【コラム】無資格者による完成車検査…“やっちゃった日産”の何が問題なのか? | CAR CARE PLUS

【コラム】無資格者による完成車検査…“やっちゃった日産”の何が問題なのか?

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販売好調の中で水を差す大問題が
  • 販売好調の中で水を差す大問題が
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  • こちらは、型式指定を受けているクルマの車検証。赤枠内に、その車両を示す数字入る
  • 陸運局に現車を持ち込んで登録したクルマの車検証。赤枠が空欄だ
  • 【コラム】無資格者による完成車検査…“やっちゃった日産”の何が問題なのか?
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遡ること数日。9月29日の夜、筆者のスマホに日産自動車の「無資格者による完成車検査」という衝撃的なニュース速報が飛び込んできた。金曜日の夜の記者会見ということで、世間はすっかり週末モードだったが、業界では最重要の話題として注目を集めた。当然、筆者もその展開を固唾を呑んで見守っていた。明けて月曜日、ようやく同社の西川社長が会見するに至ったが、「あまりに呑気で遅すぎる対応」というのが大方の業界関係者の受けた印象だった。


ところが、世間の反応は“それほど”でも無いというのが正直なところだ。記憶に新しい、三菱自動車の「燃費不正問題」の時の大騒ぎと比べると、“冷静”と言うよりは、むしろ“ピン”ときていないという表現がしっくりくるのではないかといった感じだ。国土交通省は「制度の根幹を揺るがす問題」として、日産の管理体制を厳しく問う方針とはいうものの、今回の騒動のいったい何が問題なのか?多くのユーザーが疑問に思っている点だろう。

◆そもそも型式指定制度とは?

何が問題かについて考える前に、制度について理解することが必要だろう。今回、問題になっているのは「型式指定」という制度だ。

本来、クルマがナンバーを取得して公道を走るためには、1台1台、陸運局に車両を持ち込み、保安基準に適合しているかの審査をし、車検を取得しなければならない。ちなみに、保安基準とは「クルマが安全に走行できる状態の最低基準」だと理解して欲しい。


これに対してクルマの型式指定とは、自動車メーカーが自社の生産する車両について、車種(車両型式)ごとに国土交通大臣に対して申請を行い、所要の手続きを経て指定を受ける制度だ。指定を受けたクルマは、陸運局に車両を持ち込んで現車の検査を受ける必要がなく、書類の手続きだけでナンバーを取得(登録)することができるワケだ。車検証の右側の方には、「型式指定番号」と「類別区分番号」という欄があり、ここに数字の記載がある車両は、この型式指定を受けているクルマということになる。日々、数多くの台数が登録される業務の手間を省き、効率良く合理的に行うためのシステムとも言える。

こちらは、型式指定を受けているクルマの車検証。赤枠内に、その車両を示す数字入る
陸運局に現車を持ち込んで登録したクルマの車検証。赤枠が空欄だ
ただし前提条件として、国(陸運局)が行う新規検査に代えて、完成した車両に対して自動車メーカーが自ら“1台毎”に完成検査を行うこととしている。完成検査では、指定を受けた型式としての構造・装置・性能を有しているか、保安基準に適合しているかを検査するのだが、あくまでも国とメーカーの信頼関係のもと”性善説”に基づいて行われている。

◆いったい何が問題なのか?

今回、まず問題になっているのは、完成検査をする際に検査員の資格を持たない「無資格者が行っていた」ことだ。国交省の通達によると、完成検査はメーカーが自主的に決めた検査経験や知識を持ち、登録・認定された検査員が行わなければ、検査を完了したことにはならない。検査が完了していないということは、保安基準に適合していない恐れも出てくる。そもそも街中を「無車検の新車」が走り回っているという、世にも恐ろしい状態なのだ。もっとも、品質管理や検査そのものは行われているだろうから、実際に乗っていて何事かが起こるということは考えづらいだろうが...。


筆者が最も問題だと感じるのは、今回の問題が「国交省の立入検査」で発覚したことと、国内6つの全ての工場で「日常的に行われていた」という事実だ。国とメーカーの「信頼関係」を頼りに成立していたシステムを、会社ぐるみで軽視していたことは看過する訳にはいかないだろう。例え品質や安全性が保たれていたとしても、”ルール”を守っていないことが問題なのだ。ルールを守らないという意識が、安全や安心へのハードルを下げかねないということを忘れてはならないと思う。

また、日本の自動車流通を考えた時に、型式指定制度の貢献度は非常に高い。この制度が維持できなくなれば、全ての新車を1台1台現車確認することになり、陸運局の業務がパンクすることは目に見えているし、業務の停滞が、業界だけでなく経済全体にも悪影響を及ぼす可能性さえある。今回の日産の問題は、その根幹を揺るがしかねない危険性を大いに孕んでいるわけで、厳しい対応を迫られるのは当然なのだ。

◆121万台をリコール、その代償は

西川社長は会見で、24車種121万台のリコールを届け出ることを明らかにした。対象は初回の車検をまだ迎えていない、2014年10月から17年9月までに製造された車両で、車検を受けたクルマに関しては保安基準に適合しているという判断なのだろう。リコールの費用は250億円以上に上るという。先期、6,600億円という過去最高益を叩き出した日産自動車にとっては痛くもない金額かもしれないが、失ってしまった信頼を考えるとその代償はあまりにも大きいだろう。


また、現場で作業を行いユーザーに深く頭を下げて事情を説明する販売会社のスタッフのことを思うと、何ともやりきれない気持ちになる。都内の日産ディーラーに勤める営業マンに話を聞くと、「正直、(三菱の燃費不正に続いて)またかという感じ。とにかく、お客さんに申し訳ないという気持ちしかない。販売への影響云々よりも、まずは、安心して頂けるような対応をすることが先決。それが販売会社にできることですから」と言うように、今はメーカーサイドからの指示を待つ状態だという。

日産の社内調査には1ヶ月ほどの時間を要するという。1ヶ月後というと、折しも自動車の祭典「東京モーターショー」の会期と重なる。果たして、日産ブースではどんな発表が行われるのだろう? いつもとは違った意味での注目が集まる。
《カーケアプラス編集部》

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