長野県立科町などで2024年6月上旬、生産台数554台という希少な初代日産『シルビア』が5台集まり、爽やかな高原をドライブするなどしてオーナーたちが旧交を温めた。
今回で25回目となる、初代シルビア(CSP311型)オーナーズクラブ総会。加入台数は30台で、全国に博物館の車両も合わせて60台ほどしか現存していないともいわれており、わずか5台とはいえこれだけ並んで走るシーンは眼福であった。
CSP311は、ダットサン『フェアレディ』1600(SP311型)のシャシーに流麗なクーペボディを架装して1965年に発売されたスペシャルティカー。セミカスタムメイドで仕上げられ、価格は当時のセドリックを超える約120万円と高価で、総生産台数は4年間で554台にとどまった。
この日は長野、東京、埼玉、神奈川から集まり、テーマカラーのグリーン掛かった「シャンパンゴールド」仕様ばかりとなったが、それぞれ微妙に色合いが異なりどれが本物か不明の状態で、各オーナー「自分のがホンモノ」と談笑。当時、第三京浜国道のパトカーに採用されて話題となったシルビアを小学生の時に見て以来好きになったといった話なども出て盛り上がった。
クラブではこのシルビアのデザインを担当した、元日産造形課、名古屋学芸大学教授の木村一男さんを名誉会長として例年この会に招いており、今回も同行された。日産では初代の『サニー』クーペも担当し、日産退職後は新幹線電車100系や500系のぞみ、700系のぞみなども代表作となっている。
シルビアはダイヤモンドをカットしたような直線的な美しいデザインで、「クリスプカット」といわれた。ラジエターグリルはアルミ材を削り出した手の込んだ造りであり、ボディは職人によって継ぎ目なく仕上げられた。ギリシア神話の美しい女神に由来するその名の通り、今見ても素晴らしいフォルムである。
木村さんは1934年生まれの、御年90歳。「(実車を)こうして今見ても悪くないなと思います。でも横のラインをもう少し張りのある線にしたらもっと良いかなとか、直したいところはいっぱいありますけど(笑)」と、デザイナーの視線は今も変わらない。水平基調のラジエターグリルは1時間でデザインしたとか、ファストバックのサニークーペは半日で描いたとか、スピード感にあふれた当時の仕事も懐かしんだ。
今回は2日間に渡り信州の高原エリアをドライブ。フェアレディ1600と2000も1台ずつ加わってのワインディングロードでは、それぞれが痛快なエキゾーストサウンドを奏でながら気持ち良さげに疾走した。そして宿泊地である白樺湖のリゾートホテルでは、木村さんを囲んでのシルビア談議に花が咲いたのであった。来年はシルビア誕生60周年となる。
<撮影協力:ブランシュたかやまスキーリゾート>