クルマのフロントウィンドウといえば、いわゆる「ガラス」の使用が義務付けられていた。これは、衝突時の安全基準の確保をはじめ、光の透過性や耐摩耗性といった様々な要求特性があるためだが、7月1日に保安基準が改正されたことで有機ガラスなど新たな素材の使用が認められるようになった。この流れを受け、列車の窓や自動車のパノラマルーフ、クォーターウィンドウなど、既に実績のあるポリカーボネート(PC)樹脂を使用したフロントウィンドウが開発、市販車に搭載されることになり注目を集めている。話題のPC樹脂製のフロントウィンドウを開発したのは大手繊維メーカー「帝人」。自動車というイメージが薄いだけに意外に思う人も多いはずだが、今回の開発は、同社の持つ軽くて強い高機能素材や、それらの複合化技術を生かした形だ。もちろん、今回の法改正を見越して開発は進められてきた。PC樹脂の持つ特性は、ガラスの1/2という軽さと200倍もの耐衝撃性だ。自動車の軽量化に繋がるのはもちろんだが、今回開発されたウィンドウは、通常だとAピラー(支柱)があるフロントウィンドウ周辺部に厚みをもたせることによって、世界で初めてAピラーレスを実現させたのが大きな特徴。ウィンドウを支え、前方衝突時に搭乗者を守る役割があるAピラーには、太くすると前方の視界を妨げるという弱点があるが、これを見事に解消したわけだ。また、ガラス並みの耐摩耗性と耐候性を付与する技術も新開発し、保安基準に適合させた。実は、このウィンドウは京都大学発のEVメーカー「GLM」が製造・販売するスポーツEV「トミーカイラZZ」向けに開発されたもの。ちなみにGLMは、水平分業体制を取るベンチャー企業。通常だと、部品の形状理由や詳細な仕様理由を明らかにせず、車づくりの全てのノウハウを抱え込む、既存の自動車産業とは考え方が大きく異なる。そのため、GLM自身は開発車両のコンセプトや性能・仕様・デザイン設計といった企画開発と、基礎技術の熟成、技術開発に注力できる強みを持つ。部品そのものは、自動車部品サプライヤーと共同開発を行い、現在、参加する協力会社は国内外170社以上にも達する。こういった土壌があってこそ、世界初の樹脂製ピラーレスウィンドウという自由な発想が生まれたのだろう。さて、このウィンドウだが、視認性の良さで安全の確保と爽快なドライビングに寄与するとともに、従来のガラス窓とAピラーの組み合わせに比べて36%の軽量化を実現、走行性能の向上にも大きく貢献している。帝人は、今後、日本国内のみならず欧米の自動車メーカーに向けても市場開拓を進める考えだという。GLMというベンチャーの登場や、今回のような新たな部品の開発によって、クルマの性能向上ということ以上に、自由度が高く、今までに無いワクワクするような発想のクルマが生まれる可能性が高い。クルマ好きでなくとも楽しみなところだ。
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