なんと最後の記事から丸々1年以上が経過してしまった『レスポンス』編集部が「全巻揃ったデアゴスティーニ」を作る企画。今回は出来上がったエンジンカーの走行編。エンジンカーを動かすことすら初めての大学アルバイターは、果たして無事に走行することが出来るのか。
◆ついに実走! しかし、いくつかの壁が…
さて、前回まででおおよそ完成したフェラーリであるが、このラジコンは2ストロークエンジンが動力のエンジンカー。バッテリーで動くラジコンと異なる点がいくつかある。
まず当然ながら、エンジンを動かすための燃料が必要になってくる。使用する燃料はガソリンではなく、模型エンジン用の混合燃料。通常のエンジンよろしく、その燃料の混合気を圧縮し、グロープラグで着火させる仕組みになっている。エンジン内部の潤滑については、燃料に潤滑油が含まれているため、別途でエンジンオイルを注油する必要は無い。
また、グロープラグを最初に温めるためのプラグヒーターが必要になってくる。発電用のエンジンをかける時のように、ヒーターでプラグを温めながらリコイルスターターのヒモを引っ張る。少々手間がかかるが、それも含めてエンジンカーの楽しみと言えるだろう。
走らせる場所探しもエンジンカーを走らせるために重要な手順の一つだ。エンジンを回すラジコンなので、大きな音と排ガスが出る。それが醍醐味であるのだが、それを許してくれる場所がなかなか少ない。周りに住宅の無いサーキットである必要があるため、郊外まで出向く必要があるのだ。
◆走行当日、足りない工具
そんなこんなで準備を済ませ、筆者と撮影担当アルバイターはRC広場へと出向いた。ラジコン熟練者の邪魔をしては非常に気まずいため、平日の朝に到着するよう家を出たのだが、到着時には既に2人ほどいた。やはり、一定のエンジンカーファンが残っていることがこのことからも感じられる。
普段は入門モータースポーツのジムカーナを嗜んでいる筆者であるため、自動車用の基本的な工具は一通り揃えてあるのだが、ここに落とし穴があった。
当たり前だが、エンジンカーは小さなエンジンを搭載しているため、専用の小さな工具が必要となる。例えば、グロープラグを外す用の小さなプラグレンチが必要であったり、つまむ用のピンセットや精密ドライバーが必要だったりする。
結局、グロープラグを有り合わせの工具で外すことが出来なかった筆者は、既に走行中の親切な先輩ラジコンドライバーからプラグレンチを借りることにしたのであった……。
◆実際にエンジンカーを動かしてみようとする
もろもろの準備を済ませ、いよいよエンジンの点火を試みる。ラジコンに載る小さなサイズのエンジンに、センサーやインジェクションシステムといった大層なものは備わっていないため、キャブレター調整をして燃料の噴射量を自分自身の手で調整していく。つまり、エンジンをかけ始める最初の段階は燃料を濃い目に、かかり始めたら薄めにキャブを絞るといった具合だ。
ユーチューブも参考にして、リコイルスターターでエンジンをかけようとするがエンジンがかかる様子はない。実は、リコイルスターターのヒモを使わずともモーターでエンジンを始動させるスターターボックスというものもあるのだという。初めての場合はそのようなスターターボックスを使用してエンジンをかけるのが確実だろう。
◆ついにエンジン始動! だがしかし…
ということで、先輩ラジコンドライバーの方からエンジンスターターまでもお借りしてエンジン始動を試みたところ、ついにエンジンに火が!
小排気量2ストロークエンジンの特徴的な「ミーン」という音がRC広場に響く。このフェラーリラジコン制作記が始まってから約1年半、やっとのことでエンジンをかけることが出来た。エンジンに火を入れた後は、3タンク分の燃料を燃やしてエンジン慣らしをさせなければいけない。ラジコンとはいえ金属部品であるため、十分に慣らしを行って金属部品のバリを取らないと、意図しない強い力がエンジン内部品に加わってしまい、最悪の場合は破損してしまうのだ。
エンジンストールを起こさないようにアクセルを煽りながらエンジン慣らしをしていると、なんとここで燃料漏れが発覚。どうやらフライホイールが燃料ホースと干渉してしまっており、エンジンが回る度に燃料ホースが削れ、そこから燃料が漏れてしまったようだ。なんという凡ミス……。
◆ラジコン初心者でも試行錯誤の過程を含めて楽しむことが出来た
エンジンをかけることは出来たものの、走行することなくこの日は帰宅となった。しかし、出会ったラジコン熟練者の人は全員優しく、エンジンカーの醍醐味の一端を知れた日であった。このようにひと手間が必要な趣味は、事前準備等から既に大変なことがほとんどであるが、試行錯誤をしつつエンジンを点火させる作業は他の趣味では味わえない楽しみがあるように思えた。エンジンカーが「大人の趣味」と呼ばれる所以は、このような苦労も含めて楽しめるからなのだろう。
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