デザイントレンドは乗用車だけでなく、キャンピングカーにも確実にある。特にインテリアは顕著で、ここ5年を見ても、煌びやかな光沢感のあるものから、シックで高級感のあるものが主流に変化したことがハッキリと分かる。
さて、量産される乗用車や商用車と違い、キャンピングカーの場合、年間数十台から数百台程度を製造する無数のビルダーによって作られる。もちろん、中小のビルダーには自動車メーカーのような専門のデザイナーと呼ばれる人たちは、ほぼいない。
しかし、なぜか時間のズレがほとんどなく、同時発生的に新たなトレンドを取り入れたクルマがショーに並ぶ様子を幾度となく見てきた。これは、一体なぜなのだろうか。
さまざまなビルダーと情報交換をしていく中で、その答えが見つかった。あるビルダーの代表が「キャンピングカーのトレンドはトヨタが作っている」と言ったのだ。
この言葉の真意は、トヨタ自動車がビルダーになにかビルダーに向けた直接的な提案を行なっているという意味ではなく、その時々で最も売れているミニバンなどのデザイントレンドがキャンピングカーに反映されるということ。
車種別の販売台数を見ると、上位にズラッと並ぶ状況が長きに渡って続いているため、「トレンドはトヨタが作る」という表現になったのだ。
思い返してみれば、日本のキャンピングカーのデザインの流行は、海外メーカーのそれとは異なる部分が少なくなかった。
輸入キャンピングカーは日本のものに比べて全体的にボディサイズのものが多く、日本には軽キャンピングカーなど独自規格があること、また、海外では大陸を横断するような長旅も少なくない中、日本では1泊2日、2泊3日という週末旅が多いという使い方の違いももちろんある。しかし、それ以上に日本のユーザーが何を求めるか、という視点から、輸入キャンピングカーよりも国産の量販車を参考にするのだろう。
では、実際に参考にする国産の量販車は具体的に車両製造のどのくらい前に決まるのだろうか。
ショーに何度か足を運んだことがある人には分かるかもしれないが、キャンピングカーは一般的に、ベース車両の新型車が発売された場合、半年くらい遅れて各ビルダーのニューモデルがお披露目される。つまり、開発にそのくらいの時間がかかるということだ。
そのタイムラグを考えると、今の潮流は、昨年フルモデルチェンジされたトヨタ『ノア』『ヴォクシー』あたりの影響かと思いきや、前述のビルダーは、「アル/ヴェルのインパクトが大きい」と一言。
確かに、エクステリアやシートレイアウトや作り付けのハンドメイド家具などをすぐに変更するのは難しいが、照明やシートカバー、壁面や床などは比較的柔軟に対応しやすい。実際に、各ビルダーの販売するキャンピングカーを見ても、インテリア変更のマイナーチェンジを頻繁に行なっていたり、バリエーションを追加するといったことはよく見られる。
トヨタ『アルファード/ヴェルファイア』の人気ぶりは暫く続きそうであることから、今後のキャンピングカーは、よりラグジュアリーに展開していくこととなるだろう。ただ、もし、アルファード/ヴェルファイアに下位グレードが発表されれば、その内容次第で、新たなトレンドが巻き起こるかもしれない。