カーオーディオの音を今よりもっと良くしたいと考えながらも、“わかりにくさ”を感じて具体的な行動に移せていない、という方も少なくないようだ。そういった方々に、不安を解消していただくための短期集中連載をお贈りしている。今回はその第6回目として「プロセッサーの導入」について考察していく。■「タイムアライメント」を使いこなすことで、“ステレオイメージ”の再現性を上げられる。カーオーディオの“音の良さ”には、2つの側面がある。1つは、音の“質”が良いか否か、もう1つは“ステレオイメージ”の再現性が良いか否かだ。音の“質”を上げるためには、音の出口であるスピーカーのクオリティを上げたり、パワーアンプのグレードを上げる等々を行って対処する。それに対して“ステレオイメージ”を良くするためには、高度な「サウンドチューニング機能」を搭載する「プロセッサー」を用意して、それを使いこなすことで対処が可能となる。さて、まずは「プロセッサー」があると“ステレオイメージ”を良くすることができるようになる理由から、ご説明しておこう。カーオーディオではそもろも、“ステレオイメージ”を良好に感じ取りにくい。“ステレオ”とは、音楽を左右のchに分けて録音し、それぞれを左右のスピーカーで再生することで、音楽を立体的に再現しようとするものだ。こうして“ステレオ”の原理によって立体的に再現された音像のことが、“ステレオイメージ”と呼ばれている。なお、“ステレオイメージ”をリアルに再現するためには、1つの前提条件が存在している。それは、「リスニングポジションを、左右のスピーカーから等距離の場所に取る」、である。しかしながら、カーオーディオではこの前提条件が成り立たない。リスニングポジションが、左右のどちらかに偏っているからだ。しかしながら「プロセッサー」に搭載されているとある機能を使いこなせば、それに対処することが可能となる。その機能の名称は、「タイムアライメント」だ。「タイムアライメント」とは、近くにあるスピーカーに対して、音を発するタイミングを遅らせる機能だ。こうすることで、各スピーカーから発せられた音が、リスナーのところに同時に届くようになる。結果、すべてのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況が擬似的に作り出され、“ステレオイメージ”をリアルに感じ取れるようになる、というわけなのだ。■手軽に「プロセッサー」を導入しようと思うなら、「パワーアンプ内蔵型DSP」がお薦め。「プロセッサー」を投入すれば、上記のようなことを実現可能になるのだが、初めてのカーオーディオとしてはアリ、なのか、ナシなのかというと…。答はもちろん、アリ、だ。「スピーカー交換」をする前にまずは「プロセッサー」の導入から入るというやり方も、なかなかに有効なのである。なお、前回に解説した「メインユニットの交換」においても、高度な「サウンドチューニング機能」を搭載した「メインユニット」を導入することで“ステレオイメージ”を向上できる、と解説させていただいたのだが、それが実現されるメカニズムも、上記でご説明したことと同様だ。であるので、「プロセッサー」の導入プランにはいくつかの方法があるのだが、「メインユニットを交換する」こともその1つ、であったわけだ。さて、その他ではどのようなプランが考えられるのだろうか。方法は2パターンある。1つは「パワーアンプ内蔵型DSP」を導入するプラン、もう1つは、「単体DSP」を導入するプランだ。なお「DSP」とは「デジタル・シグナル・プロセッサー」のことである。カーオーディオの“初めの1歩”としておすすめなのは、「パワーアンプ内蔵型DSP」を導入するプランだ。ただし製品の価格は、手頃な「スピーカー」や「パワードサブウーファー」よりも高額だ。その点においてはハードルは高い。でも、「パワーアンプ」も同時に導入されることになるので、音の“質”を向上させることも併せて行える。ハードルが高いのは事実だが、費用対効果は結構高い。価格に見合った結果は得られるはずだ。■究極を目指すなら、「単体DSP」の導入も視野に。それに対して「単体DSP」を導入する作戦は、さらにハードルが高くなる。「DSP」と「パワーアンプ」をそれぞれ導入する必要があり、コストの面でも、インストールの面でも、難易度が上がってしまうのだ。ところで、「プロセッサー」を導入する際に、なぜに「パワーアンプ」も同時に必要となるのかもご説明しておこう。端的に言うと、「タイムアライメントの設定は、信号をパワーアンプで増幅する前に行わなければならないから」、だ。であるので、システムの中に「プロセッサー」を投入したら、その後段に、新たにパワーアンプを設定する必要が出てくるのである。さらに言えば、「タイムアライメント」を詳細に操ろうとする際には、音楽信号を、トゥイーター用、ミッドウーファー用というように“帯域分割”する必要がある。そして、“帯域分割”された各信号を個別にコントロールしたら、それぞれはその後も、個別に扱われなければならない。というわけで「単体DSP」を用いる場合は、同時にスピーカーの数と同数のchを有する「パワーアンプ」が必要となり、「パワーアンプ内蔵型DSP」を用いるよりも予算が多く必要となるのだが、その反面、メリットも出現する。それは、「好みのパワーアンプを選べること」。つまり、高度なシステムを構築することも可能となるのだ。であるので、もしも最初からハイエンドシステムの構築を目指そうとするのなら、いきなり「単体DSP」を導入することから始める、というやり方も、当然アリだ。初期投資は大きくなるが、ユニットを後から買い替える必要はなくなるので、トータルでの出費は少なくてすむ。究極を目指そうとするのなら、この手もある。さて、今回の解説は以上で終了だ。次回は少々趣を変え、「制振・静音」について解説していく。お楽しみに。