日本市場でもようやく3代目ルノー『カングー』が登場、また新たな個性で人気を集めそうな予感だ。が、個性という点で、他のどのカングーよりもひとつ飛び抜けた存在だったのが、2代目カングーの登場直後に設定された“ビボップ”だった。
ビボップの登場は、2代目カングーが日本市場に導入された翌年2010年のことだった。カングー自体は日本市場ではボディタイプは1タイプで通したから、唯一のボディバリエーションとして設定されたのがこのビボップ。
ボディサイズは全長3870mm、ホイールベース2310mmと、通常のカングーと較べると全長で345mm、ホイールベースで390mmもそれぞれ短いショート版で、これは本国の商用車版として用意された“エクスプレスコンパクト”と事実上同一というもの。
ただし乗用車版のビボップでは、見るからにユニークなフォルムを際立たせる仕様がポイントだった。具体的には外観では、手動でロックを外し前方にスライドさせて開けるリヤグラスフーフ、パワーウインドゥ付きの横開きのバックドアなどがそのアイテム。またフロント側にも左右独立でチルトアップ式のガラスルーフを備えていた。
短く幅広い実にユニークなルックスは、どことなく2代目の日産『キューブ』が他人ではないような(?)スタイルだったが、とくに関連性はなかったはずだ。
一方で室内を見ると、4名乗車のレイアウトになっており、後席は当然のことながら左右独立で折り畳み、脱着が可能になっていた。つまり後席に座り、グラスルーフを開ければ、昔のリムジン(や馬車)に乗っているかのような感覚が味わえたという訳だ。
搭載エンジンは1.6リットルのガソリンで、これに5速のマニュアルトランスミッションの組み合わせ。ただし当時の販売期間は1年少々足らずと短く、筆者も導入当初に用意された赤い広報車と、その後、街中で1、2度走っているのを見かけた程度だったから、極めて希少なクルマであるはず。にも関わらず標準のカングーと同様の立派なカタログが用意されていたあたりに、当時のルノー・ジャポンの心意気が感じられる。
当時の価格は234.8万円で、カングーのAT車(229.8万円)よりも僅かに上の設定だった。