注視すべきFCVの動向…中国の整備教育現場に見るFCVシフトの現実と日本国内の動き | CAR CARE PLUS

注視すべきFCVの動向…中国の整備教育現場に見るFCVシフトの現実と日本国内の動き

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注視すべきFCVの動向…中国の整備教育現場に見るFCVシフトの現実と日本国内の動き
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2026年6月、福島から東京、愛知などを経由し福岡に至る主要幹線道路沿いに水素供給拠点を集中配置し、1000台規模の大型燃料電池トラックによる幹線輸送を推進する官民連携プロジェクト「水素大動脈構想」が本格始動した。本構想は政府が掲げる成長戦略やGX(グリーントランスフォーメーション)推進の主軸として位置づけられており、モビリティ領域での大口需要創出を足掛かりに、将来的な鉄鋼や発電分野への水素社会実装を見据えた国家レベルの戦略的分野である。

FCV(燃料電池自動車)は、車載タンクに充填した高圧水素と大気中の酸素を化学反応させてスタック内で発電し、モーターを駆動させて走行する。排出するのは水のみという高い環境性能に加え、ガソリン車と同等の3~5分程度という急速な燃料充填が可能だ。乗用車市場ではBEV(電気自動車)の普及が先行したものの、稼働率と航続距離が事業収益に直結する商用物流において、FCVはエネルギー供給体制の構築とともにその真価を問われている。

中国の整備教育現場に見るFCVシフトの現実

こうした水素利用の波は、世界最大の電動車市場である中国でも顕著に現れている。昨年に続き今年8月に視察した北京のNEV(新エネルギー車)整備専門学校「北方国際」は、1993年設立で延べ60万人以上の卒業生を排出した国内最大級の職業訓練校である。同校の実習棟には、テスラ『モデル3』やBYDのバッテリー、各種制御基板を分解して配線やシステムを丸ごと可視化した高度な教育環境が整えられている。BEVの核心技術である「三電技術(バッテリー・モーター・制御装置)」の講義が中心だが、この1年でFCV関連の教材や講座が急激に増大していた。現場にはキャビン後部に水素タンクやパワートレーンを構えた大型燃料電池トラックのカットモデルをはじめ、燃料電池バイクやアシスト自転車、ドローン、さらには水を電気分解して水素を発生させる装置まで配備されており、そのメンテナンスに関する講義の準備まで進んでいた。象徴的であったのは、同校のシンボルゾーンにメルセデスベンツの車両と並び、トヨタ『ミライ』の分解ディスプレイが展示されていた点だ。現地関係者は「車両価格の2/3を国が補助する手厚い政策支援もあり、中国では4~5年後にFCVが本格普及する」と分析する。世界に先駆けて電動化を進めた市場でも、すでにFCV時代を見据えた人材育成が猛スピードで進んでいる。

商用FCV拡大の背景と立ちはだかるコストの壁

商用車領域においてFCVへの再評価が進む最大の要因は、BEVが抱える物理的限界にある。大型トラックをBEV化する場合、長距離走行に必要な超大型バッテリーの重量によって最大積載量が大幅に圧迫される。さらに、数時間の充電時間は車両の稼働率を低下させ、物流事業者の経営効率を直撃する。これに対し、短時間充填で長距離を走破できるFCVは、運行効率を最優先する商用物流における強力な選択肢となる。

しかし、本格的な普及に向けた最大級のボトルネックとして立ちはだかるのが、供給インフラとコストの壁である。水素ステーションの建設には1基あたり数億円規模の莫大な初期投資と高額な維持費を要し、ステーション整備の遅れが車両普及の足を引っ張る悪循環を生んでいる。さらに、目標とされる1000円/kg程度の燃料価格の達成や、車両本体価格の高止まりも導入の大きな足かせとなっている。水素の製造および輸送コスト低減を含めたサプライチェーン全体でのコストダウンが達成されない限り、事業者が導入に踏み切るためのTCO(総保有コスト)の優位性を確立することは難しい。

自動車アフターマーケット現場が取るべきスタンス

水素大動脈構想の進展や中国での動きは、遠い未来の話ではなく、幹線物流の構造変化として確実に迫っている。現時点では供給インフラとコストという大きな壁が存在するものの、商用車での社会実装が進むにつれ、自動車アフターマーケット領域にもその影響は波及するだろう。整備事業者としては、単に静観するのではなく、インフラ整備の動向やメーカーの車両投入計画を注視し、高圧エネルギーを取り扱う専門知識や最新の電子制御診断に関する技術ノウハウの蓄積を進め、将来的な高難易度整備の時代に対応できる体制を整えておくことが、自社の価値を高める一つの方法となり得るだろう。

《カーケアプラス編集部@市川直哉》

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