軽自動車は、安全性能や快適装備の充実に伴い、車重が増加する傾向にある。そんな中、スズキが次期『アルト』で、改めて「軽さ」を武器にしたクルマづくりに挑む。500kg台の車重を実現すれば、約545kgという軽さで登場した初代アルトを思わせるモデルとなりそうだ。
◆小・少・軽・短・美
1979年に発売された初代アルトは、「軽ボンネットバン」という新たな市場を切り開いた。低価格に加え、軽量なボディによる燃費性能と軽快な走りが支持され、ベストセラーへと成長した。
その思想は現行モデルにも受け継がれているが、次期型ではさらに軽量化を追求する可能性がある。背景にあるのが、スズキが2024年の技術戦略説明会で改めて掲げた「小・少・軽・短・美」という開発思想だ。クルマを小さく、部品点数を少なく、軽く、短く、そして美しく設計するというスズキのものづくりの考え方で、電動化時代でも重要な競争力になると位置付けている。
◆現行から100kgマイナスで500kg台に!
すでに技術説明会でスズキは、次世代のコンパクトカーで約100kgの軽量化をめざす考えを示している。現時点で次期アルトへの採用は正式発表されていないが、スズキを代表する軽自動車だけに、その考え方が反映されるだろう。
現行アルトの最軽量グレードは680kg。ここから軽量化が実現すれば、500kg台後半も視野に入ってくる。衝突安全性能や先進運転支援システムを備えながら500kg台を実現できれば、大きな技術的進化だ。現在の軽自動車は、エアバッグや衝突安全ボディ、各種センサーなどを備えるため、40年以上前と同じ条件で軽さを追求することはできない。現在の安全基準を満たしながら500kg台へ近づけられるかに注目だ。

◆軽量化のメリットは多方面に
軽量化の鍵を握るのが、スズキが開発を進める次世代の車体技術だ。次期アルトでは、現行の「HEARTECT(ハーテクト)」をさらに進化させた軽量プラットフォームが採用される可能性がある。高張力鋼板の最適配置や骨格構造の見直し、部品点数の削減、生産工程の効率化などを組み合わせ、安全性やボディ剛性を確保しながら軽量化を図るだろう。
軽量化の効果は燃費性能だけではない。車重を減らせば、加速性能やハンドリングの向上が期待でき、ブレーキやタイヤへの負担も軽減できる。使用する材料の削減は、製造コストを抑えることにもつながる。電動化が進む中、自動車メーカーはバッテリーやモーターの搭載に伴う重量増という課題もある。車両全体を軽くするスズキのアプローチは、燃費や走行性能だけでなく、環境性能にも関わる。
パワートレインは、660cc直列3気筒エンジンをベースに、マイルドハイブリッド仕様が継続設定されると考えられる。将来的には欧州向けモデルなどで培った電動化技術の活用も考えられるが、現時点で次期アルトへの採用は明らかになっていない。
◆軽自動車に新たな価値
デザインは、現行モデルの親しみやすさを受け継ぎながら、よりシンプルなスタイリングへ進化するだろう。水平基調のフロントマスクや薄型LEDヘッドライトなども採用されるはずだ。
発売時期は当初予想より後ろ倒しとなり、2027年後半となりそうだ。スズキは「軽さ」というアルトの原点を次期型でどこまで追求するのか。初代アルトは、軽さと低価格を武器に日本の軽自動車市場に新たな価値を提案した。次期型が500kg台という領域へ踏み込めば、電動化や安全装備の充実で重量増が進む軽自動車に、改めて「軽量化」という価値を提示することになりそうだ。


