政府が12月24日に閣議決定した2022年度予算案で、一般会計に繰り入れられている自動車損害賠償責任保険(自賠責)の保険料による積立資金の繰り戻しが、54億円になることが盛り込まれた。
繰り戻し額は18年度から5年連続で、21年度の47億円を上回り、この5年では最高となった。ただ、一般会計への繰り入れ額は、21年度末でもなお6013億円にのぼっている。この問題では今回、斉藤鉄夫国土交通相と鈴木俊一財務相が22年度から5年間の扱いについて合意文書も交わした。
合意では、今回の繰り戻し額である54億円を最低ラインとしつつ、今後5年間も継続的に繰り戻しを行うこととしている。自動車業界や交通事故被害者団体などは、日本自動車会議所を事務局に「自動車損害賠償保障制度を考える会」(以下、考える会)を組織化しており、繰り戻しの促進などの活動を続けてきた。
考える会の福田弥夫座長(日本大学危機管理学部学部長)は、24日に自動車会議所を通じて談話を出し、22年度の54億円の繰り戻しについて「継続的な繰戻しと増額を求めてきたわれわれの要望に沿う結果として評価したい」とコメントした。また、今後5年間の継続が大臣間で合意されたことについても「一定の評価をされるべきもの」とした。
だが、一方で自動車事故被害者の救済を継続的に図るための国交省の検討会では、その資金源として自動車ユーザーの負担による「賦課金」の構想が新たに浮上している。今回の国交省と財務省の大臣合意にも「賦課金制度の検討と早期結論」が盛り込まれた。
ユーザーが負担した自賠責保険料から約6000億円が一般会計にプールされているなかで、新たな賦課金はユーザーには到底受け入れられないものとなろう。考える会の福田座長はこの件について「新たに保険料を負担する全自動車ユーザー等にていねいな説明、理解を得ることと、拙速ではなく慎重な議論が検討会においては必要」と指摘している。