「機能美」という言葉を聞いたことはあるだろうか。余分な装飾を排し、無駄のない形態や構造を徹底的に追求したその先に、自然にあらわれる「美しさ」を意味する言葉で、主に建築や工業製品などに対して使われている。世界中の誰もが「名車」と讃えるクルマの美しさを評する時などにも使われているので、クラシックカーやヴィンテージカーの愛好家であれば、よく耳にする言葉かもしれない。機能美が追求されたものは、高性能かつ圧倒的なパワーを兼ね備えている場合がある。伝統的な武具(鎧、兜、刀、弓、槍など)だったり、戦車を例に挙げればわかりやすいだろうか。イギリスやドイツでは、戦車の機能美を高く評価し、貴重で優れた機械技術として後世に残すべく「戦車の博物館」があり、ミリタリーマニアの間では有名なスポットとして知られている。▼イギリスの戦車博物館「The Tank Museum」Webサイト▼ドイツの戦車博物館「Deutsches Panzermuseum Munster」Webサイト◆日本の戦車は、だれが保管している?日本では「自衛隊が戦車などを保管しているのだろう」となんとなく思われているようだが、どうやら、そうではないらしい。自衛隊の展示車両はあくまで広報用で、限られた予算と人員でなんとか維持している状態で、自衛隊から個人や民間団体への譲渡、払い下げは原則不可能なのだとか。▼防衛省・自衛隊のWebサイト個人や法人で車両などを収蔵展示した私設の博物館が過去にあったようだが、設立者の逝去や景気低迷など様々な理由で閉館となり、収蔵品の散逸が深刻化しているという。そもそも日本では基本的に、戦車や装甲車、火砲などは、技術史的にどれだけ貴重であっても保存されることなく、溶鉱炉で処分され「鉄クズ」となり消えていく運命にある…。◆日本初の「防衛技術博物館」設立を目指してこういった現状を食い止め、戦車などを “ 日本の貴重な機械技術遺産 ”として、しっかり保管展示できる「防衛技術博物館」の設立を目指して奮闘している挑戦者たちがいる。強い信念をもち実現に向けて活動している彼らは、2011年12月20日に「NPO法人 防衛技術博物館を創る会」を立ち上げ、クラウドファンディングなどで資金を集めながら、博物館設立と展示車両収集のために、さまざまな活動を展開している。▼夢の「防衛技術博物館」完成想像図▼2011年12月20日に「NPO法人 防衛技術博物館を創る会」が発足▼「NPO法人 防衛技術博物館を創る会」の役員メンバーたち◆地道な活動を継続中!具体的には、日本初の小型四駆「くろがね四起前期型」のフルレストア(復元)を成功させていたり、海外コレクターの手にあった旧日本軍の戦車「九五式軽戦車」の所有権を獲得するなど、地道な活動を継続。この取り組みは、ミニタリーマニアの間だけでなく、映画やアニメ愛好家、そして一部のクルマ好きの間でも注目を集めている。▼「九五式軽戦車/撮影用プロップモデル」と日本初の小型四駆「くろがね四起前期型」▼2,052人の支援者により、59,995,000円をクラウドファンディングで!なんと、この取り組みを中心的に行っている「NPO法人 防衛技術博物館を創る会」の代表は、静岡県にある自動車整備・販売会社「カマド」を経営する小林雅彦氏で、熱狂的なミリタリーマニアとしても有名で、テレビや雑誌の取材を受けることも数多い。小林氏が社長を務めるカマドでは、自社で出版物も発行しており、四駆道楽専門誌「CURIOUS(キュリアス)」や、旧日本陸軍が試作した幻の重戦車(オイ車)に関するムック本「日本の重戦車」のほか、映画で有名になった「デロリアン」のバイヤーズガイドも発行。それら書籍は、静岡県内だけでなく、東京の代官山蔦屋書店をはじめ、各地の書店やアマゾンでのネット販売も行っている。◆次なるステップに向けて現在、NPO法人 防衛技術博物館を創る会では、次なるステップとして、防衛技術博物館設立予定地の確保や、展示車両の収集などに注力している。2019年12月27日現在、クラウドファンディング(READYFOR)でのプロジェクトは終了しているが、NPO法人防衛技術博物館を創る会の代表として、小林氏が「防衛技術博物館」設立の意義などについて熱く語っている動画が公開されているので、気になる方はぜひご覧頂きたい。なお、NPO法人防衛技術博物館を創る会では、随時、賛同者からの支援を受け付けている。詳しくは同会のWebサイト(www.tank-museum-japan.com)をチェックしてほしい。
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