愛車の手洗い洗車を積極的に行っているカーオーナーであれば、4月28日が「洗車の日」だと知っているかもしれない。語呂合わせで、4月28日を「ヨ(4)いツヤ(28)」と読み、ドライバー自身による手洗い洗車で愛車への愛着を高めてもらうことを目的として、オートアフターマーケット活性化連合(AAAL)が定めた記念日だ。コロナ禍をキッカケに、手洗い洗車を行う人が増えているようで、愛車を大切にしているクルマ好きにとって、手洗い洗車は「楽しいひととき」といえるかもしれない。一方で、自分の手で洗うのではなく、プロの手や機械による洗車サービスも多様化しつつある。そのトレンドの1つがサブスク(サブスクリプション)サービスだ。一定期間の利用権として定期的に料金を支払うサブスクは、トヨタのKINTO、ポルシェのPassport、フォードのCanvasと、クルマ業界にも定着しつつあり、ついにカーケア・洗車サービスにも波及。ユーザーにとってはより便利で気軽に洗車に触れられる機会として広がりつつある。◆スマホアプリと連携 給油とセットで…整備業界に特化した人材派遣事業を展開するレソリューションが2021年2月に公表したアンケート調査によると、洗車の主流は手洗いもしくは門型洗車機で、洗車を行う人の多くはガソリンスタンド(サービスステーション:SS)か自宅で行っている。その中で、広がりを見せているのが門型洗車機の定額利用だ。ITツールを通じてSSや整備事業者のコンサルティング・支援を手がけるデータバンク(横浜市港北区)は、スマートフォンアプリを活用した定額機械洗車サービス「WashPass(ウォッシュパス)」の導入店舗を拡大させている。2019年12月から展開しているウォッシュパスは、月額定額で何度でも導入SS店のセルフ洗車機を利用できるサブスクリプションサービス。ユーザーはアプリ上でクレジットカード決済でき、店頭ではキャッシュレスで洗車が可能。導入店舗により選択できる洗車コースや料金は異なるが、多くが月に2回以上の利用で元が取れる設定で、現在、導入店は全国で順次広がっている。お得な料金設定もさることながら、ユーザーにとってメリットとなるのは、アプリを通じたこまめな利用案内。これまでSSでは少し割安なプリペイドカードやアナログの会員制度などはあったが、アナログな手法ゆえに定期的な利用案内がない場合もあり、ユーザー側も「気がついたら特典の有効期限が切れてしまっていた」など不利益を被るケースもあった。ウォッシュパスでは、アプリを通じて自動的に利用促進が案内され、店舗独自のガソリン割引クーポンも付加されるなど、洗車のみならず給油と合わせ、お得なサービスを持続的に受け続けることができる。近年ではSSでボディコーティングを施工できる店舗も少なくなく、実際にウォッシュパスを導入したSSでは、コーティング施工後の定期メンテナンスとしての利用や、最新の高機能な機械洗車を体験したいという目的での利用など、ユーザーが洗車サービスに触れる新たな機会の創出にも繋がっているそうだ。◆ディーラーや整備工場など、SS以外でもサブスク洗車また、ユーザーが機械式洗車を利用できるのはSSだけではない。トヨタカローラ鹿児島(鹿児島県鹿児島市)は、同社が運営する複合商業施設「POLDERTerrace(ポルダーテラス)」で2020年9月から、洗車定額プラン「polsc(ポルスク)」を展開している。ポルダーテラスに設置された機械洗車(スタッフによる拭き上げ含む)を平日限定で回数制限なく利用できるサービスで、用途・料金に応じた3コースを設定。最安月額料金は税込1800円~で、洗車ブースのほかカフェやアパレルショップ、トヨタ・ダイハツ販売店も併設された同施設で、買い物ついでに洗車できる。さらにポルスクでは、決済手段が「TOYOTA TS CUBIC Pay(TSキュービックペイ)」に限定している。TSキュービックペイは、トヨタファイナンスが展開するキャッシュレス決済アプリ「TOYOTA Wallet(トヨタウォレット)」に搭載されたQRコード決済で、支払い料金に応じてポイントを付与。キャッシュレスの高い利便性に加え、この貯まったポイントをトヨタ販売店で利用でき、車検・点検や次のクルマへの買い替えもお得にできるのだ。他方、機械式洗車だけでなく、手洗い洗車でも“サブスク”型が出始めている。シトロエンディーラーや輸入車整備を手がける渡辺自動車(名古屋市昭和区)は2020年7月、手洗い洗車をはじめとした車両点検の定額会員サービス「WATANABE Car Premium Club(ワタナベカープレミアムクラブ)」をスタート。洗車を切り口に定期的な入庫を促すことで、綺麗さだけでなく、整備面も含めた良好な車両メンテナンスをサポートしている。定額サービスは3コース設定で月額5000円~。手洗い洗車のほかオイル・ワイパー交換はどのコースも共通で、上位コースでは日常点検やタイヤ前後交換といったより充実した点検や内装コーティングが付加される。このサービスを立ち上げた背景について、同社は「近年では中古車でも現車を確認せず、オンライン上の情報・価格を優先して購入するユーザーが増えた。そのため遠方の店で車両購入し、購入後の整備ショップが定まっていない浮動客が増えたように見受けられる」(サービス工場・岩井氏)と説明。自社の既存顧客に加え、輸入車ユーザーに多いうという“整備拠点探しに困っている浮動客”のサポート策として定額サービスを立ち上げたそうだ。実際、同社にはディーラーを展開するシトロエンオーナーに限らず、メルセデスやBMWなどの輸入車オーナーからの問い合わせは多く、定額サービスの会員も徐々に増加中。岩井氏は「定期的に入庫してもらえることで車両を確認でき、劣化部品や故障箇所の整備・修理も提案できる」と話しており、ユーザーとしては気軽な洗車を入り口に、車検・整備や修理、果ては車両の買い替えまで一手に相談できる。◆洗車・コーティング専門店でもサブスク!SSや新車ディーラー、整備工場などが、ユーザーとお店の1つの接点として便利な洗車サービスを拡充する中、洗車・コーティングを専門とするプロディテイリングショップでも、“サブスク”形式のサービスが登場している。栃木県宇都宮市にある「アペックス(郡司公生代表)」では今春、サブスクリプションサービス「ビューカ」を正式にスタートした。3コースが設定されており、中型セダンなどのM車両の参考月額価格は、シルバー会員が2万900円、ゴールド会員が2万4600円、ブラック会員が3万3000円。初回のコーティング施工と12カ月後の再施工は3コースとも共通で、シルバーは6カ月ごと、ゴールドでは4カ月ごと、ブラックでは3カ月ごとのメンテナンスが定額料金内で受けられる。ブラックではこのほか、1カ月に1回の洗車・室内清掃も無料。コーティング施工には、ウインドウの撥水コートやホイールなども含まれており、年間金額で換算した場合、いずれのコースでも通常施工に比べて割安でメンテナンスまでのサービスを受けることができる。このサービスのポイントは、忘れがちなメンテナンスを実施でき、コーティングを施工した愛車の良好な状態をしっかり維持できること。コーティングが広く普及した今日でも、最初の施工こそこだわる人が増えているものの、その後の定期メンテナンスは中々実施していないユーザーも少なくないそう。一方で、汚れや洗車傷などの小傷を長期間放置することでコーティングの被膜が劣化してしまうため、せっかくコーティングを施工しても、その後の管理・維持の仕方次第では、コーティングの恩恵を存分に受けられないケースもある。逆にいうと、施工後のメンテナンスをしっかりすることで、コーティングの防汚性などのメリットをより長く享受できるのだ。元々同社は、コーティング専用の乾燥ブースや、洗車用の独自の純水装置など、洗車好きが高じて専門店を立ち上げた郡司代表のこだわりが詰まったプロショップ。県内を中心に愛車に強いこだわりを持つユーザーから根強い支持を受けており、「ビューカ」も手頃な価格ではないものの、「相応のお金を払って愛車の綺麗をしっかり保ちたい」というオーナーにとってはぴったりなサービスといえるだろう。洗車サービスでも様々な場所・形態で広がり始めている“サブスク”サービス。ただ、登録しても実際に利用しなければ定額料金が無駄になってしまうように、「サブスク=絶対にお得」ではなく、あくまでカーライフをより快適にしてくれるための1つの手段だ。愛車に乗る(汚れる)頻度や洗車に求める質、生活圏内に提供サービスがあるか、など、自身の愛車との付き合い方に合った“自分なりの洗車サービス活用術”を探してみてはいかがだろうか。
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