タイの首都バンコクにあるいすゞCCKの新車ディーラー(キンケオ支店)を訪問。ゼネラルマネージャーのNanthana氏に新しくオープンした、いすゞショールームについて話を聞いた。◆前年比13.3%増、タイの新車販売2017年のタイ新車販売台数は、前年比13.3%増の87万台。過去最高の143万台を記録した2012年以来初めての前年比増加。タイの新車販売は各社自動車メーカーによる新モデルの投入や、ファーストカーバイヤープログラム(初めて自動車を購入した人を対象とした税金の還付制度)の買い替え期間終了に伴う買い替え需要、さらにタイ経済の景気回復などの影響で好調だ。フロスト&サリバンの予測では2018年におけるタイの新車販売台数は、前年比7.6%増で91万台に成長の見込み。デフレ圧力緩和などによる経済成長と中間所得の増加、更に2018年に予定される公共交通インフラプロジェクトとそれによる民間投資の促進が予測されているためだ。特に公共インフラプロジェクトにおいては中型トラックや大型トラック、ピックアップトラックの需要の刺激が期待されている。◆イメージは高級ホテル好調なタイの新車市場を背景に、新しいコンセプトの新車いすゞショールームがバンコクにオープンした。自動車部品・組み立てメーカーのタイルン・ユニオンカー(1967年創業)が母体の、いすゞCCK(1992年設立)が2017年8月に作ったキンケオ支店だ。ショールームとサービス工場(ピックアップ用6ベイ、トラック用10ベイ)、2018年に同じ敷地内にオープン予定の鈑金(ばんきん)塗装設備を有する巨大なディーラーだ。設備も他ディーラーにはないハイクオリティなものが整っている。2階にあるカスタマーラウンジはまるでレストランのようだ。広いダイニングテーブルとソファが置かれている。フリーフードが並ぶガラス張りのラウンジからは、広い整備工場が見渡せ、整備されている自分の車両を見ることができる。元々タイのレクサスで働いていたNanthana氏は「レクサスショールームは飛行機でいうファーストクラスのイメージ、この新しい、いすゞショールームはラグジュアリーホテルのイメージで作り上げた」という。◆ 販売後が本当の差別化いすゞCCKのキンケオ支店では、販売後のアフターサービスに徹底的に力を入れている。特に商用車は使用頻度が高い。そのため勝手にアフターサービスへ入庫されるというイメージが強い。しかし、キンケオ支店では販売後も積極的にセールスマンが顧客を訪問したり、頻繁に連絡をとったりしている。「商用車であっても販売後のケアをしっかりやることで、お客様が自発的にこの店舗のことを宣伝してくれる。それほど宣伝はしていないにも関わらず、設備の良さ、食事やファシリティーなどが口コミで広がり、別のいすゞディーラーで購入した方も、整備を持ってきてくれる」(Nanthana氏)。更に「売る前より売った後のお客様を重視している」と指摘する。絵を描く教室や、カバンを作る教室など、顧客へのアクティビティもカスタマーラウンジで随時開催。将来的な優良顧客を増やして、しっかりと囲える対応を実践している。優良顧客のために宿泊旅行も実施したというから驚きだ。顧客とのコミュニケーションツールとしてフェイスブック、ライン、ユーチューブなど積極的に導入をしている。◆常識を壊し突き進む、高級商用車ディーラーキンケオ支店は、正直、商用車にそこまで必要かと思うほどの高いレベルだ。タイにおいて最先端のコンセプトを持つディーラーではないだろうか。商品であるピックアップトラックは、ライバルとなる他(ほか)のメーカーが多いため、値段競争に陥りやすいという課題がある。一方で、中型や大型トラックは好景気で売り上げが増加している。乗り換えも盛んだ。トラックの場合、サービス入庫も自然とここに入ってくる。なぜなら他では設備がなく整備が行えないためだ。今後も、他ディーラーとは異なるハイクラスのサテライト店を広げていく予定。更に同グループ、別店舗のいすゞショールームは来年リニューアルをする。襖などを導入した日本スタイルのディーラーを作る予定だ。新しいコンセプトのショールーム、店舗だけでなく品質やサービスもハイレベルなものをお客様に提供。それを実践しているのがいすゞCCKの新しいショールーム、キンケオ支店だ。販売したらそれで終わり。どうやらタイもそのような時代ではなくなってきている。販売するだけでなくアフターを重要視して顧客満足度を高める仕組みを構築。キンケオ支店の考え方は、まるで日本の考え方だ。顧客に対して販売後も心を込めた対応、こういった精神をタイ人が理解するようになったら、更に強いリピーター顧客になる。このようなおもてなしの心は日本人が最も得意とするところだ。日本にいれば当たり前に感じているサービス。しかし、タイ人にとって、それらは新鮮に感じることだろう。日本の企業がアセアンに進出していくとき、日本は自らのサービスの高さをもっと認識しても良いと思う。いずれアセアンの人々もこのような精神を理解するとすれば、おもてなしの心を理解している日本企業は、優位な立ち位置にいる。おもてなしの心はタイ人の心を掴み始めている。<川崎大輔 プロフィール>大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
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