カーオーディオシステムの主役とも言うべきフロントスピーカー。それをよりしっかりと鳴らすためにはどうすべきかを多角的に研究している当短期集中連載。その第8回目となる当回は、“ケーブル”にスポットを当てる。選び方から引き回し方まで、じっくりと解説していく。■ケーブルも聴き比べて選ぶのがベスト。そうすることで、ケーブルで音が変わることも実感できる。簡単取り付けをうたうエントリースピーカーに交換する場合、純正のスピーカーケーブルがそのまま使用されるケースは多い。しかし、できることならケーブルも一緒に交換したいところではある。純正で使われているケーブルは、オーディオ的に考えたとき相当に貧弱であると言わざるを得ない。市販されている最廉価のオーディオ用ケーブルと比べても、悲しいかな品質的に見劣りするのは確かだ。さて、ケーブル選びはどのように行うといいのだろうか。できればケーブルも、聴き比べて選びたい。そうすることでケーブルによって音が変わることも体験できる。そして試聴して、高音の出方が良いとか低音が力強い等々特長をつかみ、自分好みのサウンドが聴けるモデルを選び出せたらベストだ。ところで昨今は、相当に高額なスピーカーケーブルも多々登場している。これについても試聴をしてみると高い理由が納得できる。とはいえ、何が何でも高級ケーブルを選ぶべきかというと、必ずしもそうとも言えない。ポイントとなるのは「使用スピーカーとグレードを合わせる」ことだろう。例えば、装着しているスピーカーがエントリーグレードであるのに、ケーブルにハイエンドモデルを使うのはアンバランスだ。逆に、高級スピーカーを使うのであれば、できることならケーブルもある程度のクラスのものをチョイスしたい。そうすることで、高級スピーカーの性能をより引き出すことが可能となる。なお、使用スピーカーのグレードよりもちょっとだけ良いものを敢えて選ぶ、というのはアリだろう。そうしておくと、後からスピーカーを上級モデルに換えたときでも安心して使い続けられるからだ。■太すぎるものや硬すぎるものも使いづらい…。適度な太さと硬さのものを選びたい。あと、太さと柔らかさもチェックしておくとベターだ。引き回し作業をプロに任せるとしても、引き回しが困難なものは選ばないほうが安全だ。スピーカーケーブルの場合太すぎるモデルを選んでしまうと、室内からドア内部に通す作業が相当につらくなる。物理的に通せないケースも出てくるだろう。その場合はドアに通す部分にだけ細いケーブルを使うなどしてなんとかすることになるのだが、すんなり引き回せた方がもろもろがシンプルだ。そして被覆が硬すぎると、カーブさせなければならない局面でケーブル自体にストレスがかかるし、引き回し作業の難易度も上がってくる。ケーブルはある程度柔らかいほうが扱いやすい。続いて、引き回し方のセオリーも紹介しておこう。まず、悩ましいのは左右の長さを合わせるべきか否か。どちらがいいのかといえば、左右の長さは合わせたほうがいい。長さが同じであったほうが気分もすっきりする。ただし、本来短くてすむのに長さをそろえるために多くを余らせることとなってしまうのも上手くない。経済的な見地からも得策とは言いがたく、余ったスピーカーケーブルの処理も大変になる。ちなみに、余ったスピーカーケーブルをコイル状にぐるぐると丸めておくのはNGだ。ノイズが乗る等の音への悪影響が発生する可能性が高まるからだ。そのようにせざるを得ないのであればむしろ、左右の長さを揃えることをやめたほうが音には有利だ。■一部分に超高級品を足す、という音質向上作戦もアリ?引き回しに関するセオリー解説を続けよう。基本的なことだが、「無用な接点を増やさない」ことも大切だ。例えば、長さが足りなくなったので継ぎ足すとか、途中に廉価なケーブルを使ってコストを下げるといったことはやるべきでない。とにもかくにも無用な接点が増えないように、当初に必要な長さを確実に計測すること等が重要となる。と言いつつ、掟破りな音質向上策が存在しているのでそれも紹介しておこう。それは「部分的に超高級品を使う」というものだ。例えば30cm程度でいいので1mあたり万単位もするようなハイグレードケーブルを部分的に使ってみると、それでも音の変化を感じ取れる。接点が増え、しかも多くはローグレードのケーブルのままであるにも関わらず、1か所に飛び抜けて良いケーブルを使うことで、そのケーブルの音質傾向が全体に影響を与え、出音を変えてくれるのだ。なお、もしもこの作戦を試そうとする場合は、左右で条件を揃えることが大前提となる。ステレオでは、いかなる局面においても左右のコンディションを変えるべきではない。ドア内部に施す“デッドニング”もしかりだ。左右でコンディションを変えてしまっては、正しいステレオイメージの再現が難しくなる。このことはぜひとも頭に入れておいていただきたい。あと、ケーブルには“方向”があることも覚えておこう。使うべき“方向”を定められているのをわざわざ逆に使う必要はないだろう。今回はここまでとさせていただく。次回以降は、人気スピーカーをブランドごとに紹介していく。スピーカー交換を検討している方は、次回以降の記事もお読み逃しなきように。