高級カーコーティング専門店「アペックス」が2025年3月にオープンした『Keeper LABO 宇都宮鶴田店』のビジネス戦略や今後の展望が語られる特別セミナーが、9月18日に栃木県宇都宮市にて開催された。
同セミナーは、幅広い自動車アフターマーケット事業者向けに、フロントコンプライアンス対応研修など情報提供を行うARCネットワークサービス(株式会社ジェイシーレゾナンス)が企画したもので、カーコーティングをはじめとするディテイリング・ビジネスに関心を寄せる事業者が全国各地から参加した。
高級カーコーティング専門店が「Keeper LABO」FC事業に参入
栃木県宇都宮市で高級カーコーティング専門店「アペックス」を展開する株式会社アペックスの郡司公生代表取締役は、1997年の創業以来28年間にわたって “最高の美しさ” を追求するカーオーナー向けの本格的なディテイリングサービスに特化してきた。その高い品質は顧客はもちろん同業他社からも認められ、日本屈指の専門店として地位を確立している。

そのアペックスが、カーコーティングと洗車の総合メーカー・KeePer技研株式会社が展開する「Keeper LABO」のFC事業に参入。2025年3月に『Keeper LABO 宇都宮鶴田店』をオープンし、これまで同社が培ってきたコーティング職人の「知識・技術・心」をベースにながら新たなビジネスモデル構築・展開している。
Keeper LABOは、カーコーティングを中心とした “車の美装を提供する店舗”をコンセプトに掲げ、2025年7月時点で全国に159店舗あり、このうち138店舗はKeePer技研の直営だ。FC店は21店舗あり、その全店に純水装置と手洗い洗車機、コーティング専用ブースを完備する。FC店の運営はガソリンスタンド事業者などが主だった中で、本格派の高級コーティング専門店「アペックス」が参入したこと自体、大きなトピックと言える。

「アペックス」と「Keeper LABO」を徹底比較
郡司社長は、自社の沿革を踏まえながら、従来の顧客層とは異なる “手軽にキレイにしたい” カーオーナーを獲得する目的で「Keeper LABO」のFC事業に参入したと話す。
セミナーでは、最高品質にこだわるユーザー層向けの専門店「アベックス」と、一般ユーザー層向けの「Keeper LABO」FC事業のビジネスモデルを比較。ターゲット層、技術・思想、作業時間、サービス単価、月商、人材育成などの違いについて詳細な説明が行われた。高単価・低回転の専門店で培ってきたノウハウを活かすことで、一般カーオーナーをターゲットとした中単価・高回転のビジネスモデルを実現し、圧倒的な売上を達成していることが明かされた。

特に注目したいのは、人材育成と人材確保。Keeper LABOのFC事業は、カーコーティング施工未経験のスタッフでも短期間で戦力化できる仕組みが確立されており、採用募集を行えば多くの応募があるため人材確保に困らない点が大きな強みとなっているという。
集客に直結する『ブランド力』
セミナー参加者から「集客はどのようにしているのか?」との質問に対し、郡司社長は「WebサイトやSNSは全てKeePer技研のFC本部が管理しており、KeePerの高いブランド力によって、お客様が自然と集まる状況」と述べ、その強固なブランド力が集客の根幹であることを強調した。
参加者たちは『Keeper LABO 宇都宮鶴田店』も視察。茨城県から参加した事業者からは「2年後の自社拠点リニューアルに向けて、KeePer技研のFC事業の売上構造や顧客アプローチを学びたかった」との声もあった。
郡司社長は今後の展望として外国人雇用や海外展開に言及する一方、KeePer技研のFC本部がディーラー向けのB to B事業を強化している点に触れた。新車購入時にディーラーでコーティングを行う顧客が増加することで、カーコーティング専門店で新車コーティング施工を依頼する客が減少するリスクを懸念していると話した。

郡司社長が赤裸々に語ったビジネス戦略の中で、最も注目したいのは、クルマを美しく仕上げるカーディテイリング事業といっても、一括りではなく、ターゲット層によって多様化するニーズに対応できるビジネスモデルの構築だろう。
“愛車を美しくしたい”ユーザー層に支持されているカーコーティング専門店が、Keeper LABOのFC事業では “クルマをキレイにしたい”ユーザー層のニーズに対応したサービスを提供することで、地域での事業展開を加速させたことがわかる。ユーザーのニーズが異なれば、必然的にビジネスモデルの構造やスタッフの顧客対応も変える必要があり、ターゲット層によってビジネス展開が全く異なることが浮き彫りになった事例といえるだろう。カーディテイリング事業に限らず、あらゆるビジネスで共通する重要なポイントが語られた貴重なセミナーとなった。