自動運転による社会改革を目指す、佐渡市でのWILLERとモービルアイの取り組み…MaaS Meeting 2023 | CAR CARE PLUS

自動運転による社会改革を目指す、佐渡市でのWILLERとモービルアイの取り組み…MaaS Meeting 2023

イベント イベントレポート
MaaS Meeting 2023「自動運転を活用し持続可能な社会をつくる」トークディスカッション
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WILLER(ウィラー)は第4回となる「MaaS Meeting」を、東京都の渋谷ストリームホールとオンラインで、2月14日15日の2日間にわたり開催した。

今回のテーマは、「すべての人が自由に移動できる持続可能なモビリティサービスとは」で、自動運転やAIオンデマンド交通などの先駆的なプロトタイプを学びつつ、社会課題の解決や地域便益について考える機会としてもらえればというメッセージが発信された。

◆佐渡市の課題解決に向けて

1日目、自動運転による社会改革を目指す地域として紹介されたのは、新潟県佐渡市だった。会場では佐渡市長の渡辺竜五氏が、自らプレゼンテーションを行った。

佐渡市は日本海に浮かぶ佐渡島全域を市域とする自治体で、2004年に島内の1市7町2村が合併することで生まれた。佐渡金山や棚田などの観光資源を持ち、ユネスコの世界遺産登録を目指していることでも知られる。

面積は東京23区の約1.4倍もあるが、合併時に約7万人だった人口は現在は約5万人にまで減り、高齢化率は34.4%から43.1%に上昇するなど、過疎化や高齢化の進行が課題になっている。渡辺市長は、人は減るが土地の広さは変わらないので、スクールバスのコストなどが上昇していると報告。「公共交通が貧弱になると、運転免許の返納がしたくてもできない人が出てくるし、大都市からの移住者は新たにマイカーを所有する必要がある」などの影響を指摘した。

そんな中で同市では、歴史や文化を継承しながら脱炭素や生物多様性を目指し人材創出を図る、地域循環共生圏の創出を目指しており、環境省が選定する2022年度の脱炭素先行地域に選ばれた。

現在建設中の新庁舎では屋上に太陽光発電設備を備え、将来的に市役所の消費電力をすべて賄い、公用車は電気自動車(EV)とすることで災害時に必要な場所へ電力を供給する計画としており、公用車では25台のEVを導入している。さらに同市では、環境配慮、交流人口拡大、持続可能を基本方針とする地域公共交通マスタープランを作成。すでにグリーンスローモビリティの実証運行をしているが、加えて自動運転移動サービスも動き出している。

WILLERはここでの実証調査を担当している。説明を行った同社R&D Dept.マネージャーの池あい子氏は、日本国内およびシンガポールにおける自動運転の取り組みを踏まえ、佐渡市についてはまず地域を知ることが大切と語り、ワークショップや試乗会を通して移動ニーズを知ることを心がけていると強調した。

◆自動運転車両を体験した住民の声

続いてワークショップに参加した、観光、福祉、子育ての分野に従事する3名が登壇し、「自動運転を活用し持続可能な社会をつくる」というテーマで、トークディスカッションを行った。

出席したのは、佐渡観光交通交流機構相川観光案内所所長の山本尚代さん、佐渡市社会福祉協議会福祉課課長補佐の中川敏也さん、パパママ子育てサークルつくしんぼの本間美和さんで、WILLER R&D Dept.の此本貴俊氏も加わった。

現状の交通で不便なこととしては、観光分野では観光案内所から佐渡金山へのアクセスの悪さやレンタカー台数の少なさ、福祉分野ではバスが1日2~3便でバス停まで2~3kmというところも多く自家用車での移動が必須であること、子育て世代では子供の習い事にも送迎が必要で冬は雪の坂道が不安という答えが返ってきた。

3名は実際に自動運転車両を試す機会があったとのことで、静かでシームレスに移動できるので観光のブランディングにつなげられるという希望、高齢者の買い物に便利だが運転手のいない車両に躊躇する人が出るかもしれないという不安、コの字型の座席は新たなコミュニティの場所のもなるという期待などが挙がっていた。

◆モービルアイとの連携で課題解決を目指す

此本氏によれば、佐渡市の生活圏は5つのエリアに分かれており、エリア内のオンデマンド交通とシャトル、エリア間を結ぶシャトルが自動運転の実証モデルになるのではないかと考えているそうで、自動運転に必要な高精度地図を作成すべく、モービルアイの地図収集機器を公用車に搭載して準備を進めているという。

同社についてはモービルアイジャパンMaaS事業戦略部ディレクター兼自動運転モビリティ部部長の下山寛史氏がプレゼンテーションを行った。

モービルアイはイスラエルで創業した企業で、現在はADAS用チップEyeQや自動運転用ソフトウェアなどを提供するほか、開発環境やソリューションも手掛けている。EyeQチップはこれまで1億3500万個を提供したそうで、会場では2022年に発売した230以上の車種に搭載した実績が紹介された。

自動運転についても2020年以降、世界各地で実証実験を重ねていると紹介。同社では難しいエリアを選ぶよう心がけているそうで、東京では首都高速道路などで実施している。当日は動画も紹介され、事故現場を避ける車線変更を自動でこなし、トンネル直前直後の視点からの明暗差でも問題なく作動したことが報告された。

自動運転で必須となる高精度地図については、同社は多くの自動車メーカーの協力により、欧州では10ヶ月でほとんどの道路カバーできたことを紹介。その一方でドライビングポリシーについては競争領域ではないとしており、30以上のメーカーやサプライヤーと協力体制にあるという。

一連のプレゼンテーションから、WILLERが地方の移動を持続可能とするためのツールのひとつとして自動運転を考え、モービルアイと手を組んで日本国内での展開を進めつつあるという動きが把握できた。今回は佐渡市の実例が紹介されたが、今後もこのタッグによる自動運転移動サービスの展開が進むのであろうと理解した。

《森口将之》

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