◆ガソリンの「無鉛」はよく目にするけど現在市販のガソリンは、レギュラーとプレミアム(ハイオク)ともに、無鉛ガソリンだが、その昔はハイオクというと有鉛だった。そのため、ある時期まではリアガラスなどに「無鉛」のステッカーを貼った車をよく見かけたものだ。有鉛の鉛とは、アルキル鉛というもので、猛毒の物質だ。これをガソリンに微量添加していた。目的は、高圧縮比の高性能エンジンで、ノッキングが起こるのを防止するためである。エンジンは、圧縮比を高めることで効率が高まる。馬力が出るし、燃費もよくなる。そこで、可能な限り圧縮比を上げることがエンジン性能向上のカギを握る。一方、揮発性の強いガソリンは、揮発性の低い軽油に比べ、自己着火しやすい性質がある。圧縮比を高めたエンジンは、当然、高い圧力により混合気(または空気)の温度がより高くなる。そして、ガソリンエンジンでは、点火プラグで混合気に着火するのとは別にガソリンが勝手に燃え始めてしまうことが起こりやすくなる、それがノッキングだ。ノッキングが起こると、狙った燃焼時期と異なる燃焼が起こるので、目指した馬力が出ないとか、エンジンに損傷を及ぼすなどの問題を生じる。そこで、圧縮比を高め、混合気の温度がより高くなっても、点火プラグで着火するまでガソリンが勝手に燃え始めないようにするのが有鉛ガソリンの狙いだった。◆有鉛ガソリンがなくなった理由ところが、有鉛ガソリンは排気から出された鉛によって、それを吸った人が中毒症状を起こすことが明らかになった。また、有鉛ガソリンは、1970年代初頭から実施された排出ガス規制にともなって装備された排気触媒を劣化させる原因にもなった。そのため、70年代半ばから有鉛ガソリンの使用が禁止された。代わって登場するのが、無鉛プレミアム(無縁ハイオク)ガソリンだ。芳香族に分類される炭化水素を用いることで、高圧縮比にも耐えるガソリンにすることができる。そのうえで、石油会社によってエンジンを快適に保つための工夫が付加価値として加えられるようになり、単にノッキングを起こしにくいハイオクガソリンではなく、より上級なという意味で、プレミアムガソリンと呼ばれるようにもなった。かつて、有鉛ガソリンを使用していた旧車などは、エンジン内部に使われるバルブシートを保護する対応をすることで、無鉛プレミアムガソリンで走らせることができる。
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