

「いつもツーリングって海老名集合、海老名解散とか(どこか特定の場所)じゃないですか。その現地解散がすごく寂しいんですよ。せっかくみんなで集まってるのに、帰るのは途中でバイバイ。最後は自分一人で家に帰るのが寂しくて、だから同じマンションに住んでいる友だちでチームを作ったら、そうしたらみんな一緒に同じ目的地まで帰れるじゃないですか」


タワーマンションの駐車場にスーパーカーなどが多く止まっているのを見かけ、それが芝浦アイランドTCのきっかけとなった。山里さんはタワーマンションを束ねる自治会の副会長も務めているため自治会公認クラブ制度も作り、芝浦アイランドTCは自治会公認クラブとして活動するようになる。

「家は趣味性が反映されるからクルマも同じようなのに乗っていて、一緒のところに住んでいたりすると趣味も合う人ばっかり」

ご近所さんで趣味も合うとなったら最高だろう。毎回10台前後で年間4回ほどツーリングに出向くそうだ。芝浦アイランドTCの仲間と走る山里さんはスーパーカーの魅力を「クルマを入り口とした人間関係」と話す。学生時代はサーキットや峠を走っていたが、ツーリングをするようになって人の輪が広がった。

「ツーリングもするようになって自分の知らない世界で生きている人たち、自分の業界ではないところで生きていてそれぞれのヒエラルキーの上の方で成功している人たちと仲良くなれるというのが一番良かったです」


知り合った人の全員がスーパーカーに乗っているわけではない。しかし「クルマが好き」という根っこの部分は共通だ。山里さんは「入り口」と表現する。

「乗ってるから偉いとか、乗ってるから友だちになるとかではなくて。結局同じものが好きというのが入り口になるんです」

クルマを通じて多くの人たちとつながった。そして芝浦アイランドTC、スーパーカー協会の仲間とともに参加したスーパーカーショーでは「子供たちとのつながり」も意識した。自分たちがスーパーカーに乗って憧れられることは、子供たちの将来的なクルマへの興味となる。


「日本はモータリーゼーションの成り立った国なので、やはりクルマが売れないと経済も活性化しません。例えばドイツならDTM(ツーリングカー選手権)のレーシングドライバーが日本のプロ野球選手と同じような扱いをされるように、スーパーカーに乗っていることがステータスで周りから尊敬の目で見られるのがヨーロッパ。日本でもそうなるように自分たちの行いをよくして、社会にも貢献していきたいですね。(子供たちの)お手本になれるようにしたいです」

山里さんは「フェラーリ カリフォルニア」を操る。同乗試乗で助手席に座った子供たちには、きっと「ボクもいつかこんなクルマに乗れる大人になりたい!」という憧れになったことだろう。

スーパーカーに乗るということ
二人の話からスーパーカーの持つ奥深さ、そして所有するにはお金以上に大切なものがあると感じた。それは情熱だ。「クルマが好き」というシンプルな気持ちの最たるものが、スーパーカーオーナーなのかもしれない。

誰もが手に入れられるわけではないスーパーカー。だが、その中には自動車メーカーが磨き上げてきた技術やカーデザイナーの想いが込められ、オーナーの愛情が注がれることで新しい歴史が作られる。そして須山さんが言ったように、次の世代に引き継がれていく。

スーパーカーで社会貢献、日本スーパーカー協会の思い…筑フェス2018

《五味渕 秀行》

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