2024年4月からトラックドライバーの時間外労働960時間の上限規制と改正改善基準告示が適用された。これにより、既に社会問題となっているトラックドライバーの人手不足に加え、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し「モノが運べなくなる」可能性が高まる恐れがあると言われているのが、いわゆる「物流の2024年問題」である。
「物流の2024年問題」に対しては、国内のトラック事業者や物流事業者などを中心に様々な対策が講じられているものの、未だ抜本的な解決には至っていない中、国内物流大手の日本通運株式会社(本社:東京都千代田区/竹添進二郎社長)が、5月23日に国内のディーラーを対象に課題解決に向けたサービスとして「NXディーラーサポートサービス」を発表。編集部では、同サービスの特徴や狙い、今後の展開などを伺った。
定時配送と特定信書便の組み合わせで持続的な物流サービスを実現
同社の担当者に、サービス開発の経緯を伺うと「全国にはディーラーが約2万店ありますが『物流の2024年問題』に起因し、貸切固定車両の手配が困難となる状況が発生し、車両の管理が煩雑化するなどの課題が顕在化してきています。そのため、弊社が従来行ってきた国内航空貨物の混載輸送とルート配送の組み合わせによる波動がない定時配送の強みに加え、車検証や印鑑証明など信書に該当する書類等も、特定信書便事業者である弊社が適切に取り扱うことで、昨今厳しくなっているコンプライアンスを遵守した配送が提案できるといった点を活かし、まずは課題が顕在化していたディーラー専用の『特定信書便+パーツ配送サービス』の開発に至りました」と話す。
また混載輸送への切り替えによるコスト削減や『物流の2024年問題』に起因する顧客の事業継続性の支援なども、本サービスにおける狙いの1つだと話した。
サービス開始から取材(6/24)時点で約1ヶ月ほどが経つが、配送の品質低下やドライバー不足に悩むディーラーからの引き合いは多いそうで「サービスの伸びしろは十分あると考えています」と今後の展開にも同社は自信を見せた。なお同サービスはディーラー専用サービスだが、同様の課題やニーズがあれば、その他の業界などにも展開していきたいとのことだ。
今回発表された日本通運のサービスは、同社の強みを生かしたディーラー向けサービスとのことだが『物流の2024年問題』はもちろんディーラーに限った話ではない。自動車アフターマーケットにおいて幅広い業種・業態が直面する課題でもある。経営者は現在のスタッフの労働環境を見直し、働きやすい環境を作ることはもちろん、輸送・配送の仕組みを変える、業務効率化のためのDX推進を図るなど、それぞれのレイヤーで「物流の2024年問題」対策は急務であると言える。その中で解決策の選択肢が増えることは業界にとっては好ましいことではないだろうか。