コロナ禍まっただ中の2020年7月上旬。都内でひとり暮らしの30代後半という状況で、よせばいいのに、人生初の愛車『日産 フィガロ』を手に入れた。一大決心の末、不思議な縁や環境に背中をおされ、幸運なことに信頼できる自動車プロショップにめぐりあい、フィガロを所有することができた。ということで、無謀な筆者(当メディア編集部員)の体験を綴る『日産フィガロ・酔狂 愛車日記』をはじめさせて頂く。連載初回はフィガロの紹介と、「個体探し」をはじめようと思った時の状況をお伝えしたい。◆日産のパイクカー「フィガロ」フィガロは、初代マーチ(K10型)をベースとした日産「パイクカー」シリーズのひとつ。新車価格は187万円で、2万台の限定生産だったこともあり、抽選による販売期間は1991年2月14日から1992年12月までという短さ。ボディや内装のデザインは、アール・デコファッションなど、1930年代のヨーロッパ文化を感じさせるつくりで、ゆるやかな優しい曲線と丸目ライトが印象的なクルマだ。フルオープントップも大きな特徴で、電動ではなく手動で幌(ソフトトップ)をリアの格納リッドにしまうと、サイドパネルが残ったままオープンになる。「3速AT」のみだが、実はターボエンジン(MA10ET型/水冷直列4気筒OHC/987cc/ベルト駆動ターボ)を搭載。パイクカーシリーズ(Be-1、パオ、フィガロ、エスカルゴ)の中で唯一フィガロだけが、ターボエンジンなのだ。もちろん高速道路や首都高も走れるが、エアバッグは無い。峠道の急カーブをグイグイ走り抜けるようなやんちゃな乗り方には不向きで、ゆったりのんびり、ほのぼの走るために設計されたクルマと言えるだろう。◆「旧車」なフィガロを維持するためにフィガロのように発売から30年近く経過したクルマは「扱いづらい」という理由で、整備などを断られるケースは少なくない。ようやく手に入れたフィガロを、今後できるだけ長く乗り続けるには、旧車の面倒をしっかり見てくれる自動車プロショップの助けが必要だ。旧車の弱点をちゃんと知っていて、補修部品の入手をはじめ、エンジン整備やキズへこみ修理(鈑金塗装)、フロントガラスの補修・交換なども安心してお願いできる自動車プロショップの存在は欠かせない。特にフィガロは、キレイな内装を維持したいので、シートやダッシュボードなどの補修もしっかり対応してくれる自動車プロショップに預けたい。ちなみに、フィガロは数年前からイギリスやアメリカ、韓国などの海外で人気が高く、毎年車両価格が上昇している。2020年10月現在、日本国内の中古車検索サイトでは20台ほどヒットし、最低価格は59.8万円で最高価格は378万円だった。エンジンや足回り、ボディ外装、内装などの状態によって価格差が大きい。いずれにしても、1991年式の旧車の値段としては高額だろう。フィガロの人気が価格にそのまま現れていることがわかる。◆フィガロを「運転」したことがない2019年11月上旬。フィガロ所有に向けて気持ちを固めた筆者がまず行ったのは、中古車検索サイトのチェック。至極当たり前な行為なのだが「ちょっと待てよ…」と冷静に思うことがあった。そもそも筆者は、一度たりともフィガロを運転したことがないし、じっくり目を凝らして現車を見たことさえないのだ。子どもの頃からずっと憧れているフィガロとはいえ、運転したこともない29年前のクルマをわざわざ購入しようとするって、さすがにどうかしている…。と我ながら思い、静かに気持ちがトーンダウンしはじめた。フィガロは希少車ゆえ、街中で見かけることは滅多にない。フィガロを扱っている中古車販売店にお願いすれば、試乗させてもらえるだろうか? 電話して聞いてみればよいのだろうけれど、気が引ける。ネットで調べたら、フィガロのオーナーズクラブがあることがわかった。オーナーミーティングの会場に赴き、それとなくオーナーさんにお願いするとか? なかなかの厚かましい振る舞いをするのは、とてもハードルが高い。気兼ねなく乗れる方法が見つからない。数年前からずっと設定しているデスクトップの壁紙のフィガロを見て、「いつか乗れたら」と憧れているだけの日々が、また、これからも続くだけなのか? モヤモヤした気持ちのまま日々が過ぎていった。>>>>【フィガロに乗る方法があった!】続きは、次回『日産フィガロ・酔狂 愛車日記02』にて
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