群馬自動車大学校の協力のもと、「整備学校の今」を追うレポートの最終回は、「自動車業界に目を向けてもらうための学校の取り組み」に注目した。これまで、“昔と今の学生気質の違い”や“即戦力を輩出するための取り組み”をお伝えしたが、その前段階、つまり入学にいたるまでの動きが今回のテーマだ。「人材不足」など、ネガティブな言葉も耳にする自動車整備業界の入り口では、未来の担い手を絶やさぬよう、様々な努力が続けられている。今、“金の卵”達は、どのようにして生み出されているのか? 草の根とも言える、その取り組みを紹介したい。◆クルマに目を向けてもらうため整備学校の“今”と“昔”。この差をさらに痛感したのが、入学者獲得に関する話を聞いた時だった。どのような学校にとっても『至上命題』と言える学生の確保。この観点から見ても、20年前と今では、整備学校を取り巻く環境は大きく変化しているという。「一昔前までは、何もしなくても、待っていれば勝手に願書が届く、そんな感覚でした。そのため広報活動など特別な取り組みはしていませんでした」石井副校長、吉田副校長は、かつての入学志願状況について、こう口を揃えた。日本自動車整備振興会連合会の調べによると、整備士の数は年々減少傾向を辿り、2016(平成28)年時点で約33万4600人。前年比98.4%という結果が出ている。アンケートを見ると、実に47.9%の事業所が整備士不足を訴えているという調べも出ている。こういった背景は、もちろん整備学校にも影響として及んでいる。生徒数が「減っている」という現状を受け、どの学校も学生を確保するために奔走する日々が続く。では、群馬自動車大学校では、どのような取り組みが行われているのだろうか。◆クルマが持つ魅力を伝えるまず、「クルマの楽しさを伝える」活動がその1つだ。同校では、東京オートサロンや地域のカーイベントへの車両出展を通じ、クルマが持つ魅力を多くの人々に伝える取り組みを行っている。「特に小さい子ども達が『クルマってかっこいい』と思ってくれれば、将来的に自動車業界に目を向けてくれるのではないか、そう考えています」石井副校長は、それに続け「啓蒙活動」という言葉を使い、この未来への投資ともいえる活動の意義を語った。家族連れが多いイベントで車両を展示し、「クルマのインパクトを与える」。こういった種まきが、将来的なファン層の開拓に繋がると信じている。また同校では、教材車としてランボルギーニやフェラーリ、ポルシェといったスーパーカーを用意。クルマが持つ魅力をフル活用し、若い世代への訴求を続けている。◆女子学生が増えている理由そして、ここで1つ “意外な話”を聞くことができた。それが、女子学生が増えているという事実だ。同校では、例年5~7人程度で推移していた女子学生の数が、2016年には2ケタに乗るなど、その数を伸ばしているのだという。実際に学校を歩いていると、楽しそうに授業を受けている女子学生の姿も目立っていた。「ディーラーさんも、積極的に女性の採用を続けています。企業の期待に応える人材を輩出するため、女子学生の存在は重要と考えています」いまだに男社会という印象が強い業界で、女性の人材を確保するのは、決して簡単なことではないだろう。それにも関わらず、増加傾向を見せているのはナゼなのだろうか? そのヒミツを紐解くため、まずは同校が女子の入学希望者向けに発行しているリーフレットを見せてもらった。ビビットカラーがあしらわれたリーフレットは、女子ウケするのも納得なポップな仕上がり。内容も、入学前の女子が不安に思うであろう要因を、丁寧に一つひとつ潰している。同校のOG、つまり卒業生の声などもふんだんに掲載し、学校生活をイメージしやすい作りとなっている。さらに、工夫はこれだけではない。女子学生向けにパウダールームの設置や、トイレのリニューアルなどを実際に行い、女性が感じるマイナス要因を払拭した校舎となっている。女子学生が過ごしやすい空間を作り上げ、これを、オープンキャンパスや対外PRの際などに、アピールポイントの一つとして打ち出している。◆「女性は強し」を実感女子学生が増えているという話を聞いた時、著者の頭に浮かんだのは、「親が整備工場を営み、それを継ぐために入学する子が多いのかな」というロジックだった。しかし、それを石井副校長に聞いた時に返ってきた答えは、「そのケースは本当に少ないですね」というものだった。そして、志望理由を聞くと、圧倒的に多いのが「親がクルマ好きで、小さい時にイベントなどに連れて行ってもらううちに好きになって、クルマ関係の仕事に就きたいと思った」という声なんだそう。この話を聞くと、最初に石井副校長が話していた「啓蒙活動」の重要性が、際立ってくる。『三つ子の魂百まで』という言葉もあるように、やはり幼い頃の記憶が与える影響は大きいようだ。他にも「近くの整備工場のお兄さんたちを見て、こんな風になりたいと思った」とか「普通の女性とは違う、かっこいいと思える仕事が良いと思った」など、ここに入学してくる女子学生のほとんどが、自らの意思でクルマの世界に飛び込み、そして思い描く未来に向かって進んでいるのだ。ちなみに同校に在籍する女子学生の気質は、「男子よりも、しっかりしている学生が多いですね。芯がしっかりしている」そうだ。確かに、その細腕で物怖じすることなく軽々とタイヤを持ち上げるシーンや、一心不乱にエンジンルームを覗き込む姿などを、この日も多く見ることができた。「女性強し」という言葉は、どこの社会に行っても変わらないのかもしれない。このような草の根とも言える活動を続け、整備学校は今も自動車業界の根幹を支えていることを、今回の取材で強く感じることができた。そして、この取り組みが、大輪の花を咲かせる日も、そう遠くないのかもしれない。校内で笑顔に溢れた若者達の姿を見て、そんな思いが胸に込み上げてきた。◇群馬自動車大学校◇1967年に「群馬自動車整備技術学校」として開校。2007年に現在の名称となり、17年には創立50周年を迎えた。1年課程の自動車車体整備科、カスタマイズ科、2年課程の一級・二級自動車整備科(一級は計4年在籍)、3年課程の国際メカニック科で構成される。産業能率大学(通信制)に在籍し、大卒資格も取得できる体制が整えられていることや、ランボルギーニ、フェラーリなどの高級車を教材車として用意するなど、独自の取り組みでも人気を集めている。小倉基宏学校長。群馬県伊勢崎市赤堀今井町1-581。
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