ホームオーディオ、カーオーディオ、さらにはコンサートのPAに至るまで、広く音響に関する仕事を長きにわたって生業としてきた“アンティフォン”(石川県)の松居邦彦代表。この、業界きっての“理論派”である氏に、『DIATONE SOUND.NAVI』について話を訊いた。ところで氏は、“DIATONE”スピーカーの愛好家としても知られている。サウンドコンテストにも出場させているデモカーで、かつてのフラッグシップスピーカー『DS-SA1』を使い続け、そして新旗艦機『DS-SA1000』の登場以降はこちらに着け替え、当機の実力を引き出し切ることをテーマにデモカーの音質を磨き上げ続けている。そんな松居氏の『DIATONE SOUND.NAVI』評とは…。興味津々でインタビューを開始した。■「“DIATONE”は、ノイズを無くそうとする目標値が他社よりも高い」早速、単刀直入に『DIATONE SOUND.NAVI』の評価のほどを伺った。「初代モデルの『NR-MZ60シリーズ』が出たときから、抜群に音質が良いと感じていました。そして以降も、代替わりするごとに音が良くなっています。調整機能の詳細さではこれに並ぶ海外製品もあるけれど、音質性能についてはカーオーディオメインユニットの中でベストだと思っています。DSPに“FIR方式”が使われていることが、良さのキモだと思います。通常のDSPには“IIR方式”が採用されていますが、それと比べて“FIR方式”では、途方もなく多くの演算が常に繰り返されているんですね。そうすることで精度を高めようとしているわけです。でも、“FIR方式”にも弱点があります。膨大な演算を行うからこそ、ノイズの影響が大きくなる可能性もある。ところが“DIATONE”は、ノイズの排除に徹底的に取り組んでいて、そのデメリットを封じ込めています。きっと、他社と比べてノイズを取り除こうとする目標値が高いんでしょうね。結果、聴感上のS/N感が高い。だからこそ音が良いんです。ただ、“IIR方式”を支持する考え方もオーディオの世界にはあって、それにも一理ある。とは言うものの、“FIR方式”がより複雑でより崇高なアプローチであることもまた事実だと、僕は思っています。なぜならば、“FIR方式”のDSPでは原理的に位相の回転を補正することができるから。難しい話になるのでこれについては機会をみて私のコラムで解説したいと思っているのですが、ともかく“DIATONE”はすべての製品において、より高度なアプローチで忠実度再生に取り組んでいます。僕は、その姿勢に共感しているんです」■「一貫性を持ってHi-Fi再生を追求し続ける。筋が通っている」さらに話を続けてもらった。「“DIATONE”は、科学技術を極めることでとことんHi-Fi再生を追求しています。“DIATONE”スピーカーを使い続けている理由は、まさにそこにあります。そして、技術追求の姿勢に一貫性がある。筋が通っているんです。例えば、『DS-SA3』、『DS-SA1』というスピーカーと、“FIR方式”を取り入れた『DA-PX1』(デジタルプロセスセンター)でも、同じ方向が目指されていました。そしてその後には、独自開発した画期的な振動板素材、“NCV(ナノ・カーボナイズド・ハイベロシティ)”を世に送り出すのですが、これがとにもかくにも素晴らしい。これにより、Hi-Fiの追求度合いにさらに磨きがかけられました。サブウーファーからトゥイーターにまでこれを使うことで、理想的な音の繋がりが実現されることとなりました。そしてそれを制御するために今度は、『DA-PX1』の機能をもっと手軽に得られる新ユニットとして、『DIATONE SOUND.NAVI』を出してきた。“NCV”もまた、“FIR方式”でコントロールするべきだと考えたのだと思います。一連の開発の流れが、すんなり腑に落ちるんです。敢えて難しいやり方で、かつ高度なハイテク技術をもって、ブレることなく高忠実度再生を目指している。そこにシンパシーを覚えるんです」■「オーディオではローテクなものが好まれることもあるけれど、ハイテクを極めることをベースに置くべき」続いては、デモカー“ポルシェ・マカン”の音作りについても訊いてみた。「“ポルシェ・マカン”では、あるがままの音を再生できるシステムを作り上げようとトライしています。もしも録音があまり良くない音源があったとしても、それをそのまま出し切ることがHi-Fiだと思うんです。“DIATONE”も、そのようなアプローチで製品作りをしていますよね。そして『DS-SA1000』ではそのコンセプトが極まっている。このスピーカーを使っている理由はそこにあります。ただオーディオの世界では、ハイテクが極まることがすべてではない、という側面もあります。『DS-SA1000』も『DIATONE SOUND.NAVI』も、科学技術の先端を走っているのですが、その凄さは、必ずしもすべての愛好家に支持されるものでもない。そこにオーディオの面白さがある(笑)。例えばレコーディングの現場では、かつてはテープに録音していた時代があって、当時は何度もダビングを重ねて録音していましたから、ダビングすればするほどHi-Fiではなくなっていく。しかし今ではデジタル技術の発展によって、ダビングレスで録音を完了できるようになりました。ところが、このように圧倒的に科学技術が進歩したにも関わらず、その一方で何十年も前に作られたヴィンテージマイクが使われていたりするんですよ。性能的には相当にナローなのに、それで録音したほうがコクがでるとか言って(笑)。でも、それもまたオーディオの一面なんですよね。なので、僕も敢えてすべてを“DIATONE”製品で固めずに、多面的にシステムを構築してもいるのですが。しかしながらベースに置いているのは、科学技術を極めてHi-Fiを追求することです。あくまでも『DS-SA1000』ありきで音を作っています」■「本当に音楽が好きな方、そして違いの分かる方にこそ、『DIATONE SOUND.NAVI』を使ってほしい」最後に、『DIATONE SOUND.NAVI』は、どのような人にお薦めなのかを訊いてみた。「音にこだわっている方に使ってほしいと思っています。崇高なサウンドを目指している方が使うべき製品だと思うんです。いろいろな捉え方があるとは思うけれど、『DIATONE SOUND.NAVI』はみんなのための機械ではない。本当に音楽が好きな方、そして違いの分かる方、そういう方々にこそふさわしいユニットだと思っています。そして、できれば“DIATONE”スピーカーと組み合わせて使っていただきたいですね。“DIATONE”のスピーカーは抜群に性能が高い。『DIATONE SOUND.NAVI』は、それを鳴らすのに打ってつけのカーオーディオメインユニットです。もちろん、ナビが交換できるクルマという前提にはなるけれど。そしてナビが交換できるなら、『DIATONE SOUND.NAVI』をお薦めしています。これにエントリースピーカーである『DS-G300』を、予算に余裕があればその上の『DS-G500』を組み合わせて。多くの方に、“DIATONE”だからこそのHi-Fi道を楽しみながら追求していただきたいですね」今回改めて話を訊いて、松居さんが『DIATONE SOUND.NAVI』を認めていること、そして、その能力を高く評価していることを確認できた。クルマの中で好きな音楽を良い音で聴きたいと思ったら、『DIATONE SOUND.NAVI』を候補に入れるべきであることは確かなようだ。要注目。