知ってましたか? 首都高・荒川湾岸橋 100年先への「大規模」修繕---工費110億円、工期7年半[現場見学] | CAR CARE PLUS

知ってましたか? 首都高・荒川湾岸橋 100年先への「大規模」修繕---工費110億円、工期7年半[現場見学]

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首都高荒川湾岸橋の大規模修繕
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  • 荒川湾岸橋の位置。図中の「現在地」は現地PRセンター
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首都高速道路荒川湾岸橋が大規模な修繕工事に入っている。首都圏の大動脈だが、海に近い環境や長年の重交通によって劣化が進んだ。首都高速は工期約5年半、工費110億円をかけ、塗装の全面的な塗り替えや損傷部材の補修などを進める。



◆首都圏の大動脈

首都高速は8月6日、首都高速湾岸線の荒川湾岸橋で進めている大規模修繕工事の現場を報道機関に公開した。2025年11月から設置を進めてきた大規模な工事用足場の内部を初めて公開し、橋の劣化状況や今後の修繕内容を説明した。

荒川湾岸橋は、東京都江東区と江戸川区の間を流れる荒川と中川の河口部に架かる。西側の右岸が江東区、東側の左岸が江戸川区となる。首都高速の橋梁では鶴見つばさ橋、横浜ベイブリッジに次ぐ3番目の長さで、トラス橋としては最大級という。1日の交通量は約16万台に達し、首都圏の物流や人の移動を支える大動脈だ。

荒川湾岸橋は1978年の開通から48年が経過した。河口付近にあり、飛来塩分の影響を受けやすい厳しい環境にさらされている。塗膜が下地から広い範囲で剥がれ落ち、それに伴う鋼材の腐食などが想定以上に進んでいるという。

◆広がる劣化に対応しきれない

首都高速はこれまでも部分的な補修を行なってきたが、劣化が広がっていることから、構造物の健全性を抜本的に回復させる大規模修繕に踏み切った。2025年11月からは、橋梁全体の塗装塗り替えや損傷補修に使用する足場の設置を開始した。今回、当初の施工区間で足場の設置が完了し、工事が本格化する。

修繕作業開始前の報道公開では、橋梁を覆うように設けられた大規模な工事用足場の内部を公開。構造物の現状とともに、今後実施する塗装塗り替えや損傷補修の内容を紹介した。

塗装工事では、古い塗装仕様の既存塗膜を下地からすべて除去した上で、新たに高耐久の塗装を施す。これにより、長期にわたって構造物の健全性を確保する。腐食が進み、一部の部材で発生している断面欠損や破断については、鋼板を使った補修・補強や部材の取り替えを行なう。また、新たに点検通路などを設置し、今後の維持管理性も高める。

首都高速道路東京東局土木保全部の岡原貴司部長は、「荒川湾岸橋は海に近い厳しい環境にある。潮風にさらされ、腐食しやすい。部分的な補修を繰り返してきたが、広がる劣化に対応できない」と現状を説明した。さらに、「架け替えのできる立地でもない。めざすのは、100年先も機能し続ける橋。長期間機能する大規模な、抜本的な修繕を行なう」と、大規模修繕の狙いを語った。

首都高荒川湾岸橋の大規模修繕

◆海だった現在の荒川河口、橋は1978年に開通

荒川湾岸橋が位置する荒川河口部は、1960年代までは海だった。1971年に右岸側から埋め立てが進み、1984年には左岸側も埋め立てられ、現在とほぼ同じ河口の形となった。こうした整備が進む中、荒川湾岸橋は1978年1月に開通した。その後1988年には橋の海側にJR京葉線が開業、1996年には山側と海側にそれぞれ国道357号の荒川河口橋が開通している。

首都高速湾岸線は1976年、大井~13号地(現在の臨海副都心)が最初の区間として開通した。1978年には荒川湾岸橋を含む新木場~浦安が開通する。その後、湾岸線は東西へ延伸し、1993年にはレインボーブリッジと接続、1994年には東京地区の湾岸線が全線開通した。

道路網の拡大と周辺地域の開発に伴い、荒川湾岸橋の交通量も増えた。開通当時は1日約3万台だったが、1995年には約22万台に達した。その後、並行する国道357号荒川河口橋や東京湾アクアラインの開通などを経て減少したものの、現在も約16万台で推移している。2021年の道路交通センサスでは、全国の道路で交通量が最も多い区間となっている。

◆全長840m、首都高最大級のトラス橋

荒川湾岸橋は延長約840m、幅30~50mの大規模な橋梁だ。主な構造には、三角形に組んだ部材で荷重を支えるトラス橋を採用している。中央部では航路を確保するため、鋼床版箱桁という構造を採用し、桁下空間を広く確保した。

開通後は交通量の増加や地震への対応などを背景に、機能強化が続けられてきた。1997年からは耐震補強工事を実施した。上部構造では、地震の揺れやエネルギーを吸収するダンパーや、上部構造の落下を防ぐ落橋防止装置などを設置。下部構造では、陸上部の橋脚で基礎杭を増設し、河川部の橋脚では内部にコンクリートを充填して耐力や靭性を高めている。

首都高荒川湾岸橋の大規模修繕

◆東日本大震災では部材が損傷

耐震補強工事中の2011年3月11日には東日本大震災が発生した。荒川湾岸橋では、複数の部材を接合するガセットプレートの破断や変形などが確認された。緊急補修工事を実施し、安全を確認した12日後に交通開放した。その後、耐震補強工事を完成させ、現在は耐震性能を確保した構造となっている。

いっぽう、長期間の供用による劣化への対応も続けられてきた。荒川湾岸橋は河川上にあり、部材数が多いトラス構造のため、点検が難しい。大規模な足場を設置することも容易ではないため、点検通路のほか、船上からの双眼鏡や望遠カメラによる遠方目視、ロープアクセスによる近接目視などを組み合わせてきた。近年では、点検用ロボットや全方位カメラ、ドローンなどの新技術も活用している。

◆20年間の点検で約4500件の損傷

2002年度から2022年度までの点検では、約4500件の損傷が確認された。このうち腐食と塗膜劣化が53%を占めた。腐食はトラス下層の部材で多く、特にガセットプレートで目立つ。塗膜劣化はトラス中層の斜材、対傾構、垂直材などで多く発生している。損傷には塗膜の劣化や、それに伴う鋼材の腐食、ボルトの破断、部材接続部の亀裂などがある。

これまでは必要な場所に部分的な足場を設置し、塗り替えによる防食対策、ガセットプレートの交換、ボルトの取り替えなどを実施してきた。しかし、海に近いことによる塩害、絶え間ない重交通、長年の使用による経年劣化によって、鋼材の腐食や床版の疲労などのダメージが蓄積している。

損傷を発見するたびに補修する従来の方法では、時間の経過とともに補修サイクルが短くなり、構造物そのものの健全性も低下する。このため、抜本的な大規模修繕が必要になった。

首都高荒川湾岸橋の大規模修繕

◆首都高の高齢化、2040年には65%が50年超

高齢化は荒川湾岸橋だけの問題ではない。首都高速の総延長327.2kmのうち、開通から50年以上が経過する路線の割合は2030年に約4割を超え、2040年には65%に達する。首都高速は2014年の更新計画に続き、2024年に新たな更新計画を立ち上げた。高齢化が進む約22kmを対象に大規模修繕事業を進めており、その中でも大規模な工事となるのが荒川湾岸橋だ。

工事件名は「(修)荒川湾岸橋大規模修繕工事」。施工はIHIインフラスクエア、川田建設、ヤマダインフラテクノスの3社によるJVが担当する。対象は荒川湾岸橋の西側(江東区側)で、中央径間を含む延長約460m。工期は約7年半を予定、工費は110億円となる。東側(江戸川区側)も続いて修繕予定だ。

◆7万平方mを高耐久塗装へ

工事では吊り足場を上層、中層、下層の3段にわたって橋を覆うように設置する。その上に枠組み足場を設け、損傷部分の補修と橋梁全体の塗り替え塗装を進める。

過去の塗り替えは、主構トラスで1回、床組桁で2回実施した。いずれも劣化した塗膜だけを除去する「3種ケレン」だったため、塗膜が厚くなり、剥離などが懸念されている。今回は、さびや古い塩化ゴム系塗膜を完全に除去し、正常な鋼材面を露出させる「1種ケレン」を実施。その上で高耐久仕上げとしてフッ素塗装を施す。塗料には、周辺環境への影響低減や作業環境の改善、危険物の削減を目的に、非危険物の水性塗料を採用する。

トラスの梁は橋全体で長短合わせて約1700本に上る。今回の対象となる塗装面積は7万平方mで、東側(江戸川区側)を含めた橋全体では17万平方mとなる。

◆ガセットプレート約100枚を交換

塗装だけでなく、損傷した排水管やボルトの取り替え、RC橋脚の剥離部分などの補修も行なう。ガセットプレートは約100枚を交換する計画だ。

さらに、点検が難しい場所を減らし、今後の維持管理を効率化するため、新しい点検設備も整備する。既存の点検通路に加え、トラス部では床組下の上部に2か所、下部に1か所の点検通路を新設する。中央径間部には恒久足場を設ける計画だ。

工事用足場はA工区からE工区へ移動させ、最大でも2径間を覆う規模に抑えながら、設置と撤去を繰り返す。これでコストを抑えるとともに、強風時の安全性を確保する狙いがある。足場だけでも1工区当たり約1000トンに達する。

荒川湾岸橋は開通以来、道路ネットワークの拡大とともに交通量を増やし、約半世紀にわたって首都圏の重交通を支えてきた。これまでの部分的な補修から、構造物全体の健全性を回復する大規模修繕へ。首都高速道路は、100年先も安全・安心に利用できる橋をめざして抜本的なリニューアルを進める。

[現場見学]首都高荒川湾岸橋、100年先への大規模修繕---工費110億円、工期7年半

《高木啓》

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