洗車を自分で行うユーザーの中には、カーコーティング商品のパッケージに書かれた「強力な撥水!」「輝く艶!」といったコピーに、もはや見飽きたという人もいるかもしれない。それだけ、愛車を大切にする1つの術として「撥水」や「艶・光沢」は重要な要素だが、最近ではエンドユーザー向けのコーティング剤において、それ以外の“機能性”を打ち出した商品も増えてきているようだ。◆走行性能が変わる? トヨタ純正コーティングトヨタ自動車は1月、エンドユーザー向けのコーティング剤『GRエアロスタビライジングボディコート』を発売した。洗車後にボディ表面にスプレーして施工するタイプで、ユニークなのは「艶・撥水は一般的なコーティング商品が優れている」とパンフレットに明記している点だ。では、何を強みとしているかというと、操安性能の向上。同製品の施工によって帯電を抑え、直進性やハンドリング性能、外乱安定性などを改善することができるという。かつて同社が発表したアルミテープ(テープモールディング)に続くシリーズ企画で、全国のGRガレージやトヨタ販売店、カー用品店で販売されている。同社によると、近年では、娘さんからお父さんへのプレゼントとしてカラフルなボトルのカーシャンプーやコーティング剤が購入されたりと、カーケア製品が密かに熱を帯びているそう。一方で、新製品開発にあたって既存製品を徹底的にテストしたところ、「艶や撥水といった土俵では、今から参入しても勝てない」という結論に至り、操安性能という“機能性”に焦点を絞ったという。こうした開発経緯から、コーティング剤でありながら「液剤の形をしたパーツ」という位置付けの同製品。アフター用品でもしっかりと「トヨタ純正」を掲げており、同社GRブランドマネジメント部では、「サーキット走行などを嗜むクルマ好きはもちろん、帰省で長距離運転をするファミリー層など、幅広い車種・オーナーに使ってもらいたい」と話している。◆コーティングの専門企業は“耐熱性”に着目他方、コーティング製造・販売を主事業とするサプライヤーにおいても、機能性を追求する動きが出てきている。コーティング専門ショップなどの事業者向けに独自ブランド「ダイワプロテック」を展開するダイワオートモビルズでは、3月に新たにエンドユーザー向けのコーティングとして『ナノメタルコーティングDIY(写真左)』『タイプE(同右)』の2製品を発売する。前者は、同社がこれまでプロ向けに販売してきた「ナノメタルコーティング」シリーズのエンドユーザー向け商品。同シリーズはレアメタルを配合しているのが特徴で、艶や光沢、撥水性といった従来のコーティングの魅力も存分に発揮しつつ、UVカットや帯電防止性といった独自の機能性も併せ持ち、多くのプロショップに導入されている。DIY版は、事業者程の整った設備環境・技術がない一般ユーザーでも施工できるようにブラッシュアップされており、既存のコーティング剤ではなかなか満足できない“こだわり層”をターゲットに据えている。一方、今回新たなコンセプトで開発されたのが『タイプE』だ。こちらの特徴も、「耐熱」という機能性。同社によると、事業者向け製品含め、従来のコーティング剤は発熱に弱い製品も少なくなく、エンジンやエンジンルーム、排気系など、高温に晒される環境では効果が持続しないという。この「タイプE」は摂氏2000度まで耐えることができ、高くても摂氏1000度程といわれる一般車の走行環境を余裕で上回る。四輪車はもちろん、エンジンや吸排気系が剥き出しで汚れやすい二輪車へのぴったりな製品だ。そして実はこの2製品には、ロータリー搭載車のチューニングで知られるスクートのエンジニア・小関秀一氏と、スーパーGTで活躍するレーシングドライバー・青木孝行氏が開発に参画。レース結果にも影響を及ぼす車両へのタイヤカス付着を解消すべく、過酷な環境への耐久性と付着物を極限まで防ぐ防汚性を両立したそうで、モータースポーツからの技術フィードバックが注ぎ込まれた逸品なのだ。もちろんボディコーティングという商品の性質上、帯電防止にしても耐熱にしても、施工の環境や仕方は千差万別で、必ずしも期待できる効果が100%実現できるとは限らない。ただ、“撥水”や“艶”といった従来のコーティング剤の売り文句に食傷気味なユーザーは、1度試してみてもいいかも。
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