あなたの愛車が「整備難民」になる? 国交省がIAAE 2026で示した「整備技術の高度化と診断機の機能向上に向けた取り組み」 | CAR CARE PLUS

あなたの愛車が「整備難民」になる? 国交省がIAAE 2026で示した「整備技術の高度化と診断機の機能向上に向けた取り組み」

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あなたの愛車が「整備難民」になる?  国交省がIAAE 2026で示した「整備技術の高度化と診断機の機能向上に向けた取り組み」
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自動車が「走るコンピューター」と化す中、今、自動車アフターマーケットは大きな変革の時を迎えている。我々自動車ユーザーが日常的に利用する整備工場で、これまでは当たり前にできていた修理ができなくなるという危機が迫っている。

2026年2月、東京ビッグサイトで開催された自動車アフターマーケットの業界向け展示会「第23回 国際オートアフターマーケットEXPO 2026(IAAE 2026)」において国土交通省はスキャンツールコーナーを展開。国内自動車メーカー12社と共同で、純正スキャンツール(外部故障診断機)についての展示を行なった。その中で国土交通省は、「その整備、純正スキャンツールが必要かも? ―整備技術の高度化とスキャンツールの機能向上に向けた国土交通省の取組―」という刺激的なタイトルで、各日2回のプレゼンテーションを行なった。


現代の整備に不可欠な「3つの要素」とスキャンツール

初日と3日目に登壇した久保巧氏(自動車物流局 自動車整備課 課長補佐)は、近年の自動車整備において、従来の工具や外観検査だけでは故障の特定が困難になっていると指摘、現在の点検整備には、以下の3つの要素が不可欠となっていると説いた。

  1. 自動車メーカーが定める整備要領書(マニュアル)

  2. 電子制御の状態を読み取る「スキャンツール(外部故障診断機)」

  3. 整備士の研修・育成

特に重要なのがスキャンツールであり、これには、自動車メーカーが自社ディーラー向けに開発した「純正スキャンツール」と、ツールメーカーが複数のメーカーに対応できるよう開発した「汎用スキャンツール」の2種類が存在する。

なぜ「純正」が必要になるのか?サイバーセキュリティの壁

これまで、多くの整備工場(専業工場)は1台で多メーカーの自動車に対応できる汎用スキャンツールを活用してきた。しかし、現在この汎用スキャンツールが「壁」にぶつかっている。その正体は「サイバーセキュリティ」である。

2021年(令和3年)に発効された国際基準により、新型車にはハッキング防止のためのセキュリティゲートウェイ(SGW)の搭載が義務付けられた。このSGWにより、純正スキャンツールでメーカーサーバーを通じた認証を行わなければ、自動ブレーキの調整(エーミング)といった重要な整備作業が一切行えなくなる事態が発生しているという。


ユーザーを襲う「整備難民」の恐怖

これがユーザーにどう影響するのか。数字で見ると事態の深刻さがわかる。全国に約9万2,000カ所ある整備工場のうち、ディーラーは約1万6,000カ所(18%)に過ぎない。一方で、車検整備の約65%は、ディーラー以外の専業工場等が担っている。

もし、セキュリティの制限によって多くの専業工場で整備ができなくなれば、対応できない車両はディーラーへ押し寄せることになる。しかし、ディーラーも深刻な人手不足や働き方改革の影響で、その受け入れ能力は限界に近い。結果として、「予約が数ヶ月先まで取れない」「どこにも修理を頼めない」という「整備難民」が発生する懸念があるのだ。


国交省が打ち出す「2つの処方箋」

この危機に対し、国交省はIAAE 2026の会場で異例の展示を行った。国内メーカー12社と共同で、普段は一般の目に触れることのない「純正スキャンツール」を一堂に紹介したのである。国交省が進める対策は大きく分けて2つある。

  1. 純正スキャンツールの入手・レンタル環境の整備
    これまで、専業工場が純正機を購入できることはあまり知られていなかった。例えばトヨタの純正機「GTS+」は、年間ライセンス料約15万円などで導入可能だ。国交省は、専業工場でもこれらを入手しやすくする環境を整えるとともに、短期間だけ借りられる「レンタル制度」の検討も進めている。

  2. 汎用スキャンツールの機能向上(情報開示の拡充)
    また、汎用機でも高度な整備ができるよう、自動車メーカーからツールメーカーへ提供される技術情報(OBD情報)を抜本的に拡充させる方針だ。

    第一フェーズ(2026年度~):基礎的な情報の提供開始
    第二フェーズ(時期調整中):エーミング等の高度な情報への拡大、およびユーザー認証システムの構築


安全なカーライフのために

「これまで付き合いのあった地元の整備工場で、愛車が直せなくなるかもしれない」というのは決して大げさな話ではない。しかし、国交省が主導する今回の取り組みは、整備工場の能力を底上げし、ユーザーがどこにいても適切な整備を受けられる環境を維持するためのものである。

我々ユーザーにできることは、自分の車が「OBD検査対象」なのかを確認し、信頼できる整備工場がこうした最新の技術やツールに対応しているか、関心を持つことだろう。自動車の進化に合わせ、整備のあり方もまた、劇的な変革の真っ只中にあるのである。

《カーケアプラス編集部@市川直哉》

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