「九五式軽戦車」の日本への里帰りプロジェクトとして、4月30日まで実施されていた5,000万円のクラウドファンディング。数奇な運命を辿るこの戦車の行く末が注目される中「日本が誇る80年前の技術遺産を日本人の手に取り戻そう」という小林雅彦氏(NPO法人防衛技術博物館を創る会代表理事/株式会社カマド代表取締役社長)の熱い思いに支援者たちの輪は大きく広がった。最終的に支援者数2,052人、支援総額は5,999万円に上り、クラウドファンディングは無事に成功。所有権は防衛技術博物館を創る会に移行された。◆修復作業が完了!英国でのお披露目は一躍注目の的にイギリス・ボービントン戦車博物館で、6月28日(金)~30日(日)に行われた「タンクフェスト」。“戦車の祭典“と言われるこのイベントで、これまで15年に渡り、ポーランドで修復作業が進められていた九五式軽戦車のお披露目と走行展示が行われた。戦前~戦後を通じて欧州で日本の戦車が走るのは初めてということもあり、現地での注目度は高く、実際の展示を見たオランダのオーバールーン国立戦車博物館の館長が、直々に来年5月のイベントでの展示オファーを出すという出来事もあったそうだ。当時の日本の技術力の高さが、海外では正当に評価されている証明と言える。なお、この会期中に来年6月のタンクフェスト参加と走行を条件に、ボービントン戦車博物館での無償保管も決定したという。この決定は現状の状態を博物館側が保証し、また来年その雄姿を確実に見られるということを意味する。この事実は日本への里帰りという最終目標まで考えても、意義深い出来事だ。◆九五式軽戦車が「日本の地」へ戻るためにクラウドファンディングにより、所有権が「日本人」の手に戻ったことは紛れもない事実だが、実際に九五式軽戦車を「日本の地」へ里帰りさせるためには、まだまだハードルがあると小林代表は話す。その1つが日本で保管・展示を出来る場所(=防衛技術博物館)の整備だ。2009年にNPO法人として発足した防衛技術博物館を創る会は、今年で活動10年目を迎えた。「当初から10年活動して、結果が出なければ発展的に解消しようという思いでやってきました。今年がその10年目。ようやく修復も完了し、所有権も我々に戻ってきたので、最後の仕上げとして、里帰りを何としても実現させたい。そのために今、出来ることを粛々と進めています。この1年が勝負です」と熱っぽく話してくれた小林代表。その小林代表が社長を務める自動車整備・販売会社「カマド」は、本社を静岡県御殿場市に構える。御殿場市は、1927年に試作の国産戦車第1号の試験走行を行った歴史的な地だ。現在も自衛隊の演習場があり、歴史的にも立地的にも「防衛技術博物館」建設の意味がある土地だと小林社長は力説する。平成から令和に跨がった今回の里帰りプロジェクト。節目となる10年目の活動に入った同会と小林代表の目は着実に次のステージを見据えている。これからもその一挙手一投足から目が離せない。
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