ボディ補強といえばいかに剛性を高めるかが重要。しかし、それだけではなくダンパーで振動を抑えるものや、スプリングでテンションを掛けるようなものも増えている。その効果と効能とは!?
ボディ補強パーツはタワーバーなどを筆頭に、手軽に取り付けられてコストも控えめ。それでいて取り付けた効果は感じやすいとカスタマイズでも人気のパーツ。いかにボディを繋いで剛性をアップして、どっしりとしたハンドリングを手に入れるかを求めていたボディ補強チューン。サスペンションアームの付け根を結んだり、サブフレームとボディの締結部を強化したりとボディ剛性を高めたり、ボディとサブフレームの締結を高めたりするのが一般的。そういったこれまでのボディ補強とはちょっと異なる方向性だが、最近増えてきているのがダンパーやスプリングを内臓した補強パーツによるカスタマイズだ。
ボディダンパーなどと呼ばれているが、もともとはヤマハ発動機が開発した技術で、ヤマハでは「パフォーマンスダンパー」という名前。コーナリング時や段差を乗り越えた時にボディの変形や振動を、剛性アップで固めるのではなく、ダンパーで減衰させて抑えるイメージ。それによってステアリングに対してリニアにクルマが反応するようになり、乗り心地や快適性の向上、衝撃吸収と走行ノイズの低減、車内の揺れの現象、オーディオの音質向上、タイヤ摩耗の低減などを可能にする。こういったボディを固めるだけではなく、しなやかにでも強くすることで乗り心地をアップさせようというチューニングが増えているのだ。スバルのメーカー系カスタマイズブランドであるSTIでリリースされているドロースティフナーもそういった補強パーツの一種。
サブフレームはブッシュを介してボディに取り付けられているので、ステアリングを切ったらわずかだがサブフレームもブッシュが潰れる分だけ動いている。サスペンションアームのブッシュと同じように潰れたり戻ったりを繰り返していて、その分だけハンドリングにはタイムラグが生まれ、曖昧さも生まれている。そこでSTIのドロースティフナーは強力なスプリングでサブフレームを引っ張る。サブフレームを常に一方向に引っ張っておくことで入力があったときにもすでに潰れているので、素早く反応できるという仕組みだ。
レーシングカーやサーキットメインのクルマではこのブッシュ部分に金属製のカラーを入れて締め込むことで、サブフレームをボディにリジット化することが多い。レーシングカーでは溶接してしまうこともあるほど。しかし、そうなると足回りからの振動やノイズもボディに直接伝わって不快感は大幅にアップする。ところが純正ブッシュのままドロースティフナーでテンションをかければ、快適性はそのままにシャープなハンドリングが可能になるのだ。実際に乗り比べても明らかにステアリングを切ってからクルマが反応するまでの時間が短くなっている。素早く反応してくれるので怖くなくクルマを扱うことができる。不安感を大幅に排除できる。意のままにクルマが動くのでドライビングがより楽しくなるのである。
レーシングカーの世界では重さも重要だし、快適性は必要ないのでとにかくソリッドに仕上げていく。それはそれでその世界では正解だが、ストリートカーにもそれがベストかというとそうではない。ブッシュ類やエンジンマウントのような部分をソリッド化していくと確実に快適性は落ちる。これまではいかに耐えられるギリギリのソリッドさを選ぶかというところがストリートチューンのメインだったが、最近ではこういった快適性を保ちつつシャープなハンドリングや操作感を得られる新たなストリート向けカスタマイズパーツが増えているのだ。
ちなみにヤマハのパフォーマンスダンパーは車種ごとに扱いメーカーが決まっている。トヨタ車向けはD-TECという神奈川トヨタ自動車が母体に販売。スズキ車向けはモンスタースポーツが販売しているという具合だ。だが、その元となるものはヤマハのパフォーマンスダンパーが使われている。
最近ではほかにもTRDからトヨタ車向けのスプリングを使った補強パーツが発売されたりと、試乗でも徐々に固めるだけではなく、減衰させることでハンドリングをシャープにして快適性を保ったまま走る楽しさをアップできるパーツが増えている。