ホンダアクセスが手がけるホンダの純正カーナビ&オーディオブランド「ギャザズ(Gathers)」。昨年ブランド誕生から35周年を迎えたのを記念して、モビリティリゾートもてぎで取材会が催された。
◆ホンダ車純正だからこそできる開発体制
今ではすっかりカーナビ&オーディオの総合ブランドとして認知されているギャザズだが、スタートは高音質なオーディオユニットからだった。1980年代にクルマは多彩な進化を遂げ本体の魅力に加えて高品質な車内エンターテインメントも求められ始めていた。しかし、当時のホンダ車は比較的オーディオには力を入れていなかったのも事実。そこでホンダアクセスがホンダ車の高音質化を目指して立ち上げたブランドが「ギャザズ」だった。
初代モデルは1987年に登場した『シビック』『CR-X』『アコード』向けのヘッドユニットやスピーカー群。クルマの開発と同時にギャザズのオーディオユニットを開発するというスタンスを取るのも当初から。ホンダ純正だからこそできる開発体制がギャザズの大きな強みになっていく。
80年代~90年代にかけてはヘッドユニット、スピーカー、サブウーファーなどを次々ラインアップ。オーディオのグレードアップをメーカー純正で積極的に展開するブランドとしての地位を確立していく。ラインアップの豊富さや音の良さ、ホンダ車への対応などを受けてホンダ車のオーディオ・グレードアップをリードするブランドへと成長していくことになる。
2000年代に入るとオーディオだけではなくカーナビにも力を入れ始める。いわゆるオーディオとカーナビを2DIN一体型にしたAVNタイプのHDDナビもデビューさせるなど最新鋭のカーナビを積極的に投入。それまではクルマのオマケ的な見られ方をしていた純正のカーナビ&オーディオだったが、ギャザズは独自の高品質路線を貫き、純正カーナビ&オーディオでありながらトレンドの先端を行くハイスペックなユニット群を用意することになる。
そんな系譜は現在へもつながりオーディオへの開発にも力を注いでるのにも注目したい。現行モデルで特に印象的なのは「Tuned by DIATONE SOUND」「音の匠」といったホンダ車専用の音響チューニング を施したカーナビのラインアップ。さらに高音質なスピーカーである「ハイグレードスピーカーシステム」など、純正オーディオの先端を走るオーディオ機器を用意している。
一方では11.4インチを筆頭として9インチ、8インチといった大画面カーナビのラインアップを充実させている。これらギャザズブランドのユニットの特徴は、多くの場合にクルマの開発と同時に開発を進め、車種専用でのユニットを準備する点にある。それだけにデザイン面でのフィット感や機能面でのクルマとの連携が優れているのが大きなポイントになっているのだ。
◆最新オーディオを試聴、その効果は?
取材会の中では現在のギャザズのオーディオを代表する2モデルを体験できる試聴が実施された。『ステップワゴン』には「Tuned by DIATONE SOUND」+「ハイグレードスピーカーシステム」、もう一台の『ヴェゼル』には「音の匠」+「ハイグレードスピーカーシステム」を装備。純正の車両との音の違いを試聴でリアルに体験できる環境が整えられた。
ステップワゴンでは「Tuned by DIATONE SOUND」によるマルチウェイ・タイムアライメントによる効果が顕著だった。この機能は純正スピーカーシステムでも各スピーカーから音の出るタイミングを変えて、リスナーであるドライバーの目の前で演奏しているような音像を再現する効果がある。ピタリとフォーカスの合った音は心地良く、スピーカーの存在も感じず空間から音が現れる感覚が味わえる。さらに再生能力の高さ、スピーカーの高品質化などもあり音の情報量が大きくアップ、透明度のあるクリアなサウンドも魅力となった。
一方のヴェゼルには「音の匠」と呼ばれる音響チューニングが込められた。こちらは車内で不足しがちな低音をきっちりと表現することがひとつの目標とされた。実際に聴いてみると音の厚みや低音のタイト感がしっかり表現されているのがわかる。低音を出しすぎるとボワッとした不快感が出がちなのだが、音の匠によるチューニングでは厚みと締まりを同時に実現する絶妙のバランスを保っていた。
これまでも紹介してきたとおり、ギャザズの製品群は純正だけにホンダ車との連携機能が魅力だ。例えばオーディオではメーター内のマルチインフォメーションディスプレイに曲目などを表示したりリスト表示して選曲をしやすくする車両連携の機能を搭載。さらにナビ画面にはリアカメラの映像を取り込んで、ステアリング対応のガイド線を表示することもできる。
◆安心な走行をサポートするアイテム
そんな連携機能のメリットを実際に体感できる試乗の場も用意された。「リアカメラdeあんしんプラス3」を備えた『N-BOX』で、純正のリアカメラを使ってどんなことができるかを試乗体験してみることにした。一般的には純正リアカメラは後方を映し出す機能のみに用いられているが「リアカメラdeあんしんプラス3」を利用すればさまざまな機能が追加される。
まずは後退駐車時のハンドル操作をサポートするガイド線が追加される後退駐車サポートを装備、逐一操作のアドバイスが表示され指示のままにハンドルを操作するとピタリと枠内駐車ができる仕組み。後退駐車が苦手な初心者にも優しい仕様になっている。またクルマ後方の左右の死角から近づくクルマや人を検知する後退出庫サポートも便利な機能だ、後退時にクルマの影に隠れて飛び出してくる歩行者などにも素早く反応するのが安心だ。
さらに走行中では後方から近づくクルマに反応する後方死角サポートも使える機能を備える。斜め後ろの車線から追い上げてくるクルマを事前に検知してくれるので、うっかり車線変更をしてしまいヒヤリとすることも無くなるだろう。さらに、後方車両お知らせ機能は後方から自車の真後ろに接近するクルマを検知して知らせる。早めに車線を譲って、あおり運転による危険を未然に回避するのにも役立つ機能として使えるだろう。
また、純正リアカメラに取り付ける「リアカメラno水滴クリーナー」の実演も行われた。カメラのレンズ面に付着する水滴をエアで吹き飛ばすユニットで、リバースギアに入れた瞬間に“プシュ”っと空気がレンズ面に吹きつけ水滴を吹き飛ばすのだ。後退時にレンズに付着した水滴が邪魔で周辺が見にくい経験をしたことがあるユーザーなら便利さが理解できるだろう。
◆“次世代の車内エンタメ構築”が直近のテーマ
自慢の大画面カーナビがズラリと並ぶ展示も実施されたので順に確認してきた。実車が展示されたのは「11.4インチ Honda CONNECTナビ」(ステップワゴン、『ZR-V』)、「9インチ Honda CONNECTナビ」(ヴェゼル)、「Nシリーズ専用9インチ プレミアムインター ナビ」(『N-BOX Custom』)、さらに旧型N-BOXに8インチモデルを搭載したデモ車も用意。画面の見やすさ、車内のデザイン融合性など、大画面カーナビの魅力が目で見て体感できる展示となった。また新車時の装着のみならず既販車への大画面カーナビの取り付けにも対応していることも紹介。ギャザズは新車ユーザーだけが対象では無いこともしっかりアピールした。
最後に開発陣にこれからのギャザズの取り組みの一端を語ってもらった。クルマがより静かになり剛性もアップする傾向にあることから、車内のエンターテインメント環境としてはレベルアップしていくのは確実。そこに合わせて次世代の車内エンターテインメントを構築していくのが直近の開発テーマのひとつだという。
ホンダ車の開発と同時に開発を進めるスタイルでデザイン&車両連携をますます高め、今後もホンダ純正カーナビ&オーディオの新しい地平を見せる取り組みを続けていくことを確認したのだった。