日本の乗用車における平均車齢は9.44年(2025年3月末時点/一般財団法人 自動車検査登録情報協会調べ)となり、33年連続で過去最高を更新。日本にバブル景気の余韻があった1990年代前期は、3年程度で新車へ乗り換えるサイクルだったが、2026年の現代では過去のトレンドとなったと言わざるを得ない。
人口減少や景気低迷、若者の車離れ、新車や中古車の価格高騰などさまざまな要因を背景に、自動車は所有(保有)から利用(レンタルやシェア)へとシフトする流れが、都心部を中心に強まっている。マイカーを購入したら10年、あるいはそれ以上に渡って長く乗り続ける長期保有化は、今後も続くものと思われる。
こうした背景の中で、純水洗車やボディコーティング、ヘッドライト磨きや黄ばみ除去、ウインドウフィルムやペイントプロテクションフィルム(PPF)施工といった「カーディテイリング」サービスへの注目が年々高まっている。
このカーディテイリングという概念を、1970年代という早い段階でアメリカから日本へ持ち込み、業界の礎を築き上げた人物がいる。ジョイボンド株式会社(さいたま市北区)の古舘忠夫代表だ。

古舘代表は、車両の内外装を細部まで美しく仕上げる「中古車商品化」に着目し、今なお世界中のプロに愛用される粘土クリーナー『トラップネンド』を発明・販売。日本のカーディテイリング・ビジネスを発展させた古舘代表の功績は、グローバルな視点で見ても自動車アフターマーケット業界の活性化に大きく寄与していると言えるだろう。
また、2023年1月にはトラップネンドの発明者として、アメリカの国際ディテイリング協会(IDA)から日本人初となる『Hall of Fame(殿堂入り)』に選出された。これは世界中のカーケア施工における最適な研磨ツールを世に送り出したことへの敬意の証であり、そのグローバルな貢献度が公に証明された歴史的快挙といえる。


1996年4月、古舘代表が「日本カーディテイリング協会」を設立
古舘代表が、今から30年前の1996年4月1日に「日本カーディテイリング協会(JCDA)」を設立したことにも触れておきたい。同協会は、カーディテイリング業界の健全な発展や施工者の社会的地位の向上、そして快適で美しい生活環境の実現に寄与することを目的として立ち上げられた。
遡ること50年以上前、1970年代のアメリカで古舘代表が目にした「中古車商品化」は、中古車を新車のように蘇らせる画期的なビジネスとして活況を呈していた。この技術や工程を日本でもマニュアル化できれば、新たなビジネス領域が確立され、自動車アフターマーケット業界全体の活性化につながる――。古舘代表はそうした強い確信を持っていた。
一方で、技術レベルに格差が生まれればクレームを招き、業界全体の信頼損失につながりかねないという危機感もあった。だからこそ、品質保証や技術の向上・均一化を図る必要性があるという強い思いが、JCDA設立のもう一つの原動力だったという。
古舘代表はJCDAの理事長として、最先端の技術やサービス、施工品質の向上、さらには人材育成のために尽力。その活動は多岐にわたり、イベントの開催のみならず、ビジネス・テクニカル情報を届けるタブロイド専門誌「カーディテイリングニュース(CDN)」を創刊し、プロ向けの情報発信にも注力。記念すべきCDN創刊号には、理事長としての古舘代表の熱いコメントが掲載されている。CDNはその後形を変え、現在は購読無料のメールマガジン「プロフェッショナル カーディテイリング」(配信:JCR)を通じて最新情報の提供が行われている。

そこで当編集部は、連載という形で古舘代表のこれまでの歩みをたどりつつ、その深遠な知見を2026年の市場環境に合わせて再定義していく。その第1回となる今回は、古舘代表ご自身に「なぜ今、カーディテイリングがアフターマーケットに必要なのか」をテーマに執筆いただいた寄稿文をお届けする。
<古舘代表・特別寄稿>
一般整備・鈑金業界が直面する「淘汰」の危機と、生き残りの鍵
カーディテイリング(車両の細部にわたるクリーニングと補修)ビジネスは、もともと中古車販売には必要不可欠な作業として発達したものですが、近年ではディテイリングの専門店も多く、さらに増加傾向にあります。
従来、この業界への参入といえば、主に個人商店として独立した施工者が中古車販売店にに入り込んで、エンジンルームやボディなどを美しく仕上げる「中古車商品化」を請け負うスタイルが主流でした。しかし最近では、一般整備・鈑金塗装・SS(サービスステーション)業界が、自社の「新規事業」としてディテイリングサービスを展開するケースが増えています。
その背景にあるのは、自動車の構造の劇的な変化です。 ハイブリッド(HV)や電気自動車(EV)、水素燃料車など、ここ20年ほどで整備技術の高度化は一気に加速しました。しかし、その進化のスピードに対応しきれない整備士は少なくありません。次々とアップデートされる先進技術の教育体制は各ディーラー内に留まっており、一般の整備工場にまで行き届いていないのが現状だと思います。その結果、入庫する車両が徐々に減少し、淘汰を待つばかりとなっている業界構造があります。
これも自動車メーカーによる「ユーザーの囲い込み戦略」の一面であると思われますが、結果として置き去りにされた形の一般整備や鈑金塗装事業者は、時代の流れに対する諦めの色が濃くなっているようにも見受けられます。
「掃除屋」から、生き残りのための「真剣な選択肢」へ
自動車アフターマーケット業界内で「カーディテイリングなんて所詮は “ 掃除屋 ” だから整備士のやる仕事ではない」と、さげすむような風潮があったと私は感じています。
この流れを少しでも改善しなければという思いから、今から30年前となる1996年4月に日本カーディテイリング協会(JCDA)を設立したわけですが、数年前から流れが変わってきました。
SS事業者をはじめ、整備や車検、鈑金塗装などが主業だった幅広い自動車アフターマーケット事業者たちが、新規ビジネスとして、真剣にカーディテイリング・ビジネスに注力する企業が増え続けています。
今年2月に東京ビッグサイトで開催された、自動車アフターマーケット事業者向けの展示会「IAAE 2026(国際オートアフターマーケットEXPO2026)」には、例年では考えられないほど多くのカーディテイリング関係企業が出展しており、まさに「次代の先取り合戦」の様受を呈していたのがその証拠です。

カーディテイリング参入で失敗しないための「4つ」の確認項目
そこで、これからカーディテイリング業界への参入を考える事業者の皆さんに、どうしてもお伝えしたいことがあります。失敗しないために、導入企業やパートナーを選ぶ際は、必ず次の4つの項目を確認してください。
① 高度なテクニックを指導できる「機器メーカー」を選ぶこと
施工機器の使用法と技術については、各社に特徴があります。ただ機械を売るだけでなく、現場で使える高度なテクニックまでをしっかり指導できるメーカーを選んでください。
② ケミカル(薬剤)の危険性を詳細に説明できる事業者を選ぶこと
ケミカルは、家庭用洗剤のようなソフトなものから、ゴム手袋をして防毒マスクを装着して作業するような毒劇物まで存在します。危険性をろくに説明せず、簡単な解説だけで販売している悪徳業者も多くいますので、リスクや取り扱い法を詳細に説明できる事業者を選択してください。
特に、労働安全衛生法の改正により、2026年4月1日からはSDS(安全データシート)の交付やリスクアセスメントの実施が義務付けられる対象物質が約2,900物質へと大幅に拡大されました。これに伴い、カーディテイリング事業者においても、使用する全ての製品成分を正確に把握し、最新のSDSに基づいたリスク評価を完了させておくことが求められています。これは現場にとって非常に重い責任を伴うものです。
③ 車種別の知識を持ち、法的な制約基準を習得すること
近代の車両には各種センサーやカメラが取り付けられており、整備士の資格を持っていない人が簡単には触れてはならない箇所もあります。扱いを誤ると大きなトラブルにつながる可能性もあるため、車種別の知識や、施工作業の内容によっては資格や認証が必要になるケースもあります。
ディーラーとのコミュニケーションによって技術情報の指導を受け、トラブル回避策を講じてください。作業内容によっては認証を受けなければならないため、法的制約基準等をしっかりと習得して、安全で確実な施工を行える環境と体制を整える必要があります。
④ 接客方法や礼儀作法、お客様の心理的満足度を指導する機関と交流を深めること
カーディテイリング事業を展開する前に、技術講習などを受けると思いますが、本当に大切なのは「その後」です。近年はより一層、コンプライアンス対応が重要視されています。お客様とスタッフとの接客方法や礼儀作法、お客様との心理的満足度の研究を行い、お客様の満足度を高めて固定客(リピーター)の拡大を図るといったソフト面の指導のほか、自動車アフターマーケット事業者向けに法令遵守対応の情報提供を行う機関(例:JCDA協会など)との交流を深めてください。

優れた機器やケミカルを活かすのは「テクニック」と「人間の研究」
現代では、施工機器やケミカル類においてメーカー各社が新技術を導入して、商品性能自体の格差は少なくなってきているように感じます。だからこそ重要なのは、優れた機器や高性能なケミカルを「正確に使いこなせるテクニック」を習得することです。
自己流の作業では材料の無駄が多くなり、スピードも遅くなってしまいます。まずは指導者の動きを詳細に観察し、徹底的に技術を磨いてください。カーディテイリング・ビジネスを成功させるための最大のポイントは、高度な仕上がりはもちろんですが、お客様や自分(施工者)を含めた“人間”の研究を行うことにあります。
いわゆる「マンウォッチング」とも言いますが、お客様の何気ない動作の陰に隠れたメッセージを素早く読み取り、それに対応する関連ソフト(接客や提案のノウハウ、法令遵守の対応・体制)を整えることができれば、カーディテイリング事業は必ず成功すると私は思っています。

寄稿:ジョイボンド株式会社 代表取締役 古舘忠夫(2026年6月)
次回予告>>>
次回(第2回)は、カーディテイリング・ビジネスにおいて顧客の「不信」を「信頼」に変える心理学に迫ります。思わず「また行きたくなるお店」に共通する10の条件のほか、かつて自動車用品量販店「オートウェーブ」の黄金期を築いた伝説の経営者・故 廣岡 等会長とのエピソードを交えながら、ビジネスの根幹である無欲の意念(感謝)について、古舘代表の持論をお届けします。
寄稿:古舘 忠夫(こだて・ただお)https://joybond.co.jp/
|


